コラム

 公開日: 2014-11-23 

原則あるところ例外あり (賃金の直接払)

 賃金は、働く者の生活を支える貴重なお宝だ。タコ部屋へ入れられ、賃金のピンハネがまかり通った時代もあったが、今は、労働基準法という立派な法律がある。ピンハネ、相殺、親、女房への支払も厳禁だ。賃金は、正しく、働く人に支払うべし、という法律だ。これを賃金直接払いの原則(労働基準法24条1項本文)という。だから、雇い主は、賃金を、従業員の女房に渡してもダメなのだ。
 しかし、原則あるところ、例外あり。いや、こと法律の世界では、一般論として、このようなことは言えね~。ただ、賃金の場合には、例外がある、と言い直そう。

 例外の1は,労使協定がある場合である(労働基準法24条1項ただし書)。労使協定とは、労働組合と使用者との書面による、組合員の労働条件に関する合意書だ。組合費や社宅家賃の天引きなどは、この労使協定があれば可能だ。
例外の2は,会社が賃金の計算を間違え、賃金を多めに払ったような場合で、その払いすぎの金額を、「労働者の経済生活の安定を脅かすおそれのない」金額にして、長期分割で控除するようなときである(最判昭和44年12月18日)。この判例がいうところは、「賃金の過払いのあった時期と賃金の清算調整の実を失わない程度に合理的に接着した時期においてされ,また,あらかじめ労働者にそのことが告知されるとか,その額が多額にわたらない」ようなときに限られるということだ。
 賃金の払い過ぎ額が大きい場合、比較的長期にわたった分割天引きにする配慮が要るのだ。
例外の3は,本人の同意がある場合だ。すなわち,最判平成2年11月26日は,賃金からの控除が、「本人の自由な意思に基づいてされたものであると認めるに足りる合理的理由が客観的に存在する場合には」許されるというのである。
従業員が何らかの理由で会社に損害を与えたような場合、会社は支払賃金の中から、その損害賠償額を控除したいだろうが、その場合は、従業員の生活への影響を最小限にとどめる配慮を見せて、長期分割による天引き計画を立て、従業員の同意書をもらってすべきなのである。
それ以外は、天引き、相殺はできないのである。

この記事を書いたプロ

弁護士法人菊池綜合法律事務所 [ホームページ]

弁護士 菊池捷男

岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL:086-231-3535

  • 問い合わせ

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

2

こちらの関連するコラムもお読みください。

<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
 
このプロの紹介記事
菊池綜合法律事務所|菊池捷男弁護士は数多くの民事裁判を手がけてきたエキスパート

法律事務所は決して敷居の高い場所ではありません。(1/3)

 事務所設立以来40年、「うそをつかない、ごまかさない」を信念に、離婚や相続など数多くの民事裁判を手がけてきた菊池捷男さん。現在事務所には菊池さんを筆頭に6人の弁護士が在籍し、民事から企業法務まであらゆる法律問題をサポートしています。 ...

菊池捷男プロに相談してみよう!

山陽新聞社 マイベストプロ

あらゆる法律問題に対処可能

事務所名 : 弁護士法人菊池綜合法律事務所
住所 : 岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL : 086-231-3535

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

086-231-3535

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

菊池捷男(きくちとしお)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる
プロのおすすめコラム
情報公開条例の誤解⑤ コピー代は全額請求するべし

Q 当市の公開条例には,公文書の開示の方法として写し(コピー)を交付する方法を採っており,コピー代として1...

[ 地方行政 ]

情報公開条例の誤解④ 権利がないことと,権利の乱用は違うこと

Q 住民からの公文書の開示請求に応じた後の,公文書の内容に対する質問に対しては,回答する義務のないことは分...

[ 地方行政 ]

情報公開条例の誤解③ 助言義務は説明義務に非ず

Q 当市の公開条例には,第3条 何人も,この条例の定めるところにより,実施機関に対し,当該実施機関の保有す...

[ 地方行政 ]

情報公開条例の誤解➁ 知る権利は,法と条例の制限内の権利なり

Q 情報の開示を請求した住民に,公文書のコピーを交付した後,当該住民から,住民には“知る権利”があるのだから...

[ 契約書 ]

情報公開条例の誤解① 説明義務はない

Q 私はA市の情報公開担当課の者ですが,次のような請求に困っています。アドバイスを御願いいたします。1...

[ 地方行政 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ