コラム

 公開日: 2013-12-07 

マナーうんちく話635≪雪と大根役者≫

今まで比較的暖かくて穏やかな好天に恵まれましたが、今日から寒くなり、所によっては雪模様になりそうですね。

今日は二十四節季の一つ「大雪(たいせつ)」で、文字通り、これから本格的に雪に見舞われる季節になります。

ところで、四季折々の自然の中で、特に優雅な趣があるものを「雪月花(せつげつか)」と称しますが、先人は春の桜、秋の月と共に冬の雪に風流を楽しんだようです。桜や月のように、雪には風流を感じる様々な名前が付けられていることからも推測できます。

「瑞花(ずいか)」「寒花」「銀花」は雪の異称です。
また、今年は例年になく早かったようですが、その冬始めて降る雪を「初雪」、その冬初めて山に降る雪は「初冠雪」と表現します。
 
さらに、その冬の最後の雪は「終雪」、春になって残りを惜しむように降る雪は「なごり雪」、一年中溶ける事の無い雪は「万年雪」と言います。

そして雪は女性の名前にも良く使用されています。
雪子、小雪、雪代、雪絵、雪江、雪枝、雪美、雪菜等など・・・。

加えて、雪の状態にマッチした素敵な名前もあります。
小説のタイトルになっている細やかに降る雪を「細雪」、粉になったような細かい雪は「粉雪」です。

まだ顕微鏡やパソコンが無かった時代に、これほどまで雪を細かく観察し、楽しみ、上手に利用する知恵や文学的表現力には頭が下がります。

最近何かと「環境に優しい」とか、「自然に優しい」と言う言葉が使用されますが、売り上げ向上のための美辞麗句ではなく、本当に環境や自然に優しくするなら、先ずは自然を理解することが大切だと考えます。
そのためには、自然をよく観察することではないでしょうか。

その点、自然と仲良く共生した先人の生活様式や生活の知恵には、物質的豊かさや利便性に重きを置いている現代人が学ぶ事が多々あります。

そしてこの頃美味しさを増す野菜に、前回お話ししたホウレン草やミズ菜や春菊と共に初冬の今が旬の大根があります。
我が家の畑にも作っていますが、葉っぱにボリュームがあり、冬野菜としての存在感がひときわ高い野菜です。

芸の下手な役者を「大根役者」と言いますが、その人本人にとっては決して褒められた言葉ではありません。しかし大根にとっては大変な褒め言葉になります。何故だかお分かりでしょうか?

理由は、煮て良し、炊いて良し、漬けて良し、干して良し、さらに生で良しと言われるように、大根には様々な食べ方があって、いずれも決っして「あたることがない」からです。

また、日本書紀にも登場する位歴史が古いわけですが、秋の七草にも「すずしろ」と言う名前で登場します。

そして、江戸時代になると品種改良が施こされたり栽培技術が向上し、すっかり日本人にはなじみの深い野菜になりました。今でも煮物や生食や漬物や保存食と万能で、作付面積も生産量も、数多くの野菜の中でトップクラスです。

ちなみに今の時期、大根と言えば「フロフキ大根」を思い浮かべる人も多いと思います。
厚切りにした大根を軟らかく湯で、柚子味噌などの練り味噌で食べる料理で、甘味が加味された冬の大根だからこそ味わえる絶品です。

漢字では「風呂吹き大根」と書きますが、「漆器を乾かすために大根のゆで汁を拭きこむために大根を茹でることから付いた」と言う説や、「大根は安価で美味しくてしかも身体にいいので不老富貴(ふろうふき)が転じた」と言う説がありますが、いずれも定かではありません。

今のように娯楽の少なかった時代には、春の花見酒、秋の月見酒、そして降雪や雪景色を見ながら楽しむ雪見酒は、庶民の最高の楽しみだったようです。
寒い冬の夜は、雪見酒とまではいかないにせよ、熱燗に風呂吹き大根で、うんちくでも語りながら、身も心も温まるのもお勧めです。



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