コラム

 公開日: 2014-10-13 

民法雑学 秘密録音をすることの問題点(証拠能力と個人情報)

Q 当社は,クレーマー対応の一環として,相手方に秘密で,相手方の会話をICレコーダーにより録音しておきたいと思います。
この場合,録音の内容は,証拠として有効になりますか?
また,個人情報保護法上問題はありませんか?

A 
秘密録音でも,その内容は,証拠としての能力を有しますが,個人情報の保護に関する法律に基づき,あらかじめその利用目的を公表しておくか,秘密録音後速やかにその利用目的を本人に通知又は公表しなければなりません。

1,秘密録音と証拠能力
会話当事者の一方が,相手方の同意を得ず,無断で会話を録音する行為を「秘密録音」いいます。
秘密録音の内容が,証拠になりうるか(証拠能力があるか)については,裁判例は,録音が「著しく反社会的な手段を用いて,人の精神的肉体的自由を拘束する等の人格権侵害を伴う方法によって採集されたものであるときは」証拠能力を否定し,そうでない場合は,証拠能力はある(東京高裁昭和52年7月15日判決)としています。
ですから,相手方の人格権を侵害するような違法な態様によらない秘密録音の場合,その内容は証拠能力を有します。

2,個人情報保護法上の問題
特定の人の会話内容は,必然的に,その人の個人情報になります。
個人情報取扱事業者が,個人情報を取得することは自由にできますが,個人情報保護法18条1項に基づき,「あらかじめその利用目的を公表している場合を除き、速やかに、その利用目的を、本人に通知し、又は公表しなければならない」ことになっています。
 なお,秘密録音による個人情報の取得が,個人情報保護法18条2項に該当すれば,あらかじめ,本人に対し、その利用目的を明示しなければならないことになっていますが,平成20年3月25日付独立行政法人国民生活センター消費者苦情処理専門委員会小委員会の報告によれば,秘密録音は,18条2項には該当しないとの見解を明らかにしていますので,事前の利用目的の明示は必要ないことになります。
しかし,個人情報保護法18条1項の適用を受けますので,秘密録音をする場合は,それに備えて,ホームページなどで,「お客様から電話その他の方法で問い合わせがあったときは,後日のトラブルを避けるため,お客様との会話内容を録音させていただいております。」と公表しておくのがよいでしょう。

参照
個人情報の保護に関する法律
第18条1項 
 個人情報取扱事業者は、個人情報を取得した場合は、あらかじめその利用目的を公表している場合を除き、速やかに、その利用目的を、本人に通知し、又は公表しなければならない。
第18条2項
 個人情報取扱事業者は、前項の規定にかかわらず、本人との間で契約を締結することに伴って契約書その他の書面(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録を含む。以下この項において同じ。)に記載された当該本人の個人情報を取得する場合その他本人から直接書面に記載された当該本人の個人情報を取得する場合は、あらかじめ、本人に対し、その利用目的を明示しなければならない。ただし、人の生命、身体又は財産の保護のために緊急に必要がある場合は、この限りでない。

この記事を書いたプロ

弁護士法人菊池綜合法律事務所 [ホームページ]

弁護士 菊池捷男

岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL:086-231-3535

  • 問い合わせ

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

6

こちらの関連するコラムもお読みください。

<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
 
このプロの紹介記事
菊池綜合法律事務所|菊池捷男弁護士は数多くの民事裁判を手がけてきたエキスパート

法律事務所は決して敷居の高い場所ではありません。(1/3)

 事務所設立以来40年、「うそをつかない、ごまかさない」を信念に、離婚や相続など数多くの民事裁判を手がけてきた菊池捷男さん。現在事務所には菊池さんを筆頭に6人の弁護士が在籍し、民事から企業法務まであらゆる法律問題をサポートしています。 ...

菊池捷男プロに相談してみよう!

山陽新聞社 マイベストプロ

あらゆる法律問題に対処可能

事務所名 : 弁護士法人菊池綜合法律事務所
住所 : 岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL : 086-231-3535

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

086-231-3535

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

菊池捷男(きくちとしお)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる
プロのおすすめコラム
民法改正が賃貸借契約に与える影響 4 原状回復の内容は具体的に書く

1 原状回復費用には自然損耗分は入らない 改正民法621条は、「賃借人は賃借物を受け取った後にこれに生じた損...

[ 不動産法(賃貸借編) ]

民法改正が賃貸借契約に与える影響 3 賃料が当然に減額となる場合(改正)

1 民法611条の改正内容改正された民法第611条は、1項で、「賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び...

[ 不動産法(賃貸借編) ]

民法改正が賃貸借契約に与える影響 2 賃借人の修繕権(新設)

1 修繕権の創設改正民法607条の2は、「賃借物の修繕が必要である場合において、次に掲げるときは、その修繕...

[ 不動産法(賃貸借編) ]

民法改正が賃貸借契約に与える影響 1 賃貸借期間が伸長された

ガソリンスタンドの設置目的などに朗報1 現行法は20年、改正法は50年借地借家法の適用のない賃貸借契...

[ 不動産法(賃貸借編) ]

他人の研究論文の模倣ないし盗用と私立大学の使用者責任

 知的財産高等裁判所平成27年10月6日判決は、・大学又は大学院の教員が行うすべての学術論文の執筆,発表...

[ 民法雑学 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ