コラム

 公開日: 2014-11-26 

無償の利用権は有償の利用権より弱し (使用借権と賃借権)

 使用貸借契約による使用借権という権利がある。無償で他人の物を使用する権利だ。親が息子に,岳父が娘婿に,わしの土地に家を建てて住みゃええがな,などと言って,土地を無償で貸す,などは,人情のしからしむるところ,日常珍しいことではない。これによる使用権が使用借権なのだ。
 一方で,賃借権という権利がある。賃料を支払って物を使用する権利である。これは身内の間の情義に基づく使用貸借と違って,他人間で結ばれることが多く,これまた世間には実に多い現象だ。
 使用借権は,物を無償で使用させてもらっているだけ,権利は弱い。一代限りが原則だ。借主が死亡したときは、使用貸借も終了することになっているのだ(民法599条)。
 とはいうものの,土地の使用借権を得て,家を建てたが,まもなくして借主が亡くなったというような場合,残された遺族の涙がまだ乾かないところへ,一代限りの規定(民法599条)を盾に,家を壊して土地を返せ~と言われた日があっては,そりゃあ大変だ。
 で,そんなことのないように,法(民法597条2項)は,借りた物を返す時期を定めていた場合は,その時が来た時に,また,借りた物を返す時期を定めていなかった場合は,「目的に従い使用及び収益を終わった時」又は「その使用及び収益を終わる前であっても、使用及び収益をするのに足りる期間を経過した時」に返せばよいと定めているのだ。だから,借りた人が亡くなったからといって,すぐに返さなければならないということにはならないのだ。
 では,いったい,その返す時期の目安は?となると,ここに最高裁判所平成11.2.25判決がある。同判決は,使用貸借契約後38年8か月が経過していたこと,貸主と借主の人的つながりが著しく変化している(親の代が子の代に変われば人情も薄くなるということだ)ことなどを理由に,もう返しなさいと判決をした。
 最高裁判所昭和59.11.22判決は,建物が居住を目的とするものであっても,建物の使用を開始してから約40年もの期間が経過したのであれば,使用収益をするのに足りる期間は経過したと解するのが相当であるぞよ,として,土地の返還請求を認めた。
 だから,土地の使用借権の目安は,家を建てた後40年と考えて間違いはないであろう。

 賃借権は,いうまでもなく,強い権利だ。期間が満了しても契約は更新するのが原則だ。
お金を支払っているだけ,威張っているのだろう。

 ところで,お金を支払っているから,賃借権があるとは限らないことに注意が要る。固定資産税程度の支払では,賃借権とは認められないということだ。
 ただで使わせてやるが,固定資産税くらいを支払ってくれよな,と言って貸す場合もある。これは,やはり,あくまで情義,人情に基づく貸借なのだから,使用貸借になるということだ。

 こう考えてみると,これまでは貸主が固定資産税を負担して,借主に土地を無償で貸してあげてきた。しかし,貸主も借主も代が代わった。土地はまだ当分返してもらえない。というようなケースでは,せめて固定資産税程度は借主に負担してもらいたいと考えるのが人情だろう。このような請求ははたしてできるのか?これは別のテーマだ。

この記事を書いたプロ

弁護士法人菊池綜合法律事務所 [ホームページ]

弁護士 菊池捷男

岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL:086-231-3535

  • 問い合わせ

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

4

こちらの関連するコラムもお読みください。

<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
 
このプロの紹介記事
菊池綜合法律事務所|菊池捷男弁護士は数多くの民事裁判を手がけてきたエキスパート

法律事務所は決して敷居の高い場所ではありません。(1/3)

 事務所設立以来40年、「うそをつかない、ごまかさない」を信念に、離婚や相続など数多くの民事裁判を手がけてきた菊池捷男さん。現在事務所には菊池さんを筆頭に6人の弁護士が在籍し、民事から企業法務まであらゆる法律問題をサポートしています。 ...

菊池捷男プロに相談してみよう!

山陽新聞社 マイベストプロ

あらゆる法律問題に対処可能

事務所名 : 弁護士法人菊池綜合法律事務所
住所 : 岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL : 086-231-3535

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

086-231-3535

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

菊池捷男(きくちとしお)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる
プロのおすすめコラム
離婚原因の一つである「夫婦関係の破綻」が,別居期間が短くとも認められる場合

これは,私の事務所が勝ち得た離婚判決の例です。一審判決は,別居期間が2年程度(一審判決までの期間)では,...

[ 離婚 ]

課税価格と相続税評価額とは違う

1 遺産の評価問題遺産分割の調停の席で,遺産(相続財産)の評価をどうするかという問題が提起されることがあ...

[ 相続相談 ]

遺留分減殺請求事件と相続税の処理

1 遺留分減殺請求をして,相続財産の一部の返還又は価額弁償金の支払を受けた遺留分権利者甲の場合これによっ...

[ 相続相談 ]

情報公開条例の誤解⑤ コピー代は全額請求するべし

Q 当市の公開条例には,公文書の開示の方法として写し(コピー)を交付する方法を採っており,コピー代として1...

[ 地方行政 ]

情報公開条例の誤解④ 権利がないことと,権利の乱用は違うこと

Q 住民からの公文書の開示請求に応じた後の,公文書の内容に対する質問に対しては,回答する義務のないことは分...

[ 地方行政 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ