コラム

 公開日: 2010-11-25  最終更新日: 2010-12-05

相続 51 「持戻し」と「持戻し免除」


1 「持戻し」の意味
持戻しとは、法定相続分又は指定相続分を修正するために、遺贈を受けた相続人と生前贈与を受けていた相続人から、その分を相続財産に、いったん戻してもらうことを言いますが、「戻す」と言っても、これは現実にその財産を戻すというのではなく、計算上のことです。すなわち、
次の例で説明しますと
【事例】
夫が1億円の相続財産を残して亡くなりました。相続人は、妻と長男と長女です。夫は遺言を書いていました。その遺言には、「長男にA宅地を遺贈する。」というものでした。
A宅地の価額は2000万円とします。夫は、また、生前、長女が婚姻するときに、B宅地を贈与していました。B宅地の価額は1500万円だとします。夫は、これ以外に遺言を書いていませんので、相続分の指定はありません。
これにより、
ア 夫の相続財産・・・・・・1億円
イ 遺贈・・・・・・・・・・2000万円分(相続財産の中から長男に遺贈されたもの)
ウ 生前贈与・・・・・・・・1500万円分(長女に与えていたもの)
エ みなし相続財産・・・・・1億1500万円(ア+ウ。イはアの中に含まれている)
であることが分かります。

持ち戻しとは、遺贈の2000万円を引かないこと、生前贈与の1500万円を加算することです。

2 持戻し免除
持ち戻し免除とは、持戻しを免除することです。
⑴ 上記の例で、長男の遺贈分のみを「持戻し免除」しますと、
ア 夫の相続財産・・・・・・1億円
イ 遺贈・・・・・・・・・・2000万円分
ウ 生前贈与・・・・・・・・1500万円分
エ みなし相続財産・・・・・9500万円(ア-イ+ウ。遺贈分が長男に与えるために引かれています。)
になり、
妻の相続分は、9500万円の1/2(法定相続分)=4750万円
長男の相続分は、9500万円の1/4(法定相続分)=2375万円ですが、別に遺贈分2000万円がありますので、4375万円もらえます。
長女の相続分は、9500万円の1/4(法定相続分)=2375万円になりますが、この中には1500万円の生前贈与分があり、これはすでに長女がもらっていますので、これを引きますと、相続財産の中からは875万円しかもらえません。

⑵ 上記の例で、長女の生前贈与分のみを「持戻し免除」しますと、
ア 夫の相続財産・・・・・・1億円
イ 遺贈・・・・・・・・・・2000万円分
ウ 生前贈与・・・・・・・・1500万円分
エ みなし相続財産・・・・・1億円(ア。遺贈分は「持戻し」されますので、その分は引きません。また、生前贈与分は「持戻し」が免除されていますので、その分は加えません。その結果、みなし相続財産は1億円のままになります。)
になり、
妻の相続分は、1億円の1/2(法定相続分)=5000万円
長男の相続分は、1億の1/4(法定相続分)=2500万円ですが、この中には遺贈分2000万円がありますので、これを除くと500万円しかもらえません。相続分と遺贈分合わせると2500万円になります。
長女の相続分は、1億円の1/4(法定相続分)=2500万円になります。
生前贈与分はそのまま長女のものです。

⑶ 上記の例で、長男の遺贈分と長女の生前贈与分をともに「持戻し免除」しますと、
ア 夫の相続財産・・・・・・1億円
イ 遺贈・・・・・・・・・・2000万円分
ウ 生前贈与・・・・・・・・1500万円分
エ みなし相続財産・・・・・8000万円(ア。遺贈分を引きますので、相続財産は減ります。生前贈与分を加えないので、相続財産は増えません。)
になり、
妻の相続分は、8000円の1/2(法定相続分)=4000万円
長男の相続分は、8000万円の1/4(法定相続分)=2000万円ですが、別に遺贈分2000万円がありますので、4000万円もらえます。
長女の相続分は、8000万円の1/4(法定相続分)=2000万円になります。(生前に贈与を受けたものはそのままもらってよいのです。)

以上が持戻しと持戻し免除の意味と内容です。

この記事を書いたプロ

弁護士法人菊池綜合法律事務所 [ホームページ]

弁護士 菊池捷男

岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL:086-231-3535

  • 問い合わせ

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

3
<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
 
このプロの紹介記事
菊池綜合法律事務所|菊池捷男弁護士は数多くの民事裁判を手がけてきたエキスパート

法律事務所は決して敷居の高い場所ではありません。(1/3)

 事務所設立以来40年、「うそをつかない、ごまかさない」を信念に、離婚や相続など数多くの民事裁判を手がけてきた菊池捷男さん。現在事務所には菊池さんを筆頭に6人の弁護士が在籍し、民事から企業法務まであらゆる法律問題をサポートしています。 ...

菊池捷男プロに相談してみよう!

山陽新聞社 マイベストプロ

あらゆる法律問題に対処可能

事務所名 : 弁護士法人菊池綜合法律事務所
住所 : 岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL : 086-231-3535

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

086-231-3535

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

菊池捷男(きくちとしお)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる
プロのおすすめコラム
第2章 1遺産分割 2具体的相続分(金額)を決める三つの方法(3)寄与分の控除・加算型
イメージ

【補説】寄与分とは、被相続人の生前、相続人が遺産になる財産の増殖(価値の増大)に貢献した貢献分のことを...

独禁法って何だ?4 公取委から人がやってきたとき・独禁法と下請法との関係・下請法版リーニエンシー

8 会社が公取委から事情聴取の申込みを受けた場合「のう、後藤よ!会社にとっては、あまり嬉しくもないことだ...

[ 菊池と後藤の法律実務レポート(企業編) ]

独禁法って何だ?3 課徴金対象行為・課徴金減免措置・カルテル防止義務

5 課徴金の対象となる行為と課徴金額「課徴金が課せられるという場合、どのくらいの金額になるのかのう。」...

[ 菊池と後藤の法律実務レポート(企業編) ]

独禁法って何だ?2  証券会社の損失補填事件

4 証券会社の損失補填事件「のう、後藤!独禁法の規定は、不明確な用語が使われていて、意味が分かりにくいと...

[ 菊池と後藤の法律実務レポート(企業編) ]

第2章 1遺産分割 2具体的相続分(金額)を決める三つの方法(2)特別受益の持戻し計算型
イメージ

【補説】生前贈与を受けている相続人は、その生前贈与分を、相続の先渡しを受けたものとして、具体的相続分...

[ イラストによる相続法 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ