コラム

 公開日: 2014-06-05 

孫子に学ぶ④ 孫子を学ばざるの結果

1,長篠の戦い
 武田信玄亡き後も,武田軍団は,強大です。徳川方に帰属した長篠城を攻めますが,このとき徳川に織田信長の援軍が到着して,長篠の戦いになります。
 織田・徳川軍は3万8000人,武田軍は1万5000人。うち3000人は長篠城の押さえに置いていたので,長篠の設楽原へ出撃できた人数は1万2000人。数の上からは明らかに劣勢です。
 この時点で,武田軍は,孫子の教え「十倍の兵力なら包囲し、五倍の兵力な
ら攻撃し、二倍の兵力なら分断し、互角の兵力なら勇戦し、劣勢なら退却する。」に従い,退却すべきでした。
 しかも,武田軍は,孫子六如の1つ「知り難きこと陰の如く」どころか,自軍は,すべて姿をさらけ出しているのです。
 一方,織田・徳川軍は,敵からは全貌は見えないように,丘陵を利用して巧みに馬防柵を構築(野戦築城)し,その内に三段構えの鉄砲陣を敷き,満を持して武田軍の来襲を待っているのですから,「知り難きこと陰の如し」は敵陣の方でした。
 また,敵軍に,勝者の策「勝ちて然る後に戦う」という体制「動かざること山の如し」を示すどころか,直前に自陣である鳶ヶ巣山砦が敵軍に墜とされ軍兵の動揺はなはだしい中,敗者の策「戦って然る後に勝つ」道を探ろうというのですから,負けは確実という状況でした。
 さらには,孫子のいう,勝ちに五あり,を考えても,この時点での勝ちはありえないことだったのですが・・・
 すなわち,孫子は,「勝を知るに五あり。以って戦うべきと以って戦うべからざるを知る者は勝つ。衆寡の用を識る者は勝つ。上下欲を同じくする者は勝つ。愚を以って不愚を待つ者は勝つ。将能にして、君御せざる者は勝つ。」と教えていたのですが・・・
 まことに,武田勝頼は,信玄の衣鉢を継いだはずなのに,孫子の教えは継いでいなかった,と言わざるをえない武将だったのです。

 この状況下で,戦うと敗戦確実と悟った,信玄股肱の臣,山県昌景、馬場信春、内藤昌豊らは,勝頼に撤退を進言したのですが,勝頼,頑として聞き入れません。
 二世の脆弱が現れた瞬間です。
 意地になり,御旗・楯無を持ち出し,股肱の臣の口を封ずるのです。
「御旗」とは,先祖の新羅三郎義光の父頼義が後冷泉天皇から下賜された旗のことで,「楯無」というのは,義光が使っていた鎧(これがあれば楯は必要なしといわれたところからついた名称)ですが,家臣は,これらを示されれば絶対服従を強いられるものでした。
 かくて,武田軍は,六如の2つ「疾きこと風の如く」「侵掠すること火の如く」になって,敵陣を激しく攻めるのですが,あわれ敵軍の好餌食です。
 実をもって虚を伐つどころか,虚をもって実を伐とうとするのですから,岩に生卵をたたきつけるような無謀な戦いになることは,股肱の臣達には,目に見えていました。
 しかも,勝頼,第一陣が馬防柵に至る前にことごとく朱になって倒れるのを見ても,第二陣,第三陣と,ただ死にに行くためだけの攻撃を命ずるのですから,将としての資格は喪失しています。
 もし,孫子の信奉者であった信玄が,このとき生きていて,勝頼の戦いの無残な結果を目にしたならば,心中何を思うにせよ,地に哭し,天を仰いで万斛の涙,しかも血の涙を流したことでしょう。

2,二世の脆弱ここに極まれり
 長篠の戦いに敗れた勝頼は,後は,急坂を転げ落ちるように,勢力を無くしていきます。
 勝頼は,やがて,長篠の戦いの日から7年後,ついに織田・徳川軍によって天目山にまで追い詰められ,自害していくのですが,何が原因か?
 信玄は,勝頼に,何を教えたのか?
 ここでは,二世の脆弱が,最も悪い形で出たとだけいっておきたいと思います。

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