コラム

2014-06-03

孫子に学ぶ② 戦いに五則あり

1,道,天,地,将,法,
 孫子は,
 一に曰く道。
 二に曰く天。
 三に曰く地。
 四に曰く将。
 五に曰く法。
の五則が、戦いに勝つためには必要だと言っています。

2,道
 五則の第一の「道」とは、大義のことです。戦争の大義名分のことです。
 では,大義とは何か?といいますと,「大義親を滅す」(たいぎしんをめっす)という言葉があるように,肉親を犠牲にしてもなお達しなければならない至高の価値というべきものです。
 この「道」を,勝つための第一の条件に据えた孫子は,大義のない戦いは,必ず敗れる,という真理を,喝破したのでしょう。
 中国の秦の時代の末,劉邦よりも圧倒的に強かった項羽も、主君である楚の義帝を弑逆(しいぎゃく)するという大罪を犯したことで道を失い、垓下(がいか)の戦いで、四面楚歌の中、滅亡します。
 我が国の幕末は戊辰戦争で、大義の旗,錦旗を掲げた薩長土肥軍に対し、徳川幕府最後の将軍徳川慶喜はなすすべもなく,ただ恭順の意を表するのみ。戦意を放棄し、江戸城を明け渡してしまいました。
 さらには,我が国の戦国時代の山崎の合戦。
 主君の弔い合戦で,不義の逆臣を伐つという大義をかざす羽柴秀吉軍と,主殺しの簒奪者という汚名だけで,大義を失った明智光秀軍。
 一方は,鼠も虎となって襲いかかり,他方は,虎も鼠となって逃げ散っていく惨を見せてしまいます。
 要は、戦争をするには、大義が必要だということです。
 大義や名目のない戦争では必ず敗れるということは、歴史が教えてくれているのです。

 これは、企業人の行う経営も同じでしょう。
 従業員に誇りと喜びを与える事業でないと、長続きはしないということなのでしょう。
 弁護士の場合も、同じです。正義のない訴訟はしない方がよいのです。

3,天
 五則第二の「天」は、時のことです。孟子のいう「天の時は地の利に如かず。地の利は人の和に如かず」という言葉でいう、天の時のことです。

4,地
 第三の「地」も孟子のいう「地の利」のことです。

5,将
 第四の「将」とは、
 孫子曰く。
 将とは、智、信、仁、勇、厳なり。
という言葉のとおり、
 知恵があり、
 信が置け、
 優しく思いやりがあり、
 勇敢であるが、
 軍令に背き街亭の戦いで破れた馬謖を泣いて斬った諸葛孔明のように、ときに秋霜を思わせる厳がある将をいいます。

 なお、老子は、「人を知る者は智なり、己を知る者は明なり」といいますので、孫子のいう「智」は「智」と「明」の意味なのでしょう。
 勇は、真の勇です。孔子は「暴虎馮河死して悔いなき者は、吾与(とも)にせざるなり」といいましたが、素手で虎と戦い、黄河を泳いで渡るような向こう見ずな勇は真の勇ではありません。また匹夫の勇も勇ではありません。ここでは真の勇ある者のことです。
 では,真の勇とは何か?
 筆者に問うなかれ。凡愚には,これに答える智恵なし,とのみ答えておきたいと思います。

6,法
 第五の「法」は、統制のことです。上命下服が徹底していることです。
 法があったればこそ,諸葛孔明の軍扇が,兵士を手足の如く動かしえたのです。
 法は秩序そのものです。
 法は,上下ともに平等に適用しなければなりません。
 また,ひとたび決めた軍令は,安易に変更はできません。
 書経には「綸言汗の如し」という言葉が書かれています。
 天使の言葉は、汗の如く、一度出てしまうと元には戻せないという意味ですが,
 法の重みも,綸言と同じ重みになるので,
 朝令暮改は,軍の秩序を破壊してしまいます。

以上の、戦争の五則は、企業経営者にも、大いに教訓になることと思います。
企業は,従業員に夢と誇りを与えるビジョンを持ち(道),時期まさに今という天の時(天),地の利を得(地),知恵あり明あり信頼厚く恩情あり勇気決断のできるが厳なるところもある,よきトップ及びよき幹部(将)が統率する,規律と秩序のある経営(法)であってはじめて,飛躍できるというべきなのでしょう。
このような企業は,静かなときであっても,それは,蛟竜の淵に潜むは、時を得て天に昇らんがためなりの静というべきで,明日の飛翔が約束された企業ということになるのでしょう。



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