コラム

 公開日: 2010-11-26 

相続 52 「持戻し免除の意思表示」があったと言える場合


「相続 51」で説明しましたが、遺贈分や生前贈与分を持戻した場合と、そうでない場合とでは、各相続人の具体的相続分、したがって各相続人の最終の取得分が違ってきます。
遺贈を受けた相続人や、生前贈与を受けている相続人の場合、その持戻しが免除されると断然有利です。
では、被相続人がどのような意思表示をしたときに、持戻しの免除の意思表示があったとされるのでしょうか?

1 生前贈与の場合
持戻し免除の意思表示は、時期、その方式に制限はなく、明示の意思表示でなく、黙示の意思表示によるものでもよいとされています。
審判例では、被相続人が「黙示の意思表示」で持戻しの免除をした、と認定された事例が結構あるようです。黙示の意思表示とは、被相続人の態度を見れば、持戻しを免除する意思があったはずだ、と言える場合です。裁判例としては、以下のものがあります。

福岡高裁昭和45.7.31決定は、三男が被相続人と同居をして農耕に従事していた上に、日付の記載がないために無効になった遺言書には三男に全財産を譲渡するとの旨の記載があるので、被相続人が三男に法定相続分を超える農地の贈与をしていたことについては持戻し免除の意思表示があったとしています。

那覇家庭裁判所昭和48.11.20審判は、長男が、被相続人の土地の上に家を建て使用貸借の権利を取得した(これも無償の権利の取得になるので「贈与」になる)が、これは、長男がその建物の一部に被相続人を住まわせ、生活の面倒をみるためであったので、その「使用貸借権の設定」については持戻し免除の意思表示があったと認定しています。

東京高等裁判所昭和57.3.16決定は、夫が家を建てる際、被相続人(妻)が建築資金の一部を贈与したが、妻はその家に夫と共に住み、主として夫の収入で生活を維持してきた関係があるので、妻が夫に贈与した建築資金については持戻し免除の意思表示があったと認定しています。

鳥取家庭裁判所被相続人5.3.10審判は、被相続人が同居していた二男に不動産購入資金を贈与したのは、復員してきた長男のために次男が家を出て行かざるを得なくなったため、申し訳ないという気持ちからしたものであるから、その贈与分については持戻し免除の黙示の意思表示があった、と認定しています。

生前贈与については、たんなる「相続分の前渡し」ではなく、被相続人にもそれをするだけの事情があったとされれば、意外と持戻し免除の意思表示あったとの認定がなされているのではないかと思われます。

2 遺贈
遺贈は、その行為自体が遺言によってなされますので、その持戻し免除の意思表示も遺言でなされなければならない、とされています。

参照条文
民法903条(特別受益者の相続分)
1項は、具体的相続分の計算方法に関する規定
2項は、超過特別受益者に関する規定
3項は「被相続人が前2項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思表示は、遺留分に関する規定に違反しない範囲内で、その効力を有する」は持戻し免除の意思表示に関する規定

この記事を書いたプロ

弁護士法人菊池綜合法律事務所 [ホームページ]

弁護士 菊池捷男

岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL:086-231-3535

  • 問い合わせ

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

2
<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
 
このプロの紹介記事
菊池綜合法律事務所|菊池捷男弁護士は数多くの民事裁判を手がけてきたエキスパート

法律事務所は決して敷居の高い場所ではありません。(1/3)

 事務所設立以来40年、「うそをつかない、ごまかさない」を信念に、離婚や相続など数多くの民事裁判を手がけてきた菊池捷男さん。現在事務所には菊池さんを筆頭に6人の弁護士が在籍し、民事から企業法務まであらゆる法律問題をサポートしています。 ...

菊池捷男プロに相談してみよう!

山陽新聞社 マイベストプロ

あらゆる法律問題に対処可能

事務所名 : 弁護士法人菊池綜合法律事務所
住所 : 岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL : 086-231-3535

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

086-231-3535

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

菊池捷男(きくちとしお)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる
プロのおすすめコラム
独占禁止法違反 返品が、優越的地位の濫用に当たる場合と、当たらない場合、それぞれの要件

公正取引委員会平成27年3月26日審決(平成24年(判)第6号及び第7号)は、優越的地位の濫用に対して課徴...

[ 会社関係法 ]

景品表示法違反② 課徴金制度の導入と初適用事例

優良誤認表示などの不当表示に、課徴金制度が導入されたのは、改正景品表示法の施行日(平成28年4月1日)から...

[ 会社関係法 ]

民法(債権法)改正法が成立

 本日、民法(債権法)に関する改正民法が成立しました。制定以来、約120年ぶりの大改正です。改正は、約200項...

[ 債権法改正と契約実務 ]

景品表示法違反① 合理的根拠資料を持たずして、効果・性能表示をなすなかれ

 不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)は、「不当表示」を禁じています。その一類型である「優良誤認表...

[ 会社関係法 ]

従業員との間の競業避止契約は、代償措置がとられていないと、無効

東京地方裁判所平成28年12月19日判決は、会社が従業員との間で競業避止契約を結び、従業員から退職の申し出...

[ 会社関係法 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ