コラム

 公開日: 2013-02-28 

マナーうんちく話492≪「武家礼法」と「江戸しぐさ」≫

グローバルな時代を迎え、日本には欧米諸国から様々な学問が入ってきていますが、反面、日本は世界屈指の「礼節の国」として国際的な評価が高いのも事実です。

日本で最初に成文化されたマナーは、聖徳太子の「十七条の憲法」だと言われていますが、これは当時の貴族や官僚に向けて、和の尊さ等を説いたものです。

そして、朝廷、貴族、武家の様々な行事・儀式・制度・風習等を司る有職故実(ゆうそくこじつ)が生まれ、次第に「形」が重んじられるようになります。

さらに、室町時代になると、有職故実を参考に小笠原流や伊勢流の礼法が生まれますが、伊勢流は後継者がいなくて小笠原流のみが現代まで引き継がれています。

従って、礼節の国の根幹をなすのは、明治維新と共にアメリカ、イギリス、フランスから入って来た「マナー」や「エチケット」の影響が多少なりともあるものの、「小笠原流礼法」が基本になっているものと思われます。

そして、現在、私達が日常生活で、口や耳にする礼儀・作法を語るには、武士の存在を抜きにしては語れません。

例えば、武士に必要な馬術や剣道や弓道等には、細かな作法が定められていますし、時代劇などでよくみられる、刀の扱い方等の、いわゆる危機管理的要素の強い作法にも、重きが置かれるようになります。

加えて、武家社会は常に主従関係がつきものです。
主君に対し、家来として、どのように接するべきか?が常に問われることになります。これに儒教の影響が加味され、益々その傾向は強くなります。

例えば、現在でも和室における正式な座り方は正座ですが、このスタイルは、全国の諸大名が将軍に拝謁する時、将軍に服従すると言う意思表示として確立
されたと言う説が有力です。

お辞儀もそうですね。
人にとって一番大切で、しかも弱い部分である頭を無条件で差し出し、ひれ伏したわけです。

この他、主君に目通りする際の襖の開け・閉(た)て、主君が食事をする時に箱膳の運び方、加えて主君がトイレに入っている時は、どこに、どのように待機するか等など、あらゆる面において細かな作法が定められるようになります。

当時の武士は、公務員や官僚として成功するためには、武道や祭りごとに精通していても、最終的には知性や教養の伴う礼儀作法が必要不可欠になってくるわけです。

このように、武士の礼儀作法は、主として勤務先で有る城内において、堅苦しい作法が要求されてくるのが特徴です。

一方、武士の妻は、また別の視点での礼儀作法が求められてきます。
家庭における作法です。つまり、武士の妻は、武士の妻としてどのように接するか?が問われるわけです。

このコラムでも以前触れましたが、婚礼時の作法も相当細かく定められていたようですね。

武士の妻は、家の跡取りを作る事、すなわち出産が大きな任務ですから、嫁ぐ前から純潔、そして嫁いでからは貞操に重きが置かれます。
現代の花嫁姿で有る白無垢はその名残だといえます。

当時の武士やその妻は、身分や経済的には安定していたものの、厳しい礼儀作法に縛ら、窮屈な生活を強いられていたような気がします。

だから、礼儀作法に疎い武士は、何とかして礼儀作法を身に付ける努力をしなければいけません。そこで礼儀作法に精通した武士は、「礼儀作法の塾」を開設し、暮らしに役立てるようになります。
需要が沢山あるわけですから、この塾は結構繁盛したみたいです。

要は、武士に生まれれば、父親や藩校や礼儀作法の塾などにて、厳しい礼儀作法教育を受けるわけです。

それでは一般庶民はどうなのでしょうか?
一般庶民の間では、武士とはひと味違うマナーが生まれてくるわけですが、これが、いわゆる「江戸しぐさ」と呼ばれているマナーです。
江戸しぐさについては後日、詳しく触れて参ります。


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マナー講師 平松幹夫

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