コラム

 公開日: 2015-01-12 

民法雑学 心が傷つけられたとき

1,謝罪請求権
 他人のした事,言った事により,迷惑を受け,心が傷つけられるという場合があります。この場合,被害を受けた人から相手方に対し謝罪を求めることがあります。
 これは,やむにやまれぬ感情の発露として理解できないわけではありません。しかしながら,法的に,加害者に対し,謝罪を求める権利があるかといいますと,そのような権利はありません。
 名誉毀損事件の場合は,謝罪広告を新聞紙上に掲載する請求ができる場合はありますが,この謝罪広告は,社会一般に向けられるもので,被害者その人に向けられるものではないのです。 要は,被害者その人に向かって謝罪することを求める権利というものは,ないのです。

2,慰謝料請求権
 相手方に謝罪請求はできなくとも,①相手方の言動が不法行為を構成する場合,すなわち,相手方がそのような言動をすれば,被害者に迷惑を与え,心を傷つけ,精神的苦痛を与えることが予見できたのに,故意に,または軽率にも(過失により)そうしてしまったという場合は,被害者は,相手方に対し,慰謝料の請求が可能です。
 慰謝料の金額は,内容により様々です。
 ただ,言えることは,謝罪してもらうだけでよい。謝罪して貰えば納得できる。という程度の精神的苦痛は,弁護士を代理人にしてまで起こす訴訟ではないということです。つまり費用対効果がないということです。

3,傷ついた心を,傷つけた相手方に,癒やしてもらおうと思うべからず
 ジャンジャック・ルソーは,幼児教育の名著「エミール」の中で,幼児に,人に何かを要求するとこれに応えてもらえるという経験をさせてはならない,ことを強調しております。
 幼児が親に欲しい物をねだる。親がそれを与える。そのような習慣は,幼児が大人になったとき,他人に何かを求める。しかし,他人は,親とは違って,何も与えてはくれない。そのとき,大人になった幼児は,怒り,いらだち,恨みの感情に支配され,社会の中に溶け込めない存在になるという理由です。
 他人から不法行為を受けて,精神的苦痛を受けた場合は,断固,慰謝料請求をするべきであって,それをしないで,相手方に対して謝罪を求めるのは,幼児の親に対する甘えが,他人への甘えになったといえるかもしれません。
 傷ついた心を,傷つけた相手方に癒やしてもらうことを期待すべきではありません。期待は裏切られるからです。

4,経験が人を造る
 しかし,心や気持ちが,人から傷つけられるという経験は,必要です。そのような経験をし,経験を重ねていくことで,それを乗り越えていく精神力が養われるからです。人は,そうして成長し,成熟していくのだと思います。

この記事を書いたプロ

弁護士法人菊池綜合法律事務所 [ホームページ]

弁護士 菊池捷男

岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL:086-231-3535

  • 問い合わせ

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

5

こちらの関連するコラムもお読みください。

<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
 
このプロの紹介記事
菊池綜合法律事務所|菊池捷男弁護士は数多くの民事裁判を手がけてきたエキスパート

法律事務所は決して敷居の高い場所ではありません。(1/3)

 事務所設立以来40年、「うそをつかない、ごまかさない」を信念に、離婚や相続など数多くの民事裁判を手がけてきた菊池捷男さん。現在事務所には菊池さんを筆頭に6人の弁護士が在籍し、民事から企業法務まであらゆる法律問題をサポートしています。 ...

菊池捷男プロに相談してみよう!

山陽新聞社 マイベストプロ

あらゆる法律問題に対処可能

事務所名 : 弁護士法人菊池綜合法律事務所
住所 : 岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL : 086-231-3535

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

086-231-3535

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

菊池捷男(きくちとしお)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる
プロのおすすめコラム
遺言執行者制度は機能しているか?① 日弁連・懲戒委員会の遺言執行者観は相続人代理人説

1 日弁連・懲戒委員会の遺言執行者観は相続人代理人説 日弁連・懲戒委員会は,平成13年,「全遺産を相続...

[ 相続判例法理 ]

遺言執行者とは何者か?④ 会社の清算を遺言執行者に託した遺言書の例

次の遺言書は,遺言書実務で書かれた遺言書の一つです。遺言書 遺言書 私,凸山太郎は,次のとおり...

[ 相続判例法理 ]

遺言執行者とは何者か?③ 銀行の貸金庫の開披を,遺言執行者に託す遺言事項

被相続人が,銀行との間で,貸金庫賃貸借契約を締結している場合,共同相続人全員又は他の相続人の同意を得た一部...

[ 相続判例法理 ]

ホームページ上での新著公開

相続法理に関する新著を、ホームページ上で、上梓・公開いたします。ダウンロードして、ご覧くだされば幸いです...

[ 相続判例法理 ]

遺言執行者とは何者か?② 単純な処分型遺言

1 処分型遺言 処分型遺言とは,遺言者が,遺言執行者に対し,遺産の処分権限を付与する遺言のことをいいます...

[ 相続判例法理 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ