コラム

 公開日: 2014-11-12  最終更新日: 2014-11-18

財動く時,税生ず

 嫌で嫌でたまらなかったあの女房と,やっと念願の離婚ができた。財産分与に,あの土地をやっても惜しくはないわい。さあ,やるぞ。と言って与えた土地の財産分与。
財産の移動の一つだが,財動く時,税生ず,を知らずにいるととんだことになる。
翌年,税務署から,多額の譲渡所得課税がなされるからだ。
財産分与の場合は,財産を譲渡した側に税金がかかるのだ。財産を与えた側に税が課されるというのでは,与えた側は,納得できね~。これじゃあ,泣きっ面に蜂だ~てなことになる。
 しかし,税法はなかなか難しい。判例によれば,理屈はあるのだ。最高裁昭和50年5月27日判決いわく。財産分与をすれば、財産を譲渡した者には,財産分与債務が消滅するという利益が生ずる。その利益は,時価で財産を売却したときに得られる利益と同じだ。だから,その利益(譲渡所得)に課税するというのだ。まさに理屈だ。しかし,理屈だ。
 要は,財が動いた。さあ,税金をいただくぞ。税を納めてくれるのは,譲渡者か譲受者のいずれかだ。ここでは,譲渡者から頂くのが理屈に適うわい。となった結果,税金は,譲渡者にかかるのだ。かくて,財産を分与した側は,財産は取られたわ,税金はかかってくるわで,泣きっ面に蜂と相成るのである。

 しかしながら,泣きっ面の蜂様も,救済されることがある。それは,そんな税法,ち~とも知らなかった場合で,別れる女房殿に,「お前なあ。別れるにあたってはのう。あの土地を財産分与するがなあ。そうなるとお前に税金がかかるのう。気の毒じゃが,それはお前が払えよ~」ってなことを話しておったときだ。その2つの要件が満たされたときは,これまた,判例(最高裁判所平成元年9月14日判決)で,「そうか,亭主殿には,自分に税金がかかるということを知らなかったのか。知らなかったので,財産分与をしたのか(錯誤があったこと)。そして,その知らなかったために財産分与をするという動機は女房殿に言っておったのじゃな(動機の錯誤の相手方への表示)。そうだったとすれば,そりゃあ,民法95条によって財産分与は無効じゃが。だったら,譲渡所得もありゃせんわい。税金は課さないよ。」ということになるのだ。裁判所も,なかなかに,味なことをするものだ。

 注意すべきことがある。弁護士や税理士など,その道の専門家の場合は,このような錯誤があっても,救済されないということだ。民法95条も,重大な過失がある場合は,錯誤の主張はできないと定めているからだ。だから,弁護士は,税法も勉強しなければ安心して女房殿と離婚もできない。とは言えないか?言えないだろうなあ。

参照
民法95条 意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。

この記事を書いたプロ

弁護士法人菊池綜合法律事務所 [ホームページ]

弁護士 菊池捷男

岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL:086-231-3535

  • 問い合わせ

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

2

こちらの関連するコラムもお読みください。

<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
 
このプロの紹介記事
菊池綜合法律事務所|菊池捷男弁護士は数多くの民事裁判を手がけてきたエキスパート

法律事務所は決して敷居の高い場所ではありません。(1/3)

 事務所設立以来40年、「うそをつかない、ごまかさない」を信念に、離婚や相続など数多くの民事裁判を手がけてきた菊池捷男さん。現在事務所には菊池さんを筆頭に6人の弁護士が在籍し、民事から企業法務まであらゆる法律問題をサポートしています。 ...

菊池捷男プロに相談してみよう!

山陽新聞社 マイベストプロ

あらゆる法律問題に対処可能

事務所名 : 弁護士法人菊池綜合法律事務所
住所 : 岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL : 086-231-3535

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

086-231-3535

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

菊池捷男(きくちとしお)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる
プロのおすすめコラム
共同保証人間の求償権の趣旨・消滅時効中断事由に関する初判例

最高裁判所平成27年11月19日判決の紹介時系列的事実関係⑴ 信用保証協会Aと主債務者会社の代表取締役Bが、銀...

[ 民法雑学 ]

労働 時間外労働等に対する割増賃金を年俸に含める旨の合意の有効性について(後半)

 最高裁判所第二小法廷平成29年7月7日判決は、①医療法人と医師との間の雇用契約において時間外労働等に対す...

[ 労働 ]

労働 時間外労働等に対する割増賃金を年俸に含める旨の合意の有効性について(前半)

 最高裁判所第二小法廷平成29年7月7日判決は、医療法人と医師との間の雇用契約において時間外労働等に対する...

[ 労働 ]

信用保証協会、二度目の最高裁判決

またまた、信用保証協会に不利な最高裁判決が出されました。2016-09-14付けコラムで紹介しました最高裁判所第三小...

[ 会社関係法 ]

立法論としての相続法⑬ 法制審議会で、民法1015条の字句を改めるべしとの意見出る

 現行の民法1015条は、「遺言執行者は、相続人の代理人とみなす。」と規定しています。この字句から、遺言執行...

[ 相続判例法理 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ