コラム

 公開日: 2014-12-01 

容器は法が提供し,内容を盛るは判例なり (法律と判例の役割)

 損害という法概念(法律用語)がある。その内容は法の関知するところではない。損害の内容をどのように盛るかは,判例の仕事なのだ。
 損害賠償請求訴訟で,弁護士費用を損害と見てもらえるかが議論されたことがある。
 以前を言やあ,裁判で,弁護士費用を損害と,認めたものはなかったが,やっとこさ,最高裁判所昭和44.2.27判決は、訴訟は専門化され技術化され、一般の人が弁護士に委任しないで訴訟活動を展開することはほとんど不可能に近い。したがって、自己の権利を擁護するためにやむなく訴を提起する場合で、訴訟追行を弁護士に委任したときは、一定範囲の弁護士費用は損害になると認めた。
 ところがである。
 判例(最高裁判決)は、契約違反をされて損害を受けた者が、契約違反者に対し、損害賠償請求をする場合の弁護士費用は、損害にならね~と、実に長い間、弁護士費用を損害と認めなかった。
 しかし、これはおかしい。不法行為による損害賠償請求訴訟では、弁護士費用は損害に含まれるのに、同じ損害賠償請求訴訟でありながら、契約違反(債務不履行)を理由とする損害賠償請求訴訟の場合は、弁護士費用は損害に含まれないとは、なんともかんとも理解できね~という意見が多発した。
 そこで、ついに、最高裁判所は、平成24年2月24日に至って(これまで、実に、実に、長い期間だ!)、債務不履行を理由とした損害賠償請求訴訟でも、弁護士費用は損害になると判示した。この事件で、最高裁判所は、安全配慮義務違反(労働契約違反)を原因とする損害賠償請求訴訟の難しさは,不法行為を原因とする損害賠償請求訴訟の場合と異なるものではないという理由で、不法行為による損害賠償請求訴訟と区別すべきではないと判示したのだ。

 法律は、「損害」という容れ物を用意しても,その内容は,判例が盛り込むのだ。判例が盛り込む内容は、事件の種類や時機などによって、違いがあることは、上述のとおりだ。
 別の言い方をすれば、法律は、抽象的な言葉で規定し、具体的な内容は、判例が、その時代、事件の種類などに応じて、柔軟に、これを定める、ということなのだ。

 ここに教訓がある。
我が輩が,常に,若いイソ弁の諸君,諸嬢に言うことだ。
 弁護士の頭の中は空っぽと思うべし。今、知ってるつもりの知識は,常に過去の知識なのだ。今この瞬間の知識は頭に入っていないのだ。だから空っぽなのだ。さあ,今日の問題については,今日の判例を調べよ,その裏付けをもって,法を語れ!と。

この記事を書いたプロ

弁護士法人菊池綜合法律事務所 [ホームページ]

弁護士 菊池捷男

岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL:086-231-3535

  • 問い合わせ

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

1

こちらの関連するコラムもお読みください。

<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
 
このプロの紹介記事
菊池綜合法律事務所|菊池捷男弁護士は数多くの民事裁判を手がけてきたエキスパート

法律事務所は決して敷居の高い場所ではありません。(1/3)

 事務所設立以来40年、「うそをつかない、ごまかさない」を信念に、離婚や相続など数多くの民事裁判を手がけてきた菊池捷男さん。現在事務所には菊池さんを筆頭に6人の弁護士が在籍し、民事から企業法務まであらゆる法律問題をサポートしています。 ...

菊池捷男プロに相談してみよう!

山陽新聞社 マイベストプロ

あらゆる法律問題に対処可能

事務所名 : 弁護士法人菊池綜合法律事務所
住所 : 岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL : 086-231-3535

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

086-231-3535

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

菊池捷男(きくちとしお)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる
プロのおすすめコラム
遺産から生ずる果実は,全相続人のもの

最高裁判所第一小法廷平成17年9月8日判決遺産は,相続人が数人あるときは,相続開始から遺産分割までの間,...

[ 相続判例法理 ]

遺産分割判例法理 「遺産分割による代償譲渡」は有効

法務局で登記手続をする場合,先例がないときは,容易に認めてもらえません。下記の事案も,そうで,家庭裁判所で...

[ 相続判例法理 ]

遺産分割判例法理⑦ 財産全部についての遺産の分割の方法を定めた遺言は債務に及ぶ 

 民法899条は,「各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する。」と規定していますが,ここ...

[ 相続判例法理 ]

遺産分割判例法理⑥ 遺産分割の方法を定めた遺言の効力は代襲相続人に及ばない

遺言書の効果は,遺言書に書かれた文言に限られます。長男に全財産を「相続させる」と遺言書を書いた場合で,そ...

[ 相続判例法理 ]

遺産分割判例法理⑤ 相続放棄は詐害行為にならない

 しかしながら,相続放棄は,詐害行為になりません。下記の判例があるからです。 ですから,遺産分割協議で...

[ 相続判例法理 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ