コラム

 公開日: 2014-09-20 

公用文の書き方 19 簡潔なわかりやすい言葉のほうがよほどいいことがわかってきたわ

 「簡潔なわかりやすい言葉のほうがよほどいいことがわかってきたわ」
 この言葉は,ルーシー・M・モンゴメリーが書いた小説「赤毛のアン」の中で、ミス・ステイン先生が,アンに,「短い言葉のほうが、長いのより強くていいわ」と,文章の書き方を教えたところ,アンが応えた言葉です。

 小説「赤毛のアン」は、世界一美しい島といわれる、カナダの大西洋側にあるセントローレンス湾内にあるプリンス・エドワード島を舞台にした物語です。村岡花子邦訳のこの小説は、プリンス・エドワード島の自然やアンの語り口が、旋律をもった文章になっており、ひとたび,読者が,この本を読み始めると、ぐんぐんと吸い込まれるように、赤毛のアンの世界に、没入していきます。この本は,簡潔で分かりやすい言葉によって綴られ,アンの人柄や、性格、人と人との交情が、細やかに、そして、温かく伝わってきます。
 文章を美しく,また,分かりやすく書く要諦は,アンの言うように,「簡潔なわかりやすい言葉で書く」ということなのでしょう。
 公用文も,同じだと思われます。
 なお,小説「赤毛のアン」は,文中、随所に、作家の優しさが、珠玉の言葉になって、読者の心を打ちます。

 アンは、男の子の養子をと望んだマシュー・カスバート とマリラ・カスバートの兄妹の家に、手違いから、やってきました。
 マリラは、マシューに言います。
マリラ  「置いとけませんね。あの子がわたしらに、何の役にたつというんです?」
 そうなんです。マシューもマリラも、マシューが60歳になり、心臓病の持病をもっているので、野良仕事の手伝いができる男の子が欲しかったのです。その家に、予想外に女の子がやってきたのですから、マリラの言うのは、当然のことだったのです。
 しかし、このとき、
マシュウ  「わしらのほうであの子になにか役にたつかもしれんよ」
 日頃、自分の意思というものを口にしないマシューの言葉です。
 駅から自宅グリーンゲイブルス(邦訳「緑の切妻屋根」)まで、アンを馬車で連れ帰ったマシューは、アンが、いかに愛に飢え、家庭を求めているか、いかにマシューの家の子になることを喜んでいるかを知ったのです。また、いっぺんにアンを好きになっていたのです。
 そういう思いもあり、件(くだん)の言葉になったのです。
 結局、このマシューの言葉で、アンは、グリーンゲイブルスの子になりました。
 その後、マシューも、マリラも、アンに対する愛情が、日ごとに大きくなっていき、それまでに経験したことにない,明るい,笑いの多い日々を送ることになるのです。

 5年後、マシューは、突然、心臓発作で亡くなります。
 その前日のアンとの会話です。
 野良仕事を終えたところのマシューに,アンが語りかけます。
アン  「私が、男であったら、マシュー叔父さんを助けることができるのに・・・」
マシュー 「お前は女の子でよかったんだよ。12人の男の子より、いいんだからね。わしの自慢の娘じゃないか。」
 アンと分かれた後、マシューは,つぶやきます。
マシュー 「あの子がわしらに入用だったことを神様はご存じだった。あの子は神様の思し召しだった。」

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