コラム

2014-05-20

弁護士懲戒③ 兼任した弁護士を懲戒処分に付しうる根拠規定

1,根拠規定
 現在、正確にいえば,弁護士職務基本規程(以下「規程」といいます。)が施行された平成17年4月1日以後、弁護士が、遺言執行者になり、相続人の代理人を兼任した場合で、懲戒処分を受けることになるときとは、
①規程28条3号に違反したとき
➁規程5条・6条に違反したとき
③規程28条3号と規程5条・6条の双方に違反したとき
です。
 ここで規程28条3号に違反したときとは,「依頼者の利益と他の依頼者の利益が相反する事件」で職務を行ったときです。
 規程5条及び6条に違反したときとは,「弁護士の信用と品位の保持義務」(5条)及び「弁護士の職務の公正の確保義務」(6条。以下第5条と第6条を合わせて「弁護士の品位保持義務」といいます。)に違反したときです。

2,「解説弁護士職務基本規程第2版」に搭載された懲戒処分例
 それは,次の3例です。
(1)兼任は、規程28条3号違反になるという議決(平成20.4.14議決)
すなわち、弁護士が兼任することは、遺言書の内容いかんにかかわらず、規程28条3号の「依頼者の利益と他の依頼者の利益が相反する事件」で職務を行ったことになるという議決です。
(2)兼任は、規程5条・6条違反になるという議決(平成18.1.10議決)
すなわち、弁護士が兼任することは、遺言書の内容いかんにかかわらず、弁護士の品位保持義務に違反するという見解です。
(3)兼任は、「遺産相続を巡って相続人間に深刻な対立があり、話し合いによる解決が困難な」事件の場合には、遺言書の内容いかんにかかわらず、規程5条・6条違反になるという議決(平成21.1.13議決)です。

3,遺言執行者が遺言執行をすることが全く予定されていない遺言の場合
遺言執行者がいても、遺言執行が全く予定されていない遺言というものがあります。
例えば「私こと凸山太郎は,妻花子に,自宅の土地建物を相続させる。」という遺言です。このような、特定の財産(例では:自宅)を特定の相続人(例では:花子)に「相続させる」と書いた遺言は、最高裁平成3年4月19日判決により、特段の事情がない限り、遺言者(例では:凸山太郎)の死亡と同時に、財産(例では:自宅)は受遺相続人(例では:花子)に移転するので、遺言執行者は、遺言執行をしないし、できません(このような遺言のことを「遺産分割方法の指定遺言」といいます。意味は、遺言者がすでに遺言書で遺産分割をしてくれている、というものです。)。
 ですから、遺言執行をすることのない遺言執行者が、特定の相続人の代理人になっても、規定28条3号の「依頼者の利益と他の依頼者の利益が相反する事件」で職務を行ったことにはなりませんので、この遺言の場合は、規定28条3号に問われることはなく、したがって、この遺言の場合で、兼任した弁護士が懲戒処分を受けるとすれば、規定5条及び6条違反、すなわち弁護士の品位保持義務に違反したときになります。

(つづく。次回は、弁護士の品位保持義務違反説について語ります。)

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