コラム

 公開日: 2013-11-24 

マナーうんちく話628≪秋深き隣は何をする人ぞ≫

日本は世界屈指の四季の美しい国ですが、なかでも百花繚乱の春と共に紅葉の秋は格別ですね。

しかし、木々の葉が赤や黄色に色づき、「山装う頃」と表現されるこの時期は、美しいが故に儚いほど短いもので、厳しい冬に向かう晩秋の3週間位でしょうか。今のうちに「日本の秋」を実感させてくれる、紅葉を愛でに出かけるのもお勧めです。

ところで、この時期になると、松尾芭蕉の「秋深き隣は何をする人ぞ」という俳句を思い浮かべる人も多いと思います。

旅先での宿泊だから良く解らないが、秋もすっかり深まった良い季節に、物音ひとつ立てずにひっそりと暮らしている隣の人は、どんな生活をしている人なのか?人恋しい。との意味でしょうか?

さて、日本の伝統的な住まいの建具に、平安時代からの歴史を有する襖や障子があります。
防寒、防風、湿度調整等の機能性、絵画や文字が描かれた装飾性等、優れた特性を備えておりますが、欧米諸国のドアのような鍵がありません。

平安時代は世界に例を見ない平和な社会でしたから、あえて鍵を付ける必要が無かったわけでしょうか?

つまり、か細い木と紙でできた襖一枚を隔てて、プライバシーを尊重してきたわけで、「案ずる」事を大切にして、人間関係を築いたのかもしれませんね。

その意味においては、日本は襖一つ隔てていれば、不安なく安眠できる国です。
ただ、外国ではそうはいきません。
隣に知らない人がいれば、なにかと心配になり、不安が付きまといます。

だから、日本では、襖や障子の開け・閉てに関しては、美しくて凛とした作法が存在するのだと思います。
実に素晴らしい事ですね。

しかし、豊かで便利で、さらに国際化が進展した現在では、生活様式が一変すると共に、このような、美しくて凛とした作法は、日常生活の中からすっかり消え失せた感があります。

「時代の流れだから」と言ってしまえばそれまででしょうが、少し寂しい気がしますね。
そして、寂しいと言えば、「物言えば唇寒し秋の風」でしょうか。

人を悪く言えばなんとなく後味が悪くなると言う意味ですが、「口は災いの元」、つまり、「つい余計な事を言ってしまい人から嫌われる」意味もあります。

秋も深まりすっかり冷え切った頃、口を開けば唇が冷気に当たり寒々となることから、このように表現されたわけで、誰でも多かれ少なかれ経験していることだと思います。

会議等で発言する時に、マナーの視点から注意したい事は、議長の許可を得て発言することはもちろんの事、「今、この事を発言する必要があるか否か」、さらに「この言葉は相手に不快感を与えるか否か」を考慮することが大切です。

議論が高まってくるとつい興奮して、暴言を吐いたり、言わなくてもよい事を言ってしまい、後味が悪くなることはありませんか?

特に相手の悪いところばかり攻撃し、相手を論破しても、すっきりするどころか、大変嫌な気分に陥ることがあります。まさに、物言えば唇寒し秋の風です。

江戸しぐさに「胸刺し言葉」がありますが、人の感情を逆なでする言葉はよろしく有りません。また、くどくど指摘するような言葉も不仲になる元です。
加えて、「しかし」「でも」「だって」等、人の話を無視する言葉も避け、出来る限り相手の話を、素直に聞くのが良いとされています。

このように、荒れた言葉を使用すると生活も荒れる、逆に、生活が荒れると言葉も荒れると戒めたわけです。

先人は、紅葉を見物する事を「紅葉狩り」と言う素晴らしい言葉で表現しました。そして、現代人は「桜前線」や「紅葉前線」等の大変美しい言葉を作りました。相手の事を察して、「唇寒し秋の風」にならないよう、注意したいものですね。

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