コラム

 公開日: 2014-05-28  最終更新日: 2014-08-07

弁護士懲戒⑫ 日弁連の到達点と残された問題

1,日弁連の到達点
 兼任問題は、旧日蓮弁倫理時代の①日弁連懲戒委員会平成13.8.24議決,弁護士職務基本規程時代の➁平成18.1.10議決,③平成20.4.14議決,④平成21.1.13議決及び⑤平成22年5月10日議決で,取り上げられましたが,①から③までの議決は,弁護士が,遺言執行者と相続人の代理人を兼任すれば,遺言書の内容如何を問わず,懲戒処分を受けるという無条件懲戒肯定説,④の議決は,「遺産相続を巡って相続人間に深刻な対立があり、話し合いによる解決が困難な」事件で職務を行ったという条件付で懲戒処分にするという条件付懲戒肯定説,⑤の議決は,「遺言の内容からして遺言執行者に裁量の余地はない場合は,遺言執行者と各相続人との間には,実質的な利益相反の関係は認められない」ことを理由に、兼任した弁護士に対しては,懲戒処分にすべきではないとする議決です。。
 この平成22年議決が,日弁連の「兼任問題」の到達点になっております。
 この到達点の考え方は,平成16年の日弁連総会決議に基づく旧倫理の廃止,弁護士職務基本規程の制定,旧規定26条2号から新規定28条3号への改正を経た直後の日弁連倫理委員会が公表した公定解釈と同じ内容であり,全弁護士の総意というべきものです。
 ですから,今後,この見解は変わることはないと思われます。

2,遺言執行者に裁量権がある場合の「兼任」問題
 残された問題は,遺言の内容からして遺言執行者に裁量の余地がある場合は,遺言執行者と相続人の代理人を兼任すると,懲戒処分を受けるのか?という問題です。
 これについては,事例がないため,日弁連の見解は不明です。
 そこで,筆者が,私見を述べてみたいと思います。

 (1)「相続分の指定の委託」と「遺産分割方法の指定の委託」
 遺言の内容からして,遺言執行者に裁量の余地がある場合とは,法定遺言事項でいえば,「相続分の指定の委託」と「遺産分割方法の指定の委託」があります。
 これについては,次の判決が参考になります。
 すなわち東京高裁昭和57年3月23日判決は,1人の相続人への遺産分割方法の指定遺言は,その相続人が自分の有利になる恣意的な指定をするおそれがあることを理由に,無効であると判示しています。
 となれば,遺言執行者に遺産分割方法の指定を委託した遺言や,相続分の指定を委託した遺言の場合も,その遺言執行者が特定の相続人の代理人を兼任するときは,自分の依頼人に有利になるような恣意的な指定をするおそれがあるといえるでしょう。
 その場合は,遺言執行者になった弁護士は,弁護士職務基本規程28条3号の「依頼者の利益と他の依頼者の利益が相反する事件」で職務を行ったとして,懲戒処分を受ける立場に立つと思われます。

 (2)「遺留分減殺順位の指定の委託」遺言の場合
これは明日のコラムに書くこととします。

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