コラム

 公開日: 2012-04-20 

マナーうんちく話229≪穀雨と飲水思源≫

四季の美しい日本では、吹く風や、降る雨や雪にも、それぞれ吹き方や降り方、そして吹く時期や降る時期により、とても美しい名前が付けられています。
皆さんは、風や雨や雪の名前を幾つご存知でしょうか?

ちょうど今頃の季節でしょうか、春に降る、あまり強くない雨を「春雨(はるさめ)」と言います。また、前回お話しした「菜の花」が咲くころに降る長雨を「菜種梅雨」と言います。加えて、桜の花が咲いている頃に降る雨は花弁が雨で散るので「花チラシの雨」と名付けられています。以後、5月の「五月雨(さみだれ)」、6月の「梅雨(つゆ)」と続きます。

このように、その時期にふさわしい美しい名前で呼ばれ、生活の中にすっかり溶け込んできた日本の雨は実に多様ですが、中でも春の雨は、温かい感じで、のどかで、優しい印象が漂います。さらに万物の命を育む恵みの雨です。

そして、暦通りに雨が降りましたが、4月20日は二十四節季のひとつ「穀雨です
「穀物を育てる雨」という意味ですが、この時期の雨は穀物のみならず全ての植物の生長を促し、野も山も穀雨の恵みを一杯受け新緑がさらに増してきます。
勿論、農業にとっても大変ありがたい雨です。

しとしとと長く降る雨に、気分も重くなる人も多いと思いますが、穀物や野菜が大きく成長するために必要不可欠の雨です。
「嫌な雨」だと思わないで、「恵みの雨」だと有り難く感じて下さい。

「月さま、傘を・・・」と舞妓さんが傘を差し出すと、
「春雨じゃ、濡れてまいろう・・・」と月形半平太が答える。
この有名なフレーズは中年以上の方はよくご存知だと思います。

この「濡れてまいろう」の意味は、「雨に濡れながら風流を楽しむ」のか、「傘をさしても無意味なほど激しい雨」なのかは解りません。
確かに春の雨は、温かくて、優しくて、万物の成長を促す恵みの雨ですが、時には心身ともびしょ濡れにする激しい雨も有ります。油断大敵です。

ところで雨に関する、「飲水思源(いんすいしげん)」という諺をご存知でしょうか?

「水を飲む時は井戸を掘った人の事を思い出せ!」という諺が中国に有りますが、似たような意味ですね。

日本は綺麗な水にも恵まれ、水道も津々浦々まで普及しているので、今や私たちは蛇口をひねれば簡単に水を飲むことができます。しかし昔は用水路を、主に池や川から取らなければいけなかったので、それに費やした時間・経費・労力は大変なものでした。

従ってこの諺の意味は「水を飲む時にはその本減を思い出しなさい!」という意味と、「
人から受けた恩は忘れてはいけない!」と言う意味、さらに「何事にも感謝の気持ちを忘れてはいけない!」という戒めも有ります。

このコラムで何度も登場しましたが、日本には食前と食後に発する感謝の言葉が有ります。
食材に感謝する「いただきます」と、料理を作ってくれた人に感謝する「ごちそうさま」です。なにを、どうして頂くかと言えば、「動物や魚や野菜の命」を「私の命を永らえるため」に頂くわけですが、その命の源は実は「水」なのです。


日本は第二次世界大戦で大きなダメージを受けましたが、その後、持ち前の勤勉さで見事立ち直り、「経済大国」「技術大国」「長寿の国」になりました。
今の日本の水道技術は世界屈指です。

しかし一方では、水や土壌や大気が汚染され「公害」という言葉が生まれました。
しかも日本の公害の原点だと言われている「水俣病」は、1956年に発表され、1996年に和解が成立するまで、実に40年経過しています。
どれほど多くの人々が苦しんだか、想像を絶するものが有ります。

その苦い記憶が冷めないうちに、今度は原発事故により大気や水が放射能で汚染されました。勿論、原発の必要性の有無は、それぞれ意見が分かれるところです。
しかし、今の日本の本源を作ってくれた先人たちに、感謝の念を抱き続けることはとても大切です。「恩をあだで返す」ことは断じていけません。
19日のテレビのニュースで福島県富岡町の有名な桜を「防護服」を着て眺めているシーンが報じられましたが、胸が痛みました。

これから一雨毎に新緑が美しくなります。さらに、寒くもなく、暑くもなくの快適な日々がしばらく続きます。そして穀雨の終わり頃はゴールデンウイークです。八十八夜・憲法記念日・緑の日・子どもの日と楽しいイベントが目白押しになります。
その前に、「飲水思源」の視点で色々と考えてみるのもお勧めです。

この記事を書いたプロ

人づくり、生きがいづくりプロジェクトの岡山ハッピーコミュニケーション

マナー講師 平松幹夫

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