コラム

 公開日: 2015-07-27  最終更新日: 2015-07-28

乱脈な法律論① 淵源は,遺言執行者は相続人の代理人との天動説

1 事の起こりは,天動説にあり
(1)日懲委の解釈
 日弁連懲戒委員会(以下「日懲委」と略称する。)が,弁護士を懲戒に処す理由とした,乱脈な法律論の起こりは,民法1015条の「遺言執行者は,相続人の代理人とみなす。」という規定を,字義のとおりに解釈したことにある。
 しかし,これは,朝,東の端から昇り,昼,中天に至り,夕,西の端に沈む,目に見える太陽の動きから,地球が太陽の周りを回っているのではなく,太陽が地球の周りを回っていると信じた,天動説と同じく,事の外形,日懲委の場合は法律の条文に書かれた字句を,そのまま,真実なり,と信じたことから思い込んだ,誤謬,すなわち,観念の惑いでしかない。

(2)地動説(正しい民法1015条の解釈論)
国民は,遺言の自由が認められている。しかしながら,遺言の効力が生ずるのは,遺言者が亡くなった時であるので,遺言者自身が,遺言執行をすることはできない。では,誰が遺言執行をするのか?というと,それは,遺言者の地位を承継した相続人である。
 では,遺言者の相続人は,確実に遺言執行をしてくれるかというと,必ずしもそうするとは限らない。そのため,遺言執行者制度が設けられたのである。
 東京地方裁判所平成24年1月25日判決から,言葉を借りれば,「遺言執行者は,遺言事項によっては,相続人との利害対立や相続人間の意見不一致,一部の相続人の非協力などによって,公正な遺言の執行が期待できない場合があるため,適正迅速な執行の実現を期して」指定又は選任されるのである。
 たしかに,民法1015条は,「遺言執行者は相続人の代理人とみなす。」と規定しているが,これは,遺言執行者がする遺言執行は,相続人がするのと同じく,その法律効果が相続人に帰属する,ことを明らかにした規定でしかないのである。教科書にも,そう書いてあるが,遺言執行者には,相続人を代理する権限はない。代理権のない者を,代理人とはいわない。この一事をもっても,遺言執行者が相続人の代理人でないことは自明のことなのである。

(3)日懲委の乱脈な法律論の淵源
 以上の次第で,遺言執行者を,相続人の代理人だと考えるのは,天動説と同じく,科学的,法律論的に間違った考えなのである。
 日懲委が,弁護士を懲戒処分に付す理由として考えた,次回のコラムから紹介する,多くの乱脈な法律論は,すべて,この天動説,すなわち,遺言執行者を相続人の代理人と考える考えに,淵源を持つ。

この記事を書いたプロ

弁護士法人菊池綜合法律事務所 [ホームページ]

弁護士 菊池捷男

岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL:086-231-3535

  • 問い合わせ

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

2

こちらの関連するコラムもお読みください。

<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
 
このプロの紹介記事
菊池綜合法律事務所|菊池捷男弁護士は数多くの民事裁判を手がけてきたエキスパート

法律事務所は決して敷居の高い場所ではありません。(1/3)

 事務所設立以来40年、「うそをつかない、ごまかさない」を信念に、離婚や相続など数多くの民事裁判を手がけてきた菊池捷男さん。現在事務所には菊池さんを筆頭に6人の弁護士が在籍し、民事から企業法務まであらゆる法律問題をサポートしています。 ...

菊池捷男プロに相談してみよう!

山陽新聞社 マイベストプロ

あらゆる法律問題に対処可能

事務所名 : 弁護士法人菊池綜合法律事務所
住所 : 岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL : 086-231-3535

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

086-231-3535

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

菊池捷男(きくちとしお)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる
プロのおすすめコラム
情報公開条例の誤解⑤ コピー代は全額請求するべし

Q 当市の公開条例には,公文書の開示の方法として写し(コピー)を交付する方法を採っており,コピー代として1...

[ 地方行政 ]

情報公開条例の誤解④ 権利がないことと,権利の乱用は違うこと

Q 住民からの公文書の開示請求に応じた後の,公文書の内容に対する質問に対しては,回答する義務のないことは分...

[ 地方行政 ]

情報公開条例の誤解③ 助言義務は説明義務に非ず

Q 当市の公開条例には,第3条 何人も,この条例の定めるところにより,実施機関に対し,当該実施機関の保有す...

[ 地方行政 ]

情報公開条例の誤解➁ 知る権利は,法と条例の制限内の権利なり

Q 情報の開示を請求した住民に,公文書のコピーを交付した後,当該住民から,住民には“知る権利”があるのだから...

[ 契約書 ]

情報公開条例の誤解① 説明義務はない

Q 私はA市の情報公開担当課の者ですが,次のような請求に困っています。アドバイスを御願いいたします。1...

[ 地方行政 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ