コラム

 公開日: 2012-11-01 

マナーうんちく話375≪晩秋の輝きとなつかしい味覚≫

日本は、南北に細長く、四季の美しい国で、国土の約7割が山で覆われた国です。そして、その山の表情も四季により全て異なります。

自然と仲良く共生して、感性の豊かな日本人は、四季の様々な情景にマッチした山に、とても素敵な名前を付けました。

春になって百花僚乱になった山は「山笑う」、青葉・若葉で覆われる夏は「山滴る」、木々の葉が全て落ちつくした枯れ木の山は「山眠る」、そして赤や黄色く美しく色づいた秋の山は「山笑う」と表現しました。

これらに加えて現代人は、四季の移ろいの中でも特に美しい、春の桜の開花状況に「桜前線」、秋の紅葉の移り方に「紅葉前線」と、これまた大変美しいネーミングを付けました。

恐らく、このように自然の移ろいを敏感に、かつ優雅に味わうのは日本人だけではないでしょうか?

今日から11月。
霜が降り始めるから「霜降月」が転じて、「霜月」と言います。
「紅葉前線」が気になり始める頃ですね。
紅葉前線は桜前線とは逆で、日本列島を北から南に南下します。

「青葉」「色づき始め」「紅葉見ごろ」「色あせ始め」等と表示されますが、皆様方の地域では如何でしょうか?

世界で一番美しいと言われる日本の紅葉。
そして、それを飲食と共に観賞する「紅葉狩り」。
日本人ならではの伝統行事が今年も楽しみです。

そして、日本の秋を代表する果物と言えば「柿」です。
秋の果物には「葡萄」「梨」「リンゴ」「ミカン」「栗」「無花果」等など、沢山有りますが、中でも、一番日本的な果物といえば「柿」です。

その柿は、「甘ガキ」と「渋ガキ」に分かれることはご存知の通りです。
甘ガキはそのまま食しますが、渋ガキは、当然渋くて、そのままでは食べられません。
山の柿は、甘ガキだったら動物が好んで食べますので、この時期まで熟れ残ることはまずありません。この時期になっても、たわわに実っている柿は、まず渋ガキです。

その渋ガキを、先人は「干す」ことにより、渋を抜き、美味しく食べられるように工夫しました。
これが、正月には必要不可欠の縁起物である「干し柿」です。軒下につるしておくので「吊るし柿」ともいいます。

西洋には、「リンゴやトマトが豊作になれば医者がいらなくなる」と言う諺がありますが、日本では「柿が赤くなれば医者が青くなる」と言う諺が存在します。
それくらい、柿は日本人にとってなじみの深い果物なのです。

ところで皆さんは、渋ガキをおもい切りかじった経験がありますか?
私の幼い頃は、食べ物にも不自由していたので、渋ガキか甘ガキかは解りませんので、腹が減った時におもい切りかじってひどい目に遭った経験があります。

「馬鹿げたことを!」と思われるかもしれませんが、このような経験をして、生きる知恵を修得していくわけで、とても大切な経験だと思います。

その点、最近の子どもは、恵まれ過ぎて、渋ガキを食べたことがないので、「渋い」という味覚を知らないそうです。

可愛い子どもに、あえて苦渋の思いはさせないと言う親心ですが、良く考えてみれば、渋いという味覚に縁遠くなった子どもは、かわいそうな気がします。

食育が問われて久しくなりますが、楽しいイベントばかりではなく、是非、渋ガキ等の味も体験させていただきたいものですね。

紅葉前線がやってくる頃に、思い出したように「柿」が恋しくなりますが、幼い頃の苦い経験が懐かしくなるからでしょうか?

世の中は、甘いものばかりではなく、渋い物や苦い物も多々あるということを、幼い時に理解するだけでもいい勉強になります。

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マナー講師 平松幹夫

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