コラム

2010-11-30

離婚 1 有責配偶者からの離婚請求


1 有責配偶者の意味
 不貞行為を働く等して、自ら婚姻関係を破壊した者が、夫婦関係が破綻していることを理由に、離婚請求をする場合の、離婚請求をする者を「有責配偶者」と言います。
2 昔の判例
 最高裁判所昭和27.2.19判決は、有責配偶者からの離婚請求は信義誠実の原則から認めない、と判示しました。
3 認めた判例
最高裁判所昭和62.9.2判決は、別居期間が36年にも及ぶ夫婦につき、有責配偶者からの離婚請求を認めました。
4 基準
前記最高裁判所判決は、有責配偶者からの離婚請求を認める基準を次の3つとしました。
① 別居期間が長期に及ぶこと。
② 夫婦間に未成熟の子がないこと。
③ 相手方配偶者が離婚により精神的・経済的に極めて苛酷な状況に置かれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような事情がないこと。
5 ①の基準である有責配偶者からの離婚請求認容に必要な別居期間
 その後、最高裁では,10年(昭和63.12.8判決),8年(平成2.11.8判決),9年(平成5.11.2判決)で有責配偶者からの離婚請求を認めていますが、8年(平成1.3.28日判決),11年(平成2.3.6判決)で棄却したものもあります。一応、最高裁の基準は,10年程度と思われます。
 ただし,下級審では,約5年間という期間でも,その他の事情もあわせ,離婚請求を認めた例(福岡高裁宮崎支部平成17.3.15決定等)があります。
 改正には至っていませんが,平成8年の民法改正要綱では,離婚原因として「夫婦が5年以上継続して婚姻の本旨に反する別居をしているとき。」が挙げられており,「5年以上」というのが破綻している(離婚が認められる)かどうかの1つの目安となろうかと思われますが、この点、有責配偶者からの離婚請求は、そうでない場合に比べ、長い期間が要求されている、と言えるでしょう。

6 ②の基準である未成熟子がいないこと。
未成熟子とは、親が扶養を要する子のことですが、子が高校生でも、離婚を認めた判例(最高裁平成6.2.8判決,東京高裁平成9.11.19判決など)もあります。
7 ③の基準である、相手方配偶者が離婚により精神的・経済的に極めて苛酷な状況に置かれる事情がないこと
 名古屋高裁平成20.4.8判決は、うつ病の妻との離婚請求について、「うつ病が治癒し,あるいは控訴人の病状についての被控訴人の理解が深まれば,控訴人と被控訴人の婚姻関係が改善することも期待できるところである」と,夫のうつ病への理解や治癒を待つ必要から,婚姻を認めませんでした。
東京高裁平成20.5.14判決では,妻が抑うつ症の事案で,「高齢に加えて,更年期障害,腰痛及び抑うつ症の疾病を患い,新たに職に就くことは極めて困難」として,「婚姻費用分担金の給付を受けることができなくなり,経済的な窮境に陥り,罹患する疾病に対する十分な治療を受けることすら危ぶまれる状況となることが容易に予想される」として,(未成熟子ではないが犯罪傾向があり援助が必要な子がいることも理由に含め,)離婚を認めませんでした。(夫は、約1200万円の慰謝料を提示していましたが,窮状に置かれるとの認定は左右されない,と判示しています。)
 
 以上から推測して、前記4の基準をより具体的にしますと、有責配偶者からの離婚請求は、別居期間が10年程度に及ぶこと、②その間に未成熟の子が存在しないこと、又は、存在しても十分な扶養料を支払うなどの配慮をしていること、③相手方配偶者がうつ病その他に罹患していないこと、罹患していても生活の不安のない手だてを講じていることの要件が必要になるのではないかと思います。

この記事を書いたプロ

弁護士法人菊池綜合法律事務所 [ホームページ]

弁護士 菊池捷男

岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL:086-231-3535

  • 問い合わせ

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

0
<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
 
このプロの紹介記事
菊池綜合法律事務所|菊池捷男弁護士は数多くの民事裁判を手がけてきたエキスパート

法律事務所は決して敷居の高い場所ではありません。(1/3)

 事務所設立以来40年、「うそをつかない、ごまかさない」を信念に、離婚や相続など数多くの民事裁判を手がけてきた菊池捷男さん。現在事務所には菊池さんを筆頭に6人の弁護士が在籍し、民事から企業法務まであらゆる法律問題をサポートしています。 ...

菊池捷男プロに相談してみよう!

山陽新聞社 マイベストプロ

あらゆる法律問題に対処可能

事務所名 : 弁護士法人菊池綜合法律事務所
住所 : 岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL : 086-231-3535

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

086-231-3535

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

菊池捷男(きくちとしお)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる
プロのおすすめコラム
読みはあっても,公用文では書かない漢字の例

次の語は,一般の人が漢字で書いても,違和感を持たれないのではないかと思われますが,公用文では, → の右に書い...

[ 公用文用語 ]

「私達」か「私たち」か? 「友達」か「友だち」か?

正解は,「私たち」と「友達」です。「私たち」の「たち」は,「私ども」の「ども」と同様,接尾語です。接...

[ 公用文用語 ]

「~にも拘わらず」か,「~にも関わらず」か,「~にもかかわらず」か?

正解は「~にもかかわらず」です。これは,接続詞の「したがって」が,漢字で「従って」と書くのではなく,平仮...

[ 公用文用語 ]

読みが「そのほか」である語句を, 「その外」と書くか,「そのほか」と書くか?

公用文では,「そのほか」と書くのが正解になります。「その外」と書くと,「外」は当て字になるからであると考...

[ 公用文用語 ]

金融機関は遺言書とどう向き合うべきか?① 遺言書の形式

 預金者が亡くなり,その預金を相続し,又は遺贈を受けたという者が,遺言書を持って,金融機関の窓口に現れた場...

[ 相続相談 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ