コラム

 公開日: 2013-12-14 

マナーうんちく話639≪命がけの「お・も・て・な・し」≫

今から300年以上前になりますが、元禄15年(1702年)12月14日の夜、江戸にある吉良上野介(きらこうずけのすけ)の屋敷において、主君浅野内匠頭(あさのたくみのかみ)の仇を報いた、赤穂浪士の物語「忠臣蔵」をご存知でしょうか?

今ではテレビに登場することが殆ど無くなりましたが、日本の年末を飾る物語としては、無くてはならない存在だったわけです。

1964年に放映されたNHKの大河ドラマでは、実に53%の視聴率を記録しており、以来合計4度製作されるなど、数々のテレビドラマや映画や小説で取り上げられた日本の国民的物語です。

元禄14年3月14日に、江戸城本丸松の廊下において、赤穂城主である浅野内匠頭が、高家肝煎(こうけきもいり)であった吉良上野介に切りかかり怪我をさせ、その罪により切腹を命ぜられますが、吉良上野介はお咎めなしです。

だから、その仇を、浪人の身分になった赤穂藩の武士、つまり赤穂浪士が苦労の末、報いたという内容です。

もともと3月14日は、京都から遣わされた勅使を、幕府がおもてなしをする日で、浅野内匠頭がその「おもてなし係」、つまり、接待係とか饗応係だったわけです。

当時は勅使、すなわち天皇の使者に対する接待の任務は大変な重要な役目で、上手に行けばこの上ない名誉なことですが、悪くすれば恥をかくだけでは済まされず、命にもかかわることです。

今流に言えばこの上ないハイリスク・ハイリターンで、まさに、おもてなしも命がけで、公家礼法に武家礼法と、複雑多様な礼儀作法が要求されたわけです。

つまり、浅野内匠頭が切りつけた動機は礼儀作法に有ったわけです。
如何に城主と言え、勅使を接待する役目をおうせつかれば、それなりの堅苦しい礼儀作法を、良い先生に師事して勉強しなければいけません。

その先生が高家、つまり礼儀作法に精通した名門の家柄であり、大名や旗本と同格である高家の吉良上野介なのです。

従って単純に言えば、教え子である浅野さんは、恩師である吉良さんに立てついたことになりますが、それにはそれなりの理由があります。

教え方が悪かったと言う説が有力です。
ではなぜ教え方が悪いかと言えば、授業料が少なかったからとか、赤穂藩の塩の製法技術を教えてくれなかったからだと言う説があります。

いずれにせよ、日本中を揺るがせた赤穂浪士事件の発端が「おもてなし」に有ったと言うことは事実のようです。

「お・も・て・な・し」。
実に響きのよい美しい言葉だと思いますが、本当は、非常に複雑多様で、奥の深い意味が込められているのではないでしょうか?

また、おもてなしの起源は相当古く、その起源は平安時代にまで遡ると言われておりますが、江戸時代には、勅使を「おもてなし」したり、幕府の儀礼式典をつかさどる「高家」という特別な身分まで存在したことから容易に伺えます。

今では世界に向けて、日本の「おもてなし」が発信させられています。
だからこそ、単に営利目的の美辞麗句にせず、いつまでも大切にして頂きたいと思います。

今年は一流あるいは名門と言われる百貨店やホテルで、数多くの誤表示が発覚しました。
中には明らかに偽装表示だと思える物がありましたが、あくまで誤表示として幕が引かれたようですが、何とも後味が悪いですね。

「誤表示でおもてなし」では様になりません。
時と場合によっては、信頼を失い、命取りにもなりかねません。
本当に誠心誠意、心を込めておもてなしをしたいものです。

そして、その心は、武士のように堅苦しい礼儀作法ではなく、あくまで相手を思いやる素直な心です。


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マナー講師 平松幹夫

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