コラム

2015-03-09

民法雑学 最高裁の破棄判決例と囲繞地通行権

1,囲繞地(袋地)通行権
 袋地・・・他の土地に囲まれて公道に通じない土地
 囲繞地・・・袋地を囲んだ土地
 民法210条1項は「他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は,公道に至るため,その土地を囲んでいる他の土地を通行できる。」という規定を置いています。
 周囲が他人の土地に囲まれている土地(袋地)は,公道への出口がないため,土地の利用ができません。そこで,袋地所有者は,袋地を囲繞(いにょう)している他人の土地を通行できる権利が認められているのです。

2,土地を分割した結果,袋地になった土地の所有者は,囲繞地通行権の対象者が限られる。
 分割により袋地になった土地の所有者の通行権・・・他の分割者の所有地のみが対象
 民法213条1項は,「分割によって公道に通じない土地が生じたときは,その土地の所有者は,公道に至るため,他の分割者の所有地のみを通行することができる。」という規定を置いています。

3,原審判断と最高裁判所判断
 原審の高裁判決は,袋地所有者には,民法213条1項による通行権(他の分割者の所有地のみを通行することができる通行権)があるので,民法210条の通行権(分割とは無関係な囲繞地に対する通行権)は認められないと判示し,細かな事情を検討することなく袋地所有者の請求を一蹴しました。

4,最高裁判所平成18年3月16日第一小法廷判決
 同判決は,分割前の一団の土地であった時代でも,隣地である囲繞地との境には赤道があり,その後赤道は,囲繞地の所有者が払下げを受けて団地内道路として拡幅し幅4mの道路になっていること,袋地所有者も,そこを囲繞地の所有者から通行禁止を言い渡されるまで自動車で通行してきたこと,他の分割者の所有地は鉄塔用地になっているため通行が困難になったこと,袋地所有者は,墓地を経営したり,墓参者のための駐車場等を経営することを計画しているため,囲繞地を通って自動車で公道に出入りをする必要性があることなどの事情の有無及び内容も,他の事情と共に総合考慮して判断されなければならない,と判示して,「213条通行権が成立することを前提に,上記事情等を考慮することなく本件土地について自動車の通行を前提とする210条通行権の成立を否定した原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。」と裁判官全員一致で,原判決を破棄,差し戻しをしました。

5,自動車による通行権も認められる場合がある。
 前記最高裁判決は,「現代社会においては,自動車による通行を必要とすべき状況が多く見受けられる反面,自動車による通行を認めると,一般に,他の土地から通路としてより多くの土地を割く必要がある上,自動車事故が発生する危険性が生ずることなども否定することができない。したがって,自動車による通行を前提とする210条通行権の成否及びその具体的内容は,他の土地について自動車による通行を認める必要性,周辺の土地の状況,自動車による通行を前提とする210条通行権が認められることにより他の土地の所有者が被る不利益等の諸事情を総合考慮して判断すべきである。」と判示して,状況によっては自動車による通行権も認める趣旨を明らかにしました。

6,破棄の理由
 原審の判決(原判決)は,本件袋地の状況やその所有者の過去の赤線道の利用や現在の私道を一時使用していたこと,また,現在通行の必要性,私道の所有者の負担などの諸事情を一切考えないで,民法213条1項による通行権があるので民法210条の通行権は認められないと,機械的に判断しただけであったので,破棄されたのです。
 法律は,人間生活を規律する規範であることを考えると,人間生活の実状に目を向けない判決は,血の通った判決とは言い得ず,最高裁判決は,それを破棄の理由としたのです。

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