コラム

2015-05-19

民法雑学 ビルによる電波障害(不法行為責任)と損害賠償の範囲

Q 当社は,今般,当社が建築したビルの周辺の地権者から,ビルができたおかげでテレビ映りが悪くなったので,損害賠償をしてくれといわれました。当社には,損害賠償義務があるのですか?あるとした場合の損害賠償の範囲はどのようなものになるのですか?

A 貴社の場合,東京地裁平成4年7月28日判決が参考になると思います。
 同判決は,地上25.5m,八階建て建物ができ,原告宅のテレビに電波障害が発生し、ゴーストが甚だしく、映像とならない状態となったため,原告が,ケーブルテレビを利用して問題を解決した事件で,ビルを所有する会社の不法行為責任を認めた事件の判決です。
1,不法行為による損害賠償義務について
 同判決は,「原告宅のテレビ画面の映像にゴーストが出る状態は一向に改善されず、NHKのほか民放の一部の映りが悪く、子供が興味を示すアニメーション番組の映像もひどい状態にある。・・・原告の妻としては、ゴーストのある状態では目に悪いと考え子供達にはテレビを見せずに、ビデオを見せるようにしている。・・・原告は、・・・家族を含めて、その生活上の不利益を被っているものということができるから、被告は、これによって原告が被った損害を賠償すべき責任があるというべきである。」と判示して,同建物の所有会社の不法行為責任を認めました。

2,損害の範囲について
 続いて,同判決は,「原告宅の地域では、株式会社**ケーブルテレビジョンが開設しているケーブルテレビを利用することが可能であること、原告宅の前記受信障害を解消するための方策としては、右ケーブルテレビを利用することが簡便かつ低廉であるといえること」と認定した上で,①ケーブルテレビ加入契約料とし51500円、➁工事費24000円、それに③10年分の利用料金(ただし,中間利息控除後)を損害として認定しました。
実は,この事件の原告が請求したのは①と➁,それに③は20年分の利用料でしたが,判決は,「ところで、原告は二〇年分の利用料を請求するが、仮に被告建物の建設がなかったとしても、将来的に、付近の環境等の変化によって原告宅のテレビの受信状態が影響を受ける可能性もなかったわけではないことなどを考えると、本件においては、一〇年分の利用料の負担をもって被告建物の建設と相当因果関係にある損害と認めるのが相当である」と判示しました。
また,被告の方から,原告は従前よりも,多チャンネルのテレビを見ることができるようになるので,①➁③の全額を損害賠償の範囲とするのは不当だとする主張に対しては,同判決は,「本件ケーブルテレビを利用した場合には、NHKなど通常のチャンネル以外の放送も多数聴視することができる・・・しかし、原告としては、特にそれらの放送を聴視することを希望しているわけではなく、NHKなど通常の放送を受信する方法として(即ち、被告建物による被害を回復するための方法として)本件ケーブルテレビを利用するほかないのであるから、被告が主張するように、本件ケーブルテレビに加入することによって多数のチャンネルを聴視しうることとなるとしても(また、仮に画像が向上するとしても)、そのことは、利用料の全額をもって本件受信障害による損害と認めることの妨げとなるものではないというべきである。」と判示しました。

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