コラム

2010-11-13

相続 42 投資信託については、統一した見解はない。


 預金、預り金、貸金などの債権は、遺産分割協議をしなくとも、法定相続分の割合だけ、直接、債務者にたいし、その支払の請求が出来ますが、銀行や証券会社で購入した投資信託については、どうでしょうか?

1 可分債権になるとの裁判例
①大阪地方裁判所平成18.7.21判決は、被相続人が証券会社に対して有していた投資信託受益証券換価請求権及び換価代金支払請求権は、口数単位で分割可能な債権であるので、相続人は相続分に応じた請求権を単独承継する、と判示しました。

2 可分債権ではないとの裁判例
 ②熊本地方裁判所平成21.7.28判決及びその控訴審である③福岡高等裁判所平成22.2.17判決は、投資信託受益権は単純な金銭債権ではないとして、分割が可能な債権にはあたらないとしています。その理由として、福岡高裁の判決では、投資信託は、議決権、分配金請求権等を含む不可分債権だとしています。

3 投資信託が可分債権でないとする②と③の判決では、遺産分割協議を経ないと、投資信託受益権の解約、解約返戻金の請求ができないか?

②の判決は、過半数の相続分を持つ相続人からの解約は出来るとしています。
すなわち、投資信託受益権は、可分債権ではないので、共同相続人が全員で準共有しているが、この場合、準共有に関する民法264条が準用する民法252条本文「共有物の管理に関する事項は、・・・各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。」の適用を受けるので、共同相続人のもつ総相続分の過半数の相続分を持つ相続人から、投資信託の全部につき解約又は買戻しを請求することができ、この請求がされると、証券会社に対する権利は解約代金ないし買戻代金の支払請求権という金銭債権になり、これは可分債権であるから、相続人らは、各自の持分に応じた額の支払請求が可能になる、と判示しているのです。

これに対し、③の判決は、投資信託受益権は可分債権ではなく、共同相続人が全員で準共有しているが、これを換金するためには、投資信託の解約請求又は買戻請求をしなければならないところ、その請求を行うことは受益権の処分、すなわち共有物の変更に当たると解すべきである。共有物の変更についての民法251条は、「各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。」と定めており、投資信託契約の約款上も、他の受益者と協議せずに単独で受益証券の返還を請求できる等、単独での解約請求又は買戻請求を求める旨の規定が存在しないので、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、解約請求又は買戻請求をすることができないことは明らかであると判示しています。

以上3つの見解を、100口の投資信託を有する夫が死亡し、相続人は妻と長男と長女の3人、遺言はないという事案に即して解説しますと、
①の判決の考えでは、相続人全員での遺産分割協議を待たなくとも、妻は50口、長男と長女はそれぞれ25口の投資信託の権利を直接証券会社に請求できることになります。
②の判決の考えでは、妻と長男が一致して権利を行使すれば、相続分について過半数になりますので、投資信託の解約ができることになり、妻は50口分、長男は25口分、長女も25口分の権利の行使が可能になります。
③の判決の考えでは、投資信託の解約などの権利行使は、全相続人が同意しなければできないことになります。

今のところ、最高裁判所の判決はありませんので、実務では、まだ統一した見解はない、ということです。

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