コラム

 公開日: 2014-12-16  最終更新日: 2015-01-31

競業避止義務に関する裁判例① 従業員引抜きと顧客名簿利用事件

東京地判平成2年4月17日は,A進学塾の講師であったBが、就業規則で競業避止義務が定められていたにもかかわらず、年度の途中に代替要員を確保する時間的余裕を与えないまま進学塾の講師の大半を勧誘して退職し、職務上入手していた生徒名簿を利用して生徒を勧誘して、自らが開設した進学塾に入塾させた行為は,「従業員引抜き」「情報利用」となり,競業避止義務に違反すると判示し,Bに対し,(ア)Bの競業避止義務違反によって進学塾をやめた生徒の数 × (イ)夏期講習及び3か月間の授業料に相当する金額 × (ウ)30%(利益率)という計算式による金額の賠償金を支払うことを命じました。
A進学塾が請求した金額に比べずいぶん低い金額ですが,判決は,①進学塾の経営については競争が激しく、長期間にわたって生徒数が安定することを期待し得ない(業界において確固不動の地位を占めているような塾は別として)のでその逸失利益を算定する際には慎重にこれを行うべきであること,➁A進学塾も自ら損害回復の努力をすべきであり,本件では,代替講師を確保し、正常な業務を回復してしかるべきであるという理由で,期間を限定しての損害金の認定をしたのです。

広島高裁平成16年4月16日判決は,塾の講師Aが,①B学習塾在職中に、新しい塾を開設する準備を行い、➁授業の合間などに、塾生に対し、「Aらが開設する塾の月謝をBのそれよりも安くする。」などと利益誘導的な言葉を用い、③Bを退職して新しい塾を開くことや新しい塾の場所を伝え,④塾生に対し個別にB塾を退塾する意思を確認し,新しい塾に入塾するよう勧誘したことは,学習塾における授業の際に、塾講師という立場を利用して行われたことになり,在職中の競業避止義務に違反し、Aの営業上の利益を侵害したものとして、債務不履行責任ないし不法行為責任を負うというべきであると判示しました。そして,損害として,Aが作成した退塾者名簿に記載された43名の塾生は、全員、Bを退塾したことが認定できるとして,同名簿記載の43名については、Aの在職中の勧誘行為により原告を退塾したというべきであるとして,Aによる勧誘行為がなければ、43名は当該年度中(平成21年7月から平成22年2月まで)は、Bへの通塾を継続したと認めるのが相当であるとして,この間の,月謝及び講習会受講料合計613万円から経費を引いた金344万円の損害賠償請求権を認めました。

ご相談は弁護士法人菊池綜合法律事務所へ!

この記事を書いたプロ

弁護士法人菊池綜合法律事務所 [ホームページ]

弁護士 菊池捷男

岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL:086-231-3535

  • 問い合わせ

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

1

こちらの関連するコラムもお読みください。

<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
 
このプロの紹介記事
菊池綜合法律事務所|菊池捷男弁護士は数多くの民事裁判を手がけてきたエキスパート

法律事務所は決して敷居の高い場所ではありません。(1/3)

 事務所設立以来40年、「うそをつかない、ごまかさない」を信念に、離婚や相続など数多くの民事裁判を手がけてきた菊池捷男さん。現在事務所には菊池さんを筆頭に6人の弁護士が在籍し、民事から企業法務まであらゆる法律問題をサポートしています。 ...

菊池捷男プロに相談してみよう!

山陽新聞社 マイベストプロ

あらゆる法律問題に対処可能

事務所名 : 弁護士法人菊池綜合法律事務所
住所 : 岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL : 086-231-3535

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

086-231-3535

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

菊池捷男(きくちとしお)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる
プロのおすすめコラム
定期建物賃貸借契約締結上の注意メモ

会社と会社との間の契約でアドバイスした内容例1 契約締結前にすること → 当該契約が定期建物賃貸借契約であ...

[ 契約書 ]

テレビ報道等が名誉毀損になる場合③ 事実摘示か法的評価か?

最高裁判所第二小法廷平成24年3月23日判決は、次のような事案で「法的評価」か「事実の摘示」かで、争われた事件で...

[ 民法雑学 ]

本日の新聞報道より

1 会社法改正試案まとまる本日の新聞には、社外取締役の義務化、株主提案権の回数の制限などが議論され...

[ 会社関係法 ]

テレビ報道等が名誉毀損になる場合② 名誉毀損にならない要件

1 名誉毀損の成立要件これは、「公然事実を摘示し、人の名誉を毀損すること」(刑法230条)です。「公然」と...

[ 民法雑学 ]

テレビ報道等が名誉毀損になる場合① 基本判例

最高裁判所平成15年10月16日判決は、次のような判決をし、テレビ局の責任を認めました。この判決は、その後、...

[ 民法雑学 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ