コラム

 公開日: 2014-11-22  最終更新日: 2014-11-25

人は能力に応じて働き働きに応じて糧を得よ (職能給)

 この諺は,能力給の本質を突いたものであろう。
 会社は、従業員に、仕事を評価して、給与を支払う。これが資本主義の資本主義たるゆえんである。 働かざる者、食うべからず、ではなく,働く者,働きに応じた糧を得る,ということだ。
 ここには,重要ならざる仕事しかできない従業員には、重要な仕事のできる従業員より給与が低いのは当然だという考えが根底にある。
 会社従業員を,人事権の行使として降格にしたところ,降格後の地位では、従前の給与が得られず減給になるということもあるだろう。その降格がやむを得ない理由による場合は、減給もやむを得ないのだ。
 東京地裁平成26年1月14日判決を紹介しよう。
 ある男性社員のことだ。会社の業務全般を統括するジェネラルマネージャー(GM)の地位にあったが、会社内でセクハラ行為をしたため、会社から,その従業員には会社の業務全般を統括する適格性が欠けると判断され、平のマネージャーに降格された。判決では、この降格はやむを得ぬ降格とされたが,これは,セクハラをするような従業員は、多くの従業員を支配下において、辣腕をふるうということは期待されない存在になったということなのだ。その結果,平のマネージャーとしての給与しか支払ってもらえないことになった。判決は,これを当然のこととして,是認した。要は、資格・能力を理由にした降格では、職能給が減額になるのは,当然とされたのだ。

 ところで、降格されたこの従業員の降格後の給与だが、会社は、平のマネージャーに支払う給与基準のうち、最低ランクの職能給しか支給しなかった。降格前の給与と、降格後の給与とでは、22万円の大差が生じたが、判決は、マネージャーに支給される職能給にランクがある場合,会社が,どのランクの金額を支給するかは会社の裁量権に委ねられているので,そのランクのうち最低ランクの職能給しか支給されない場合でも,当然に違法になるものではないと、判示したものだ。

 ここにも教訓がある。会社は,職能給とそれ以外の給与を,明確に意識して使い分ける必要があるということだ。
重要な仕事ができなくなった従業員を,減給にできないことになるような給与規定では,会社の給与規定とはいえず,逆に,仕事はできるのに,できない者と,いつも同じ給与というのでは,従業員に働く喜び,インセンティブを与えることはできない。バランスのとれた給与規定にしたいものである。

この記事を書いたプロ

弁護士法人菊池綜合法律事務所 [ホームページ]

弁護士 菊池捷男

岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL:086-231-3535

  • 問い合わせ

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

3

こちらの関連するコラムもお読みください。

<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
 
このプロの紹介記事
菊池綜合法律事務所|菊池捷男弁護士は数多くの民事裁判を手がけてきたエキスパート

法律事務所は決して敷居の高い場所ではありません。(1/3)

 事務所設立以来40年、「うそをつかない、ごまかさない」を信念に、離婚や相続など数多くの民事裁判を手がけてきた菊池捷男さん。現在事務所には菊池さんを筆頭に6人の弁護士が在籍し、民事から企業法務まであらゆる法律問題をサポートしています。 ...

菊池捷男プロに相談してみよう!

山陽新聞社 マイベストプロ

あらゆる法律問題に対処可能

事務所名 : 弁護士法人菊池綜合法律事務所
住所 : 岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL : 086-231-3535

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

086-231-3535

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

菊池捷男(きくちとしお)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる
プロのおすすめコラム
住民監査請求があった場合の、監査委員の心構え

Q 私は、某自治体の監査委員をしている者ですが、住民監査請求書を,受理すべきか,不受理とすべきか,補正を求...

[ 地方行政 ]

建築請負契約における瑕疵認定の基準を定めた裁判例

仙台地裁平成23年1月13日判決は、 請負契約における「瑕疵」とは,“ 完成された仕事が契約で定めら...

[ 建築 ]

道路上の障害物により自転車事故等が生じた場合の責任割合(裁判例紹介)

道路上を自転車等に搭乗して、走行中、道路上の障害物や、道路から駐車場に入るときの障害物に衝突して転倒し人身...

[ 交通事故 ]

「等」と書くか、「など」と書くか?

「等」は、「常用漢字表」では「トウ」という字音と、「ひとしい」という字訓しかなく、「など」や「ら」という字...

[ 法令用語 ]

遺言の権利と相続権 2 現在の欧米及び我が国の遺言制度

1 欧米 遺言の権利を認めていた古代ローマ時代、個々の法律は他の法律との整合性を考えず制定されることが多...

[ 民法雑学 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ