コラム

 公開日: 2015-01-23  最終更新日: 2015-02-02

遺言執行者② 遺言執行のため必要な相続財産の目録を調整すること

1,遺言書が包括遺贈の場合
遺贈は、遺言執行者が執行しなければなりません。
したがって、「私甲は、全財産を乙に遺贈する。」というような、財産全部の包括遺贈の場合であると、「私は、財産の3分の1を甲に遺贈する。」というような、財産の一部の包括遺贈であるとを問わず、遺言者の全財産が、遺言執行の対象になる場合(財産の一部の包括遺贈も全財産に対する一定割合の包括遺贈ですので,全財産が対象になります。)は、遺言執行者には、第1011条1項により、相続財産目録を作成し、遅滞なく、全相続人に相続財産目録を交付する義務があります。この義務は「相続財産目録の調整義務」ともいわれます。

参照:
民法1011条 遺言執行者は、遅滞なく、相続財産の目録を作成して、相続人に交付しなければならない。

2,遺言書が特定遺贈の場合
遺言書が「私甲は、自動車(登録番号 岡山 ・・・-・・・・)を弟の乙に遺贈する。」というような、特定遺贈の場合は、遺言執行者は、民法1014条により、その自動車についてのみ、相続財産目録を作成し、これを全相続人に交付する義務があります。
 
参照:
民法1014条 前3条の規定は、遺言が相続財産のうち特定の財産に関する場合には、その財産についてのみ適用する。

3,何のための相続財産目録調整義務か
 遺言執行者の相続財産目録調整義務は,遺言執行者制度を実効あらしめるための義務です。すなわち,この義務は,遺言執行者が遺言執行するため(民法1012条)の義務なのです。
相続財産目録を相続人に交付するのは,相続人に遺言執行者の遺言執行を妨害させないため(民法1013条)に設けられた規定なのです。
ですから,遺言執行者の相続財産目録調整義務は,遺言執行者が遺言執行するために管理する財産に限定されるのです。それが,民法1014条の規定の趣旨なのです(新注釈民法(28)補訂版328頁以下及び358頁以下)。

 参照:
民法1012条 遺言執行者は、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。
民法1013条 遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない。

 なお,遺言執行者の相続財産目録調整(作成及び相続人への交付)義務については,弁護士の中にも,相当の誤解がありますので,も少し触れておきますと,遺言者が,遺言書の中に,「私甲は、自動車(登録番号 岡山 ・・・-・・・・)を弟の乙に遺贈する。」と書いた場合,はたして甲は,遺言執行者が甲の財産全部を調査した上で,全相続財産目録を作成して,これを相続人に交付することを望むでしょうか?遺言者によっては,自動車を遺贈するだけが役目の遺言執行者が,遺言者の全財産を調査し,財産目録ヲ作成する権利や義務があると誤解すると,遺言執行者を指定すること自体躊躇するかもしれません。また,遺言執行者になった者も,そのような手間をかけなければならないと誤解すると,遺言執行者になること自体敬遠するかもしれません。

 正解は,遺言執行者は,遺言執行の対象になる財産についてのみ,相続財産目録の調整義務を負うのです。

この記事を書いたプロ

弁護士法人菊池綜合法律事務所 [ホームページ]

弁護士 菊池捷男

岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL:086-231-3535

  • 問い合わせ

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

0

こちらの関連するコラムもお読みください。

<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
 
このプロの紹介記事
菊池綜合法律事務所|菊池捷男弁護士は数多くの民事裁判を手がけてきたエキスパート

法律事務所は決して敷居の高い場所ではありません。(1/3)

 事務所設立以来40年、「うそをつかない、ごまかさない」を信念に、離婚や相続など数多くの民事裁判を手がけてきた菊池捷男さん。現在事務所には菊池さんを筆頭に6人の弁護士が在籍し、民事から企業法務まであらゆる法律問題をサポートしています。 ...

菊池捷男プロに相談してみよう!

山陽新聞社 マイベストプロ

あらゆる法律問題に対処可能

事務所名 : 弁護士法人菊池綜合法律事務所
住所 : 岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL : 086-231-3535

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

086-231-3535

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

菊池捷男(きくちとしお)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる
プロのおすすめコラム
独占禁止法違反 返品が、優越的地位の濫用に当たる場合と、当たらない場合、それぞれの要件

公正取引委員会平成27年3月26日審決(平成24年(判)第6号及び第7号)は、優越的地位の濫用に対して課徴...

[ 会社関係法 ]

景品表示法違反② 課徴金制度の導入と初適用事例

優良誤認表示などの不当表示に、課徴金制度が導入されたのは、改正景品表示法の施行日(平成28年4月1日)から...

[ 会社関係法 ]

民法(債権法)改正法が成立

 本日、民法(債権法)に関する改正民法が成立しました。制定以来、約120年ぶりの大改正です。改正は、約200項...

[ 債権法改正と契約実務 ]

景品表示法違反① 合理的根拠資料を持たずして、効果・性能表示をなすなかれ

 不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)は、「不当表示」を禁じています。その一類型である「優良誤認表...

[ 会社関係法 ]

従業員との間の競業避止契約は、代償措置がとられていないと、無効

東京地方裁判所平成28年12月19日判決は、会社が従業員との間で競業避止契約を結び、従業員から退職の申し出...

[ 会社関係法 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ