コラム

 公開日: 2014-11-24 

一の矢がダメなら二の矢を射よ。二の矢がダメなら三の矢を射よ(マンションのタイル剥離)

 新築したばかりの高級マンションを買い、夢と希望を乗せて入居する。何年かして外壁タイルが剥離したなどということがあったら、たまんね~。しかし、実際にあるのだ。
 タイル張の剥離故障は、剥離の発生時期により、初期故障と疲労故障に大別される。初期故障は、施工当初から何らかの原因により接着界面に十分な接着力が発現せず、施工後の劣化外力(日射、雨水、地震等)の作用に伴い剥離するもので、これは施工直後から数年の間に発生し、同時期に大量に剥離する場合が多いとされる。その原因としては、材料選択の誤り、工法選択の誤り、施工上(下地清掃、下地処理、モルタル混練、モルタル塗付方法等)の誤り等があるとされている。一方、疲労故障は、劣化外力の作用による温湿度変化等に伴い繰り返し生ずる接着界面の剪断応力により、接着界面が疲労し、経年により接着力が徐々に低下して剥離に至るもので、施工時の接着力に応じ、施工後数年から数十年の経過により、段階的、部分的に剥離を生ずるものであるとされている。
 問題は初期故障だ。その故障が発見された時は、すでに瑕疵担保責任期間が経過しているという場合がある。その場合でも、ネバーギプアップだ。その時が建築時より20年が経過していない場合は、責任追及のチャンスがあるのだ。それは建築会社の過失責任を立証して不法行為(この時効期間は知った時から3年、不法行為の時から20年間だ)責任を問うのだ(最高裁平成19.7.6判決,東京地裁平成20.1.25判決)。

 マンションの外壁にタイルを張る工事は、施工面であるコンクリート躯体を清掃した上で、これに吸水調整剤を塗布し、その後、下地モルタルを塗り付け、タイルを張るという手順で行われるものだが、下地モルタルを塗り付ける作業は、何回かに分けて、乾燥の時間を置いて行う必要があり,一回で厚く塗り付けると、コンクリート躯体との界面で剥がれやすくなる(要は初期故障が起こりやすくなる)。タイル張りに,安定した耐久性をもたせるためには、コンクリート躯体に薄くモルタルを塗り付け(これを「下擦り」という)、それが乾燥した後、モルタルを塗り付けことを繰り返す必要があるが,各材質には線膨張係数、乾燥収縮率に差異があるため、温湿度の変化によって、材質ごとに異なる動きを生じて接着界面に剪断応力が発生し、剪断応力が、接着力が最も弱い接着界面の接着力を上回ると、当該接着界面が剥離することになる,とされている。そのために,タイル張り工事は,各資材ごとの特質を考慮した施工の必要性が大きく,そのためには,各資材メーカーが定めた施工要領書に従い,また,「建築工事標準仕様書・同解説 JASS19 陶磁器質タイル張り工事」や「建築工事標準仕様書・同解説 JASS15 左官工事」に従い,施工をする必要があるが、これに違反した施工をし,完成後数年後くらいにタイルの剥離が生ずると過失が認定される場合がある(東京地裁平成20.12.24判決より。なお,同判決は,施工業者に重過失さえ認定している。)。

 一の矢(瑕疵担保責任)を射ただけで射倒せなかったら、二の矢、三の矢(不法行為の立証)を射よということだ。

この記事を書いたプロ

弁護士法人菊池綜合法律事務所 [ホームページ]

弁護士 菊池捷男

岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL:086-231-3535

  • 問い合わせ

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

2

こちらの関連するコラムもお読みください。

<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
 
このプロの紹介記事
菊池綜合法律事務所|菊池捷男弁護士は数多くの民事裁判を手がけてきたエキスパート

法律事務所は決して敷居の高い場所ではありません。(1/3)

 事務所設立以来40年、「うそをつかない、ごまかさない」を信念に、離婚や相続など数多くの民事裁判を手がけてきた菊池捷男さん。現在事務所には菊池さんを筆頭に6人の弁護士が在籍し、民事から企業法務まであらゆる法律問題をサポートしています。 ...

菊池捷男プロに相談してみよう!

山陽新聞社 マイベストプロ

あらゆる法律問題に対処可能

事務所名 : 弁護士法人菊池綜合法律事務所
住所 : 岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL : 086-231-3535

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

086-231-3535

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

菊池捷男(きくちとしお)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる
プロのおすすめコラム
情報公開条例の誤解⑤ コピー代は全額請求するべし

Q 当市の公開条例には,公文書の開示の方法として写し(コピー)を交付する方法を採っており,コピー代として1...

[ 地方行政 ]

情報公開条例の誤解④ 権利がないことと,権利の乱用は違うこと

Q 住民からの公文書の開示請求に応じた後の,公文書の内容に対する質問に対しては,回答する義務のないことは分...

[ 地方行政 ]

情報公開条例の誤解③ 助言義務は説明義務に非ず

Q 当市の公開条例には,第3条 何人も,この条例の定めるところにより,実施機関に対し,当該実施機関の保有す...

[ 地方行政 ]

情報公開条例の誤解➁ 知る権利は,法と条例の制限内の権利なり

Q 情報の開示を請求した住民に,公文書のコピーを交付した後,当該住民から,住民には“知る権利”があるのだから...

[ 契約書 ]

情報公開条例の誤解① 説明義務はない

Q 私はA市の情報公開担当課の者ですが,次のような請求に困っています。アドバイスを御願いいたします。1...

[ 地方行政 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ