コラム

 公開日: 2014-07-13 

公用文用語   「なおがき」は,「尚書き」に非ず,「なお書き」なり

 なお書きの「なお」を,漢字の「尚」と書くことができるか?
1 平成22年11月30日にあったこと
同日付で,一般の社会生活において現代の国語を書き表すための漢字使用の目安として,「常用漢字表」(内閣告示第2号)が,国の各行政機関が作成する公用文や法令文における漢字使用等について守るべき指標として,「公用文における漢字使用等について」(内閣訓令第1号)及び「法令における漢字使用等について」(平成22年11月30日付け内閣法制局長官決定)が,それぞれ公にされました。

2 公用文における漢字使用について
「公用文における漢字使用等について」により,
(1) 公用文における漢字使用は,「常用漢字表」の本表及び付表(表の見方及び使い方を含む。)によるものとする(なお,字体については通用字体を用いるものとする。)が,
(2) 「公用文における漢字使用」の(別紙)に掲げられたことを守るとを求めています。

3 漢字使用の原則
 原則は,
(1)漢字は,常用漢字表に掲げられているものを用いる。ただし,常用漢字表に掲げられている漢字でも,読みが掲げられていない語句には用いることはできない。
(2)常用漢字表に掲げられている漢字を用いて表記できる語句は,漢字を用いて表記しなければならない。
(3)漢字が常用漢字表に掲げられていない場合は,平仮名で表記する。この場合,平仮名に傍点を打ってはならない。
(4)専門用語で特に常用漢字表に掲げられていない漢字を用いて表記する必要があるものについては,当該漢字を用いて表記し,漢字にふりがなを付ける。
というものです。

4 「尚」という漢字
常用漢字表では「尚」という漢字の字音は「ショウ」ですが,字訓は定められていません。つまり,「尚」には「なお」という読みはないのです。
 したがって,「なおがき」という読みで,「尚書き」を用いることはできません。
「尚」は,尚早,高尚など「ショウ」という字音で,熟語の中で使われるだけになります。
 ですから,「なお」と書きたいときは平仮名で「なお」と書くことになります。

5 国語の辞書
 一般の辞書には,「尚」に「なお」の読みが書かれており,副詞として「相変わらず」や「さらに」という意味の言葉として,また,接続詞としても「さらに」という意味の言葉として使われるように書かれています。
 しかし,公用文では,前記原則(1)のただし書きのように,常用漢字表にない読みはできず,「尚」に「なお」の読みを与えて使うことはできないのです。
 

5 補足
  なお,新しい「常用漢字表」搭載の漢字は,従前のものに196字を加え,5字を削除して,2136字になりました。
 これにより,
①それまでの公用文では平仮名でしか書けなかったものが漢字で書けるようになったもの(例:誰,頃,挨拶,曖昧,咽喉,妖艶,潰瘍 葛藤 憧憬 梗塞 沙汰 刹那 嫉妬 腫瘍 脊椎 煎餅 捻挫 補填,拉致,完璧,危惧,毀損,斬新,恣意,失踪,真摯,緻密,破綻,必須,比喩,肥沃,払拭,捕捉,未曾有,賄賂),
➁送り仮名付きのもので,漢字で書けるようになったもの(例:遡る,貼る,溺れる,委ねる,育む,応える,関わる,鑑みる,全て,など)があり,また,
③漢字と平仮名の分かち書きしていた文字が全部漢字で書けるようになったもの(例:進ちょく→進捗,ちょう付→貼付,補てん→補填,など)があります。

また,,「公用文における漢字使用等について」には,別紙で,漢字で書くべきもの,平仮名で書くべきもの,送り仮名の付け方などが具体的に例示されています。

 

この記事を書いたプロ

弁護士法人菊池綜合法律事務所 [ホームページ]

弁護士 菊池捷男

岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL:086-231-3535

  • 問い合わせ

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

5

こちらの関連するコラムもお読みください。

<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
 
このプロの紹介記事
菊池綜合法律事務所|菊池捷男弁護士は数多くの民事裁判を手がけてきたエキスパート

法律事務所は決して敷居の高い場所ではありません。(1/3)

 事務所設立以来40年、「うそをつかない、ごまかさない」を信念に、離婚や相続など数多くの民事裁判を手がけてきた菊池捷男さん。現在事務所には菊池さんを筆頭に6人の弁護士が在籍し、民事から企業法務まであらゆる法律問題をサポートしています。 ...

菊池捷男プロに相談してみよう!

山陽新聞社 マイベストプロ

あらゆる法律問題に対処可能

事務所名 : 弁護士法人菊池綜合法律事務所
住所 : 岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL : 086-231-3535

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

086-231-3535

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

菊池捷男(きくちとしお)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる
プロのおすすめコラム
民法雑学 不当利得返還請求権の消滅時効は、権利発生の時から、進行が開始する

先日、45年前の子供の取り違えによる債務不履行を原因とした損害賠償請求権の時効は、取り違えを知った時から、消...

[ 民法雑学 ]

遺言執行者制度は機能しているか?③ 日弁連・懲戒委員会の懲戒議決に通底する考え

3 日弁連・懲戒委員会の懲戒議決に通底する考え日弁連・懲戒委員会は、(1) 民法1015条の「遺言執行者...

[ 相続判例法理 ]

遺言執行者制度は機能しているか?② 弁護士の総意(日弁連総会議決)は、反対意見

2 弁護士の総意(日弁連総会議決)は、反対意見 日弁連総会は,平成16年、日弁連規則を改正し,平成13年に...

[ 相続判例法理 ]

遺言執行者制度は機能しているか?① 日弁連・懲戒委員会の遺言執行者観は相続人代理人説

1 日弁連・懲戒委員会の遺言執行者観は相続人代理人説 日弁連・懲戒委員会は,平成13年,「全遺産を相続...

[ 相続判例法理 ]

遺言執行者とは何者か?④ 会社の清算を遺言執行者に託した遺言書の例

次の遺言書は,遺言書実務で書かれた遺言書の一つです。遺言書 遺言書 私,凸山太郎は,次のとおり...

[ 相続判例法理 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ