コラム

 公開日: 2016-09-28 

木造住宅の寿命が30年は本当!?

「日本の木造住宅の寿命は30年」という説がありますが、実は「統計のマジック」や歴史的経緯がからんでおり、必ずしも「30年」と言い切れるわけではありません。

戦後の住宅不足、経済成長、バブル景気といった歴史や国民性が、木造住宅の30年単位のスクラップ&ビルドを促進した面もあります。

今は、リフォーム意識が発達し、長期優良住宅のような政策的な追い風もあり、長く住める家がトレンドになっています。

木造住宅寿命30年説について

「日本の木造住宅の寿命は30年」といったフレーズを、聞いたことはありますか?
しかし、「まったくそのとおり」と言い切れるものではないと思います。

今回は、本当に木造住宅は30年しかもたないものなのか、理由と背景を考えてみたいと思います。

国土交通省の最近の資料によれば、「我が国では、取り壊される住宅の平均築後経過年数は約30年と、イギリスの約77年、アメリカの約55年に比べると短くなっています」と書かれています。

それより前に書かれた建設白書でも、同じような内容が見えます。

なんとなく、欧米と違い、日本の工務店は30年でダメになってしまう家を建てているという印象が出てしまいそうです。ですが、実はここに「統計のマジック」や歴史的経緯といった事情がからんでおり、「30年説」はその一面にすぎません。

「統計のマジック」に基づく誤解

住宅の寿命に関係する統計データの多くは、住宅を新築した年から除却(空き家になるか取り壊し)した年までの年数を平均したものです。

ただし、20~21世紀に建てられた家を全部調べるようなことは不可能なので、「過去5年間で除却した住宅」のみというふうに、期間を区切って調査します。すると「30年前後」という数値がはじき出されます。

問題なのは、30年を超えて現役である家がいくらでもあることです。これは「統計のマジック」と言われ、特に平均値にはわれわれは惑わされてしまいます。平均して30年とは、たいていの家は30年しかもたいないという意味ではありません。

しかし、平均値にも一定の真実が含まれておりますので、それは尊重する必要があります。

日本の住宅事情の歴史的な経緯

戦争が終わった直後から昭和30年代までの日本は、住宅の多くが焼失し、とにかく住む場所を供給することが急務でした。全国民に住まいを行き渡らせるため、質より量で一戸建てや集合住宅を造りました。粗製乱造と呼べるようなものも多かったと思います。狭くて設備が不十分で、遮音性や断熱性もないような住まいが大半でした。

高度経済成長を迎えて、国民が豊かになってくると、今の不満の多い住まいを離れて「いつかは新築一軒家」が人生の目標となります。政府も「持ち家政策」を推進しました。新規住宅着工ブームが続き、新築持ち家率がアップしました。この際に、戦後建てた住まいは価値を失い、除却されました。

その後、バス、トイレ、キッチンなどの住宅設備が進歩し、収納スペースや間取りの面積が広くなっていったため、「住宅は取り替えるもの」という認識ができました。

親から独立したら、自分の一軒家を持って一人前という気風が強かったのもこの時期です。

家は、自分たちの家族のものであって、誰かから引き継いだり、引き継がせるものでない、といった考えも出てくるようになれば、どうしても30年程度で家はその存在理由を失ってしまいます。

バブル期は、家がまだまだ住める状態でも、取り壊して更地にして土地を売る例が多く見られました。
こうした、時代背景や新たな価値観などが住宅の寿命を短くしたと言えるでしょう。

変わりつつある木造住宅の寿命

木造住宅の「寿命」イコール「耐用年数」でないことに留意すれば、実は30年どころでなく、1世紀は使えるものなのです。

木材は、湿気やシロアリの被害を受けず、メンテナンスをしっかりやっておけば、数世紀の耐用年数があります。でなけば、古民家再生ブームは起きなかったはずです。

ただ、配管などの住宅設備の耐用年数はもっと短く、交換が必要となる時がやってきます。リフォームによって寿命を延ばす考えが乏しかった時代は、そうした設備の耐用年数が過ぎたら、家全体を建て替えるという話になりがちでした。

ですが現代は、リフォームやリノベーションが一般的になり、国民の気持ちは家を長持ちさせようという考えが主流になってきています。

政府の施策でも、「長期優良住宅」が打ち出され、数世代にわたり100年使える木造住宅に住むことが大きなトレンドです。長期優良住宅の条件には、寿命を延ばすためにできるヒントがたくさん隠されています。

例えば

●耐震性
震度7クラスでも倒壊せず、損傷にとどめる構造とする。

●維持管理が容易
配管類などのメンテナンスが無理なく行える構造とする。

●高齢者等対策
将来のバリアフリー改修に対応できるようにする。

などがあり、長期優良住宅の認定を受けるには、メンテナンスの計画を提出・実行することが義務づけられています。適時のメンテナンスとリフォームを行えば、木造住宅は30年でなく、その3倍以上も長く快適に暮らせる可能性を持っています。

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