コラム

 公開日: 2014-06-02  最終更新日: 2014-06-05

孫子に学ぶ① 兵は詭道なり

1,兵は詭道なり
 この言葉は、孫武という人の著書「孫子」の第一編始計偏の冒頭に書かれた言葉です。
兵とは、戦争のこと。
詭道とは、正道ではない道、ごまかしの道、権謀術数など智恵の限りを使って戦う道をいいます。
 しかし、現在、実際の戦争はいざ知らず、事業経営の中で、ルールなき戦いというものはなく、兵は詭道なり、と唱え、戦いを進めるわけにはいきません。
 兵は詭道なりは、「戦いは智恵なり」と理解すべきでしょう。

2,人を知れ
 孫子の教え、すなわち孫武の思想の根源にあるのは、人間心理に対する透徹した洞察です。
 これは、現在を生き、明日に期す、企業戦争の中を生きる人には、絶対、身につけておかなければならない能力です。
 孫子には、戦う中の、細かな注意事項も書かれています。
人間の心理が分かるから、細かな注意もできるのでしょう。
 「道狭く、草木茂るところ火あり」は、敵を追撃していて、山間の道険しい場所に至ったときは、そこが死地になり、敵は火をもって攻撃する、という注意です。
 中国の三国時代の諸葛孔明は、火を使った戦術を得意としていました。敵を、火計を施した死地に誘い込み、そして攻めるという戦法が、孔明の戦い方の特徴の1つです。歴史上有名な赤壁の戦いも、火計が用いられましたが、孫子は、孔明の時代より何百年か前の人ですが、死地に火計ありと,人間の心理の深奥を見据えていたのでしょう。

3,状況分析は細心に
 また、孫子は、「鳥立つは伏なり」という注意事項も書いています。
 これは、鳥が立った時は、敵勢が潜んでいる情況証拠だと教えているのです。
 これは、情況証拠を見逃すな、というところでしょうか。
 あるいは,小さなことも,それを前兆として捉え,危機や好機に気づくように,ということでしょうか。
 ちなみに、「鳥立つは伏なり」は、我が国の戦い、源平合戦は富士川の戦いで、平維盛軍5万が、水鳥の羽音から源氏の伏勢のあるを思い,恐れ,戦わず,京へ逃げ帰ったところにも、実証されています。
 もっとも,孫子が「鳥立つは伏なり」と教えたのは,逃げるためではなく,戦うためだったのですが,あわれ平家軍は,戦わずして逃げることにしたため,世人の嘲罵を受けることになりました。

 
4,客観的・科学的な状況分析
 孫子は、さらにまた、戦力を客観的科学的に分析し、
「十倍の兵力なら包囲し、五倍の兵力なら攻撃し、二倍の兵力なら分断し、互角の兵力なら勇戦し、劣勢なら退却する。」という法則を立てています。
 戦いの中の法則の発見。
 これが孫子の命題だったように思えます。
 そして、戦いの法則の発見により、「彼を知り己を知れば百戦して殆うからず」という心境に至ったものと思われます。

5,頭脳は柔軟に
 孫子は、「兵の形は水に象る(かたどる)」といいます。
 意味は、軍の姿は、水の形と同じく、敵勢の出方によって、融通無碍に変化すべしということです。
 硬直した戦い方では負けるということを注意しているのです。

6,戦いは最後の手段
  孫子曰く。
 兵は国の大事にして、死生の地、存亡の道なり。察せざるべからず。
 百戦百勝は善の善なるものにあらず。戦わずして人の兵を屈するは善の善なる
ものなり。
 算多きは勝ち、算少なきは勝たず。而るを況や(しかるをいわんや)算なきに於いてをや。

 孫子は、「戦わずして勝つ」ことを第一のこととし、「算多きは勝ち、算少なきは勝たず。而るを況や算なきに於いてをや」と知恵なき者は,なにもできないことを強調しています。
 企業経営者も,弁護士も、算多きは勝ち、算少なきは勝たず,を銘記し,教訓とすべきものなのでしょう。
(以下つづく)

参考:
 この文中で、「状況」という言葉と「情況」という言葉を使い分けました。
 状況は客観的な状態を意味し、情況は主観と客観の双方の状態を意味します。
 情況証拠は,犯罪の動機や犯意などの主観的なもの(つまり「情」の部分)を含めた言葉なのです。
 通常は,状況という言葉が正しく,法令用語としては,情況は情況証拠として使う以外には使われません。

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