コラム

 公開日: 2010-10-21 

相続 25 自筆証書遺言書の書き方


民法968条は、「自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。」と規定しています。
これにより、遺言を自筆証書で書こうとすれば、

1 全文を自書しなければなりません。
Q 他人の添え手がある場合は、自書と言えるか?
病気などで十分に自書ができないため、他人の介助を受けたときは自書と言えるか?
他人の添え手の介助を受けた自書が、添え手をした他人の意思が介入した形跡のないことが明らかな場合は自書として認め得る、とした最高裁判所昭和62.10.8判決がありますが、具体的な事案では、自書であることを否定しました。
Q カーボン紙を使った場合は自書と言えるか?
カーボン紙を使った自書は、本人の筆跡をなぞることで偽造しやすいのと、カーボン紙を使う必要性が乏しい理由で、否定的な見解があります。
Q 遺言の一部をタイプやパソコンで作った場合
財産目録をタイプで印字したものを使い、本文を自書した遺言は、遺言全体が無効になります(東京高裁昭和59.3.22判決)。

2 日付を書かねばなりません。
これも自書ですので。ゴム印で日付を入れると無効になります。
Q 日付を書く意味
日付を書く意味には、遺言書作成の日を特定することにより、遺言者の遺言能力を判断する基準日にすることと、矛盾する遺言が複数ある場合の、効力の優劣を判断する基準(後で作成されたものが有効)にすることがありますが、遺言を書いた日とは異なる日を書いた場合でも、遺言が当然に無効になる、というものではありません。
ただ、実際に作成された日よりも2年も前の日付にした遺言が、不実の日付のある遺言、したがって日付のない遺言であるとされ、無効とされた裁判例(東京高裁昭和56.9.16判決)があります。
Q 誤記がある場合
日付について明らかな誤記がある場合、日付の特定があれば有効とされます。裁判例では、「正和」を「昭和」の誤記、「昭和五十四十年」を「昭和五十四年」の誤記として、遺言を有効としたものがあります。
Q 遺言書が数葉(数枚)にわたる場合
遺言書が数葉にわたる場合は、それが1個の遺言として作成されているときは、日付、遺言者の署名、押印は、その1葉にされていれば足ります(最高裁判所昭和36.6.22判決)
Q 日が特定できない遺言の効力
日を書かない遺言、日を「吉日」と書いた遺言は無効になります。ただし、月末と書いた場合、例えば、「平成元年11月末」と書いた遺言は、「11月末日」すなわち「11月30日」だということになりますので、遺言は有効になります(東京地裁平成6.6.28判決)
Q 封筒にのみ日付の記載がある場合
遺言書を封入した封筒には日付が自書されているが、遺言書そのものには日付が書かれていない場合は、遺言書と封筒が一体のものと見られるときは、有効とされますが、遺言書を封入した封筒が、開封された状態であるときは、一体性はないとして、日付のない遺言とされた裁判事例(岐阜家庭裁判所昭和55.2.14審判)があります。

3 氏名を自書しなければなりません。
これは、本人を確認し、誰が遺言をしたのかを明らかにするためのものですから、通称名、芸名、雅号でも有効な自書になります。

4 押印しなければなりません。
押印の目的は、「遺言者の同一性及び真意を確保するとともに、我が国の慣行ないし法意識に照らして文書の完成を担保することにあると解される」というのが最高裁判所平成元.2.16判決です。印鑑は、実印でも、認め印でもかまいません。
Q 外国人の場合も押印を要するか?
押印が、最高裁判所のいうように、「我が国の慣行ないし法意識に照らして文書の完成を担保することにあると解される」からというのであれば、押印の慣行のない外国人の場合は、押印のない遺言を無効にするのは酷だと思われますが、その観点から、最高裁判所昭和49.12.24判決は、白系ロシア人の書いた、サインだけで、押印のないない遺言を有効にしています。
Q 押印は指印でも良いか?
前記最高裁判所判決は、「押印は、遺言者が印章に代えて拇指その他の指頭に墨、朱肉等を付けて押捺すること(いわゆる指印)をもって足りる」と判示していますので、指印でも有効です。

5 遺言に加除訂正を加える場合
これについては、民法968条2項が「自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。」と規定していますので、結構難しい作業が必要になります。遺言書を訂正する場合は、全部書き直した方が無難でしょう。



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