コラム

 公開日: 2014-09-09 

公用文の書き方 8 平仮名で書く形式名詞と補助形容詞の例

形容詞と補助形容詞でいいますと,
例えば,「欲しい」と「てほしい」
「欲しい」という用語は,「自分のものにしたい,手に入れたい,望ましい」という意味の形容詞です。形容詞は,前述のとおり,漢字で書きます。
「お菓子が欲しい。返事が欲しい。落ち着きが欲しい。」などです。
一方,平仮名の「てほしい」は,動詞の連用形に接続助詞の「て」を付けて「・・・してもらいたい」という意味になる補助形容詞ですので,平仮名で書かねばなりません。
「もっと頑張ってほしい。貸したお金を返してほしい。」などです。
ですから,× 「もっと頑張って欲しい」は間違った書き方になります。

名詞と形式名詞の関係も,同じく名詞は漢字,形式名詞は平仮名で書くことになります。
「事」か「こと」か?
「事」も名詞(実質名詞)として使われる場合は,漢字で書かねばなりません。「去年の事。事彼に関する限り,良い事があった。本当の事。考え事。」などです。
しかしながら,形式名詞の場合や副詞的な使われ方をする場合は,平仮名で「こと」と書かねばなりません。「私こと。話し合いたいことがある。あんなことがあった。彼のことだ。書くこと。早く起きること。」などです。

×「書く事は大切だ」は間違った書き方になります。

その他,名詞については,実質名詞としての性格を失って平仮名で書かれる言葉には,次のような字句があります。

「位」か「くらい・ぐらい」か?
「位」は,身分・地位・称号を意味する名詞ですので,名詞として使う場合は漢字で書くことになります。「位の高い人。位人臣を極める。位負けをする。」などです。
 しかしながら,程度や限度を示す副助詞又は助動詞として使う場合は,「くらい」又は「ぐらい」と平仮名で書かねばなりません。「私くらいの年格好の人。あのくらいの大きさ。」などです。
なお,「公用文における漢字使用について」別表1(2)カに,助動詞及び助詞は,平仮名で書くものとされ,その中に「ぐらい(二十歳ぐらいの人)」が掲げられています。

×「二十歳位の男性」も間違った書き方になります。

「程」と「のほど」
「程」は,物事・動作・状態の程度や段階のことで,名詞として使う場合は,漢字で書きます。「実力の程。真偽の程は知らない。ふざけるにも程がある。程なく帰ってくる。」などです。
しかしながら,断定を避け,表現を軟らかくするのに用いる形式名詞として使う場合は,「ほど」と平仮名で書きます。「御自愛のほどを祈ります。詳細のほどは後日お知らせします。」などです。

× 「詳細の程は後日お知らせします。」も間違った書き方になります。

「訳」か「わけ」か?
「訳」は,理由のことです。これも,実質名詞の場合は漢字で書きます。「訳が分からん。成績が良い訳を教えよう。」などです。
しかしながら,形式名詞の場合は,平仮名で書かねばありません。
 「公用文における漢字使用等について」別表1(2)キに,
「次のような語句を,( )の中に示した例のように用いるときは,原則として,仮名で書く。」と書かれ,その一つとして,
「わけ(賛成するわけにはいかない。)」が記載されていますが,この「わけ」という単語は,名詞ではありますが,「訳」の持つ「理由」という意味が薄れ,形式名詞になっていますので,平仮名で書くことになるのです。
他にも,「そんなわけにはいかないよ。そういうわけではない。そう言ったわけではない。」などがあります。

×「賛成する訳にはいかない。」も間違った書き方になります。


「通り」か「とおり」か?
「通り」は,道路の意味の漢字ですので,道路や街路の意味で使う場合は,漢字で書かねばなりません。「あっちの通り。反対側の通り。彼が店を出している本町通り」などです。
しかし,その意味のない使い方をする場合は「とおり」や「どおり」と平仮名で書かなければなりません。
「公用文における漢字使用等について」別表1(2)キに,「仮名で書く語句」の一つとして,「とおり (次のとおりである。)」が示されています。

×「次の通りである。」も間違った書き方になります。


なお,名詞は,原則として漢字で書きますが,「公用文における漢字使用等について」別表1(2)アは,代名詞について,次のように定めています。
「ア 次のような代名詞は,原則として,漢字で書く。
       例  俺  彼  誰  何  僕  私  我々  」

この記事を書いたプロ

弁護士法人菊池綜合法律事務所 [ホームページ]

弁護士 菊池捷男

岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL:086-231-3535

  • 問い合わせ

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

10

こちらの関連するコラムもお読みください。

<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
 
このプロの紹介記事
菊池綜合法律事務所|菊池捷男弁護士は数多くの民事裁判を手がけてきたエキスパート

法律事務所は決して敷居の高い場所ではありません。(1/3)

 事務所設立以来40年、「うそをつかない、ごまかさない」を信念に、離婚や相続など数多くの民事裁判を手がけてきた菊池捷男さん。現在事務所には菊池さんを筆頭に6人の弁護士が在籍し、民事から企業法務まであらゆる法律問題をサポートしています。 ...

菊池捷男プロに相談してみよう!

山陽新聞社 マイベストプロ

あらゆる法律問題に対処可能

事務所名 : 弁護士法人菊池綜合法律事務所
住所 : 岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL : 086-231-3535

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

086-231-3535

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

菊池捷男(きくちとしお)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる
プロのおすすめコラム
第2章 1遺産分割 2具体的相続分(金額)を決める三つの方法(2)特別受益の持戻し計算型
イメージ

【補説】生前贈与を受けている相続人は、その生前贈与分を、相続の先渡しを受けたものとして、具体的相続分...

[ イラストによる相続法 ]

独禁法って何だ?1 独禁法・公取委・課徴金

1 独禁法「のう、後藤よ!独禁法って何だ?」「独禁法は略称でなあ、正しくは“私的独占の禁止及び公正取引の...

[ 菊池と後藤の法律実務レポート(企業編) ]

第2章 1遺産分割 2具体的相続分(金額)を決める三つの方法
イメージ

【補説】単純型というのは、生前贈与も遺贈も寄与分もない場合のことです。単純型は、遺産の額に、法定相...

哲学とは何?

 ここまでに、徳川家康の残した処世訓のこと、法の箴言のこと、を書いてきたが、処世訓も箴言も、実に意味深い言...

[ 格言や歴史上の偉人の言葉に学ぶ ]

第2章 1遺産分割 1遺産分割とは(3)遺産分割内容を決める二つのステップ
イメージ

【補説】相続人間で、順を追って、具体的相続分を算出し、その具体的相続分に見合う遺産をどのように分割取...

[ イラストによる相続法 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ