コラム

 公開日: 2010-11-11 

相続 40 預金は、遺産分割協議の必要のない相続財産


1 可分債権は遺産分割協議の必要はない
最高裁判所昭和29.4.8判決は、相続人数人ある場合において、その相続財産中に金銭債権等の可分債権があるときは、その債権は法律上当然分割され、各共同相続人がその相続分に応じて権利を承継するものと解するを相当とするとし、可分債権は遺産分割協議の必要はないと判示しましたが、この理は、遺産のうち、預金などの「可分債権」すなわち、観念的に同質のものに分割が可能な財産である債権は、遺産分割によらないで、当然に、そのうちの相続分を取得できるということなのです。

2 遺産分割の対象にすることは可能
ただ、預金など確実に回収可能な債権は、ほとんど現金と同じ感覚で扱うことが出来ますので、その他の遺産、例えば不動産の分割をするときに、共同相続人間で必ずしも予定している相続分どおりに財産を取得できないような場合、その不均衡を是正するために預金を法定相続分とは異なる配分にすることで調整することできますので、預金を遺産分割の対象にした方が良い場合があります。
ですから、裁判所は、共同相続人が全員預金を遺産分割の対象にすることに同意した場合は、遺産分割の審判の対象にできるとしているのです(東京高裁平成14年2月15日決定)。
実務では、預金を遺産分割の対象資産としている場合が結構あります。他の共同相続人から異議が出ない場合は、これを分割対象にしているが現状であると思えます。
なお、金融機関によっては、共同相続人の全員の同意がないと相続預金の払い戻し請求に応じないところがあるようですが、法的にはそれは許されないことですので、訴訟を起こせば、年5%もの遅延損害金つきで支払ってもらえます。

3 定額貯金の場合
このように、預金は可分債権であるので、遺産分割をしなくても、当然に各共同相続人に法定相続分で取得する、といっても、ゆうちょ銀行の定額貯金は、預入時から10年間は払い戻し請求ができません(旧郵便貯金法の定めですが、現在でも有効)ので、その間は、相続人からの法定相続分の割合による払い戻し請求はできません(東京高裁平成11.3.25判決)。この定額貯金は、可分債権でありますが、相続人が単独で払い戻し請求が出来ないために、遺産分割の対象として扱われます。
定期預金も、満期までは定額郵便貯金と同じ扱いになる、と考えられます。

この記事を書いたプロ

弁護士法人菊池綜合法律事務所 [ホームページ]

弁護士 菊池捷男

岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL:086-231-3535

  • 問い合わせ

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

0
<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
 
このプロの紹介記事
菊池綜合法律事務所|菊池捷男弁護士は数多くの民事裁判を手がけてきたエキスパート

法律事務所は決して敷居の高い場所ではありません。(1/3)

 事務所設立以来40年、「うそをつかない、ごまかさない」を信念に、離婚や相続など数多くの民事裁判を手がけてきた菊池捷男さん。現在事務所には菊池さんを筆頭に6人の弁護士が在籍し、民事から企業法務まであらゆる法律問題をサポートしています。 ...

菊池捷男プロに相談してみよう!

山陽新聞社 マイベストプロ

あらゆる法律問題に対処可能

事務所名 : 弁護士法人菊池綜合法律事務所
住所 : 岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL : 086-231-3535

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

086-231-3535

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

菊池捷男(きくちとしお)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる
プロのおすすめコラム
相続税における「私道供用宅地の時価」の意味

相続税法22条及び評価通達は、相続税の対象になる財産の価額は相続時の時価によるものとすると定め、「時価」とは...

[ 民法と税法 ]

労働 歩合給から時間外手当(相当額)等を控除したものを賃金とする定めは有効

 最高裁判所第三小法廷平成平成29年2月28日判決は、タクシー会社が、従業員であるタクシー乗務員との雇用...

[ 労働 ]

同音異義語(追加1)

あからむ(赤らむ・明らむ)ア 赤らむ意味:色が赤くなること用例:顔が赤らむ熟語:赤面イ 明らむ...

[ 公用文用語 ]

労働 付加金の支払を命ずる場合の要件

労働基準法114条は、「裁判所は、・・・第37条の規定(筆者注:時間外、休日及び深夜の割増賃金に関する規定)に違...

[ 労働 ]

文科省「用字用語の表記例」から③ 漢字と仮名の使い分け

文科省の平成23年3月31日付「用字用語の表記例」には、次の語について、漢字で書く場合と仮名で書く場合があること...

[ 公用文用語 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ