コラム

 公開日: 2015-07-30 

乱脈な法律論④ 遺言執行者と相続人の代理人の兼任は利益相反になるとの論

(1)日懲委平成20.4.14議決
 日懲委平成20.4.14議決は,弁護士が,遺言執行者になり,受遺相続人の代理人になることは,他の相続人との間で,当然に利益相反になると断じ,当該弁護士を懲戒処分にすべしと議決した。

(2)兼任は、利益相反ではない。
 弁護士法が、弁護士に禁ずる、利害相反というのは、①利害の対立する、甲と乙、双方の代理人になって契約を結ぶ双方代理や、②甲の代理人になって、自己と契約を結ぶ自己取引であるが、日弁連規則「弁護士職務基本規程」は、③「弁護士が,資力の乏しいZ社に対して債権を有するA社とB社の双方から債権回収のための事件を受任した場合,A社のために最大限の回収をすると,B社は回収できなくなるような行為」(括弧内は、書籍・「解説弁護士職務基本規程」の示す28条3号に該当する事件の例示)を受任することも、その28条3号の「依頼者の利益と他の依頼者の利益が相反する事件」として禁止しているが、これらは、いずれも、弁護士がその裁量権を行使して、委任者に有利にも、不利にも、法律効果を及ぼしうる権限を有する場合である。
 したがって、遺言執行者になった弁護士が、その裁量権の行使によって、相続人に、法律効果を及ぼすことのできない場合は、利益相反にはならないのである(日弁連倫理委員会編著・書籍「解説・弁護士職務基本規程第2版」84頁以下)。
 なお、日懲委平成22年5月10日議決も、「遺言の内容からして遺言執行者に裁量の余地はない場合は,遺言執行者と各相続人との間には,実質的な利益相反の関係は認められない」として、受遺相続人の代理人が,遺言執行者になることは,利益相反行為になるとして下した、弁護士に対する懲戒処分を取消しているのである。
 したがって、20年議決のいう、受遺相続人の代理人が,遺言執行者になることは,当然に利益相反行為になるとの論は、成立しないのである。

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