コラム

 公開日: 2015-02-20 

遺産分割⑭ 特別受益の持戻し免除の黙示の意思表示が認められる場合とは?

東京高等裁判所平成9年6月26日決定の事案を紹介します。
1,特別受益の内容
長男(抗告人) 
長男に対しては,結婚するに際して,××丁目の土地に家を建てて居住させ,昭和44年に××丁目の土地で始めていた園芸店の経営については,少なくとも昭和48年には,同土地に抗告人名義の店舗建設を許し,抗告人がその経営主体となることを許した。これは,被相続人から,被相続人所有の土地に使用借権を与えてもらったことになる。
その価額については,長男は,これを基礎として,「長期間にわたって園芸店の営業を継続してきており,仮に被相続人の求めにより抗告人が土地の明渡をする場合には,被相続人は,親子の間であるとしても,抗告人に対し,明渡により抗告人の受ける営業上の損害の一部を補償するべき立場にあったと考えられる。そして,使用借権の内容及びその評価は,上記のように抗告人がその努力で営業を継続発展させてきた事実を考慮したものとなる。したがって,抗告人の使用借権は,抗告人がみずからその努力で蓄積した財産という性質を兼ね備えているものというべきである。以上のような使用借権成立の経緯や内容を考慮すると,抗告人の使用借権の評価額は,××丁目の土地の価格の3割とするのが相当である。」というものであった。

次男に対しては,・・・の土地上にある同じく遺産の一部である貸家を無償で利用させているが,この固定資産税等の支払いはさせていない。同人が・・・飲食店を開業した際の借入金について,被相続人は,・・・土地を処分した金の一部である400万円をこの返済に充てている。
 三男に対しても,被相続人は,・・・の土地にある遺産の一部である借家を無償利用させ,固定資産税等の負担をさせていない。また,同人は,陶芸で自活できるようになったと思われる・・・ころまでは,被相続人に生計を依存していた。

 以上,被相続人は,各相続人に対してそれぞれの能力や生活状態に応じて居住する家を与え,自活する手段を援助してきたものと認められるから,これらの援助(贈与)は,各相続人の特別受益であると認定するのが相当である。

2,持戻免除の黙示の意思表示があったか否か?
被相続人は,・・・被相続人の介護が十分できない環境下にあったものであるが,「被相続人が跡継ぎとして期待している長に老後の面倒をみてもらいたいと考えていたところから,・・・長男一家が建物で被相続人と同居を始めた事実を認めることができる。そして,抗告人の特別受益が土地に対する使用借権であることから,その価格が他の相続人に比して多額となるが,それは,被相続人が,長男である抗告人を後継者として期待し,老後の面倒をみてもらうことを期待していたことによるものと推察でき,現に・・・同居を開始したものである。そうすると,被相続人の資力と各相続人の能力及び生活状況に応じて行った前記の贈与は,親としての責任と愛情に基づいたものであり,いずれの贈与(相続人らの特別受益)についても持ち戻しを予定していたものではないと考えられる。」・・・つまるところ,持戻し免除の黙示の意思表示があったと認定したのです。

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