コラム

 公開日: 2010-10-28 

相続 32 遺贈の放棄


1 遺贈の放棄の意味と効果
 遺贈は、遺言者が、遺言で、自分の財産を特定の者に、無償で、譲渡することですが、遺贈を受ける相手方(「受遺者」)が、必ずしも、その遺贈を喜んで受けるとは限りません。そこで、民法986条1項は「受遺者は、遺言者の死亡後、いつでも、遺贈の放棄をすることができる。」と定めています。遺贈を放棄すれば、同条2項で「遺贈の放棄は、遺言者の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。」と定めていますので、受遺者には、何の法律問題も生じません。

2 黙示の放棄が認定される場合がある
相続人の1人が、自分に遺贈された財産を、自分の財産だと主張しないで、他の共同相続人らとの遺産分割協議の対象に含めて、遺産分割協議を成立させた場合、他の相続人から見ると、遺贈を放棄してくれたのかと思うでしょう。
東京地方裁判所平成6.11.10判決は、このようなケースで、遺産分割の対象にした財産については、遺贈を放棄したものと認定しております。
つまり、遺贈の放棄には、特段の方式はないので、黙示の遺贈の放棄も認められるということです。

3 包括遺贈については、適用がない つまり黙示の放棄はない
 2のケースは、不動産、株式、預貯金など、資産を特定した遺贈のケースです。これを特定遺贈といいますが、この場合は、受遺者が遺贈によってもらったものを、それと知りながら、他の相続人と分割しようというのですから、遺贈の放棄も認めても問題ありません。
しかしながら、遺贈される財産を特定しないで、財産の全部又は一部を、割合で遺贈される包括遺贈の場合は、民法986条の遺贈の放棄の規定の適用はない、というのが通説です。東京地方裁判所昭和55.12.23判決もそうです。

4 包括遺贈を放棄する場合
では、包括遺贈を放棄するにはどうすか、と言いますと、通説は、民法990条が「包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する。」と定めていることを根拠に、相続人が相続放棄をする場合の民法938条「相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。」によるべきだとしています。3の東京地方裁判所の判決の事案は、遺言者が配偶者に対して全財産を遺贈する旨の自筆証書遺言を作成して死亡した後、受遺者が他の相続人に対して「遺言はあるが、これに拘泥せず、公平に分けると明言した」という事案ですが、東京地裁は、「包括受遺者は相続人と同一の権利義務をもち、その放棄には相続人の放棄に関する規定が適用されるので、自己のために包括遺贈があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所に放棄の申述しなければ単純承認したものとみなされる」ことになり、口頭の遺贈の放棄は無効である旨判示しました。

ご相談は弁護士法人菊池綜合法律事務所へ!

この記事を書いたプロ

弁護士法人菊池綜合法律事務所 [ホームページ]

弁護士 菊池捷男

岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL:086-231-3535

  • 問い合わせ

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

0
<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
 
このプロの紹介記事
菊池綜合法律事務所|菊池捷男弁護士は数多くの民事裁判を手がけてきたエキスパート

法律事務所は決して敷居の高い場所ではありません。(1/3)

 事務所設立以来40年、「うそをつかない、ごまかさない」を信念に、離婚や相続など数多くの民事裁判を手がけてきた菊池捷男さん。現在事務所には菊池さんを筆頭に6人の弁護士が在籍し、民事から企業法務まであらゆる法律問題をサポートしています。 ...

菊池捷男プロに相談してみよう!

山陽新聞社 マイベストプロ

あらゆる法律問題に対処可能

事務所名 : 弁護士法人菊池綜合法律事務所
住所 : 岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL : 086-231-3535

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

086-231-3535

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

菊池捷男(きくちとしお)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる
プロのおすすめコラム
先進各国のコーポレート・ガバナンスの今

1 わが国の場合 わが国では、バブル経済の崩壊後、一気に会社経営者の不祥事が表面化して、「ガバナンスに問...

[ 会社関係法 ]

「所有と経営の分離」と「所有と支配の分離」

1 所有と経営の分離英語では、株主をshareholder(シェアホルダー)といい、社債権者をbondholder(ボンドホル...

[ 会社関係法 ]

コーポレート・ガバナンスとエクイティ・ファイナンスとの関係

コーポレート・ガバナンス(corporate governance)とは、「企業統治」とか「会社の運営機構」などと訳されてい...

[ 会社関係法 ]

内部統制システムとは、何?⑪ ついに自治体の長の義務にもなる

会社の取締役の、内部統制システム整備義務は、自治体の長の義務にもなった。すなわち、平成29年6月2日に,地方自...

[ 会社関係法 ]

ロータリーの卓話から 倉敷もん

本日、聞いた卓話、面白かったので、紹介します。題して「倉敷もん」日本人は、「道」が好き。茶道、柔道、...

[ その他 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ