コラム

 公開日: 2015-10-30  最終更新日: 2015-11-11

(補説) 消費者契約法9条1号の,違約金は僅かでよい(平均的損害内)という規定が及ぶ契約とは?

 消費者契約法とは,便利なもの
 知っておくべきは,9条1号と10条のみ
 後は知らなくともよい
 しばしば起こるは,9条1号問題
 知っておくべき知識なり

 消費者契約法9条1号は,違約金の定めのうち「平均的損害」を超える定めは無効になると規定しています。この規定は,どのような契約に及ぶのか?といいますと,
(1)自宅の建築請負契約には,この規定が及ぶ
ア)千葉地裁平成16年7月28日判決は,「施主の都合で契約を解除するときは施工業者に対し請負代金額の20%に相当する違約金を支払わなければならない」との請負契約約款に基づき,請負業者から施主に対して違約金約400万円の支払いを請求した事件で,この契約は消費者契約法の適用を受けるとした上で,同法9条1号に書かれた平均的損害の金額は,請負業者が主張立証責任を負うとし,請負業者が違約金の具体的算定根拠を明らかにしない場合の事業者の平均的損害は,既に買主が支払った10万円を超えないものとして扱うほかなく,それを超える違約金条項は消費者契約法第9条第1号により無効であるとして,請負業者からの請求を棄却しました。
 
イ)東京地裁平成18年6月12日判決は,ログハウスの建築請負契約を,建築業者が契約の履行をする前に,施主から同契約の解除をしたケースです。
 契約書には,「施主は諸般の事由によりこの契約を解除することができる。ただし,施主は業者に対して建築請負金額総額の3分の1又は施主の解除により生じた業者の損害金額のいずれかのうち大なる金額を賠償しなければならない」と定めていました。
 判決は,この契約には消費者契約法第9条第1号の適用があるので,平均的な損害については業者が立証責任を負うが,公図取得料,交通費,土地登記簿謄本の取得費用等が平均的な損害として認められるものの,それらは合計しても10万円を超えないことは明らかであり,したがって,前記条項は10万円を超える限度で無効である,と判断しています。

(2)アパートや賃貸マンションの建築請負契約には,消費者契約法の適用はない
 個人であっても,「事業として又は事業のために契約の当事者となる場合における個人」は消費者ではないので(消費者契約法2条),アパートや賃貸マンションなどの収益事業を目的とした建物の建築請負契約では,違約金の定めは平均的損害を超えていても有効です。

(3)宅建業者が売主になった宅地又は建物の売買契約にも及ばない
 これはすでに解説したところですが,法律上の根拠を示しておきますと,消費者契約法11条が,消費者契約であっても,契約で定めた法律効果について「民法及び商法以外の他の法律に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。」と定めているからです。
 宅地建物取引業法39条1項は,宅建業者が売主になって結ぶ不動産の売買契約では,違約金は代金の額の10分の2を超えてはならない(宅地建物取引業法39条1項)と定めていますが,この規定はまさに,消費者契約法11条でいう「民法及び商法以外の他の法律に別段の定めがあるとき」の「その定め」になるからです。
 ここから,代金の10分の2,すなわち2割までの範囲で違約金を定める場合は,その違約金が平均的損害を超えるものであっても,有効になるのです。

この記事を書いたプロ

弁護士法人菊池綜合法律事務所 [ホームページ]

弁護士 菊池捷男

岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL:086-231-3535

  • 問い合わせ

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

2

こちらの関連するコラムもお読みください。

<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
 
このプロの紹介記事
菊池綜合法律事務所|菊池捷男弁護士は数多くの民事裁判を手がけてきたエキスパート

法律事務所は決して敷居の高い場所ではありません。(1/3)

 事務所設立以来40年、「うそをつかない、ごまかさない」を信念に、離婚や相続など数多くの民事裁判を手がけてきた菊池捷男さん。現在事務所には菊池さんを筆頭に6人の弁護士が在籍し、民事から企業法務まであらゆる法律問題をサポートしています。 ...

菊池捷男プロに相談してみよう!

山陽新聞社 マイベストプロ

あらゆる法律問題に対処可能

事務所名 : 弁護士法人菊池綜合法律事務所
住所 : 岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL : 086-231-3535

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

086-231-3535

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

菊池捷男(きくちとしお)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる
プロのおすすめコラム
離婚原因の一つである「夫婦関係の破綻」が,別居期間が短くとも認められる場合

これは,私の事務所が勝ち得た離婚判決の例です。一審判決は,別居期間が2年程度(一審判決までの期間)では,...

[ 離婚 ]

課税価格と相続税評価額とは違う

1 遺産の評価問題遺産分割の調停の席で,遺産(相続財産)の評価をどうするかという問題が提起されることがあ...

[ 相続相談 ]

遺留分減殺請求事件と相続税の処理

1 遺留分減殺請求をして,相続財産の一部の返還又は価額弁償金の支払を受けた遺留分権利者甲の場合これによっ...

[ 相続相談 ]

情報公開条例の誤解⑤ コピー代は全額請求するべし

Q 当市の公開条例には,公文書の開示の方法として写し(コピー)を交付する方法を採っており,コピー代として1...

[ 地方行政 ]

情報公開条例の誤解④ 権利がないことと,権利の乱用は違うこと

Q 住民からの公文書の開示請求に応じた後の,公文書の内容に対する質問に対しては,回答する義務のないことは分...

[ 地方行政 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ