コラム

 公開日: 2015-02-23 

労働 仮眠時間に対する給与➁ 泊まり勤務手当

 最高裁判所平成14年2月28日判決は,仮眠時間が労基法上の労働時間に当たる場合でも,
①労基法上の労働時間であるからといって,当然に労働契約所定の賃金請求権が発生するものではなく,当該労働契約において仮眠時間に対していかなる賃金を支払うものと合意されているかによって定まるものである。
➁通常は労働契約上の賃金支払の対象となる時間としているものと解するのが相当である。
③(しかしながら,)賃金規定や労働協約が,仮眠時間中の実作業時間に対しては時間外勤務手当や深夜就業手当を支給するとの規定を置く一方,不活動仮眠時間に対する賃金の支給規定を置いていないばかりではなく,本件仮眠時間のような連続した仮眠時間を伴う泊り勤務に対しては,別途,泊り勤務手当を支給する旨規定している(場合),で賃金が月給制である(場合),不活動仮眠時間における労働密度が必ずしも高いものではないことなどをも勘案すれば,・・・労働契約においては,本件仮眠時間に対する対価として泊り勤務手当を支給し,仮眠時間中に実作業に従事した場合にはこれに加えて時間外勤務手当等を支給するが,不活動仮眠時間に対しては泊り勤務手当以外には賃金を支給しないものとされていたと解釈するのが相当である。
④したがって,③の場合は,仮眠時間につき労働契約の定めに基づいて所定の時間外勤務手当及び深夜就業手当を請求することができない・・・労働者は,本件仮眠時間中の不活動仮眠時間について,労働契約の定めに基づいて既払の泊り勤務手当以上の賃金請求をすることはできない。
⑤しかし,労基法13条は,労基法で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約はその部分について無効とし,無効となった部分は労基法で定める基準によることとし,労基法37条は,法定時間外労働及び深夜労働に対して使用者は同条所定の割増賃金を支払うべきことを定めている。したがって,労働契約において本件仮眠時間中の不活動仮眠時間について時間外勤務手当,深夜就業手当を支払うことを定めていないとしても,本件仮眠時間が労基法上の労働時間と評価される以上,被上告人は本件仮眠時間について労基法13条,37条に基づいて時間外割増賃金,深夜割増賃金を支払うべき義務がある。
と判示していますので,長時間の仮眠時間を伴うビル管理会社においては,泊まり勤務手当を定めておれば,通常の賃金(平均賃金)の支払義務はないことになりますが,その時間を含めて時間外割増賃金及び深夜割増賃金を支払う義務はあるということになります。

 なお,最低賃金との関係については明日のコラムで解説します。

この記事を書いたプロ

弁護士法人菊池綜合法律事務所 [ホームページ]

弁護士 菊池捷男

岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL:086-231-3535

  • 問い合わせ

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

2

こちらの関連するコラムもお読みください。

<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
 
このプロの紹介記事
菊池綜合法律事務所|菊池捷男弁護士は数多くの民事裁判を手がけてきたエキスパート

法律事務所は決して敷居の高い場所ではありません。(1/3)

 事務所設立以来40年、「うそをつかない、ごまかさない」を信念に、離婚や相続など数多くの民事裁判を手がけてきた菊池捷男さん。現在事務所には菊池さんを筆頭に6人の弁護士が在籍し、民事から企業法務まであらゆる法律問題をサポートしています。 ...

菊池捷男プロに相談してみよう!

山陽新聞社 マイベストプロ

あらゆる法律問題に対処可能

事務所名 : 弁護士法人菊池綜合法律事務所
住所 : 岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL : 086-231-3535

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

086-231-3535

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

菊池捷男(きくちとしお)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる
プロのおすすめコラム
サービス付き高齢者向け住宅の賃借人のあっせんと宅建業法

Q 当法人は、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住=高齢者向けの賃貸住宅又は老人福祉法29条1項に規定する有料...

[ 不動産 ]

会社法における、「選任」と「選定」、また、「解任」と「解職」の意味の違い

1 選任と選定⑴ 会社法の規定 会社法の第三節は、「役員及び会計監査人の選任及び解任」との表題が付けられ...

[ 法令用語 ]

職場での旧姓使用は、権利として認められるか?

東京地裁平成28年10月11日判決を紹介します。 この判決は、学校の教師が、職場で、当該教師に関わる、...

[ 民法雑学 ]

天皇陛下のお言葉の中に見られる「とともに」と「と共に」の使い分け

 本年8月15日は、終戦72年目の戦没者追悼式が執り行われた日です。 この日、天皇陛下の「お言葉」が、天皇...

[ 公用文用語 ]

最高裁平成29・2・ 21決定と、「取締役会のほかに株主総会でも代表取締役を選定できる」旨の定款

1 機関設計の多様性 平成17年に会社法が制定された時、株式会社の機関設計には、多様なパターンが許されるこ...

[ 会社関係法 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ