コラム

2014-09-30

相続 遺言執行者の権限

Q 私は,銀行の預金窓口にいる者です。先日,当銀行に預金口座を開設している甲さんの遺言執行者を名乗る弁護士が,甲さん名義の預金を全部払い戻してくれといってきました。甲さんの除籍謄本やその弁護士の資格証明書とともに,公正証書遺言書の正本ももってきました。遺言書の内容は,「私は,全財産を隣家の乙家の皆さんに遺贈する。」とだけ書いていました。
 そこで,私は,上司と相談して,遺言執行者である弁護士に,
①全相続人から同意書をもらってくること。
➁遺贈を受ける「乙家の皆さん」では受遺者の特定ができていないので,乙家の人の住民票謄本を見せてください。
といいましたところ,➁の謄本は見せてもらいましたが,①は,必要がないといって断られました。
 銀行は,遺言執行者に,甲さん名義の預金を全部支払わなければならないのですか。

A 甲さん名義の預金を全部支払わなければならなりません。
 遺贈の執行は,遺言執行者が指定又は選任されているときは,遺言執行者が,遺言執行者が選任されていないときは,全相続人がすることになっています。すなわち,民法1012条1項は,「遺言執行者は、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。」と規定し,また,民法1013条は,「遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない。」と規定しているからです。
 相続人に対する「相続させる」旨の遺言,すなわち遺産の分割の方法を定めた遺言の場合は,被相続人の死亡と同時に,受遺財産は,直接受遺相続人に移転します(最高裁判所平成3年4月19日判決)が,遺贈の場合は,遺贈の執行によって,受遺者が遺贈財産を取得することになります(判例・通説)ので,遺言執行者は,被相続人名義の預金を,遺言執行者に支払うことを請求することができます。

 したがって,あなたの銀行は,遺言執行者に,甲さん名義の預金を全部払い戻す義務があります。相続人の承諾は要りません。

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