コラム

 公開日: 2012-04-28 

マナーうんちく話234≪お茶と「もてなしの心」≫

野山の緑がすっかり濃くなってきたら間もなく八十八夜ですね。
「八十八夜」は、なぜ八十八夜と呼ばれるのかご存知でしょうか?

既にこのコラムでもお話ししましたが、昔は立春が年の初めになっていたので、江戸時代になって、立春から数えて八十八日目を「八十八夜」と呼ぶようになり、大変お目出度い日として、「特別な意味を持つ」ようになったわけです。

ちなみに今年の立春は2月4日(土)でしたから、この日を起点にして88日目は5月1日ですから、今年の八十八夜は5月1日(火)になります。メ―デ―と重なります。

では、この八十八夜がなぜお目出度い日なのかと言えば、理由が二つあります。
先ず、「八」はもともと末広がりで縁起がいい数字とされており、それが二つ重なるからお目出度いという理由と、「八十八」の字を一つにすると「米」になるから、瑞穂の国日本では「八十八」は大変ありがたい数字になるわけです。
同じような理屈ですが、88歳の祝いを「米寿」といいます。

そしてこの時期は「新茶」を摘む時期でもあります。
そもそも、お茶は霜にとても弱く、霜には細心の注意を払うわけですが、この霜が落ち着くのがこの八十八夜の頃です。お茶を摘んだり、夏野菜の苗の植え付けの目安になります。

こうして八十八夜に摘まれたお茶は大変美味しくて縁起が良いモノとされ、神様にお供えしたり、世話になっている人への贈り物として重宝されます。
加えて、この日にお茶を飲むと「長生きする」と言う言い伝えも存在します。

但し、日本茶は日本では仏事のイメージが比較的強いので、気にする人もいますので、くれぐれも贈り物にする場合は、言葉足らずに注意して下さい。
要は、なぜこの時期にお茶を贈ったのか?明確な理由を発していただいたらいいですね。


ところで、日本人とお茶との出会いは、空海、最登が中国から持ち帰ったのが縁だと言われております。
当初は薬として、ごく一部の上流階級の人達に飲まれていたわけですが、やがて秀吉、利休の時代になって、人々の喉や心を潤す日常的な飲み物になりました。

このように千二百年もの長い歴史を経て培われたお茶には、日本人と切っても切れない深い関係があります。その効用は、カテキン、ポリフェノール、カフェイン、各種ビタミン類等の「栄養的側面」、さらに旨み、苦味、渋み等の「嗜好的側面」、そして安らぎ、癒し、団らん、もてなしという「精神的側面」が大きいということです。

特にもてなしという精神的側面は、「茶道」と言われる日本人独特の文化まで築き上げていますので、日本人にとって、お茶はとてもなじみの深いところです。

しかし2000年代に入り、ペットボトルの清涼飲料水のお茶の普及により、従来のお茶のスタイルが大きく変化してきたのはご承知の通りです。

しかも各メーカーの巧みな広告戦略によりそのシェアーは拡大の一途をたどりましたが、私には、すっかり味気ないものになってしまった気がしてなりません。たしかに利便性から言えば、ペットボトルのお茶はすばらしい利点がありますが、できればケースバイケースで、お湯を沸かし、急須で作る「手作りのお茶」も大切にしたいものだと感じます。

さらに、職場において、「お茶くみ」が女性に固定されており、それが男女共同参画社会の理念に反するという考えが浸透している気配も感じられますが、それなら男性も女性も平等にお茶を入れれば簡単に解決するのではないでしょうか?

そしてそこには大切な人を、「もてなす」とか「癒す」という日本人の原点が有ります。
従って、小さい時から、男性も女性も、美味しいお茶が淹れることができるような家庭における躾は、とても大切だと思います。

社会人になっても、お茶を淹れることができない人が、珍しくなくなっていますが、これで本当に豊かな国だと言えるのでしょうか?

今、夫婦、家族、職場、地域における人間関係が希薄になり、改めて「絆」創りの大切さが叫ばれているにもかかわらず、その具体的取組は一向に見えてきそうも有りません。
八十八夜を機会に、日本人が大切にしてきた、お茶による「もてなしの心」の復活と「絆づくりの再生」を期待したいところです。

健康もさることながら、先人が築いてきた、「真心を伝えるお茶」は、「心の安心・安全」という視点で、日本人の貴重な財産として後世に伝えるべきであります。

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