コラム

 公開日: 2014-05-19  最終更新日: 2015-03-17

弁護士懲戒➁ 弁護士職務基本規程施行後の懲戒事例

1,その後の日弁連懲戒処分例
 「解説弁護士職務基本規程第2版」に書かれた範囲で、次の4件の議決があります。

(1)日弁連懲戒委員会平成18.1.10議決
 同議決は、「遺言執行者は、特定の相続人の立場に偏することなく、中立的立場でその任務を遂行することが期待される」ことを理由に、特定の代理人になって訴訟活動をすれば、「弁護士の信用と品位の保持、職務の公正の確保」ができない、との理由で、兼任した弁護士を懲戒相当としました。

(2)日弁連懲戒委員会平成20.4.14議決
 同議決は、弁護士が兼任することは、利益相反になるので、非行にあたると議決しました。何故、利益相反になるのかは、「解説弁護士職務基本規程第2版」には書かれていませんので、不明です。

(3)日弁連懲戒委員会平成21.1.13議決
 同議決は、「遺産相続を巡って相続人間に深刻な対立があり、話し合いによる解決が困難な」ケースで、弁護士が兼任するのは、弁護士の信用と品位の保持を定めた弁護士職務基本規程5条6条に違反する非行になるとの理由で懲戒相当と判示しました。

(4)日弁連懲戒委員会平成22年5月10日議決
 この議決は、「遺言執行者の職務内容が裁量の余地のない場合の遺言執行者が、相続人の代理人になったことは弁護士職務基本規程28条3号に違反するものではなく、兼任した弁護士を懲戒処分にすべきではない」という議決です。
 この議決は,日弁連倫理委員会の公表した解釈にのっとり、弁護士が遺言執行者と相続人の代理人を兼任したことは非行に当たらないとして、単位弁護士会がした懲戒処分を取り消しました。


2,日弁連倫理委員会の新たな意見の表明
 日弁連倫理委員会は、平成24年1月、書籍「解説弁護士職務基本規程第2版」を発刊して、弁護士の遺言執行者と相続人代理人の兼任問題につき、
「遺言執行が終了していない時点においては、一部の相続人の代理人になるのは差し控えるべきであるといわざるを得ない。また、遺言執行が終了した後であっても、少なくとも当事者間に深刻な争いがあって、話し合いによる解決が困難な状況においては、遺言執行者に就任した弁護士が一部の相続人の代理人になることは差し控えるべきであろう。」という見解を表明しました。
 これは、懲戒原則否定説からは後退した意見です。同書は、懲戒原則否定説を「本書旧版」として紹介していますので、新版書籍では、懲戒原則否定説を修正したものと思われます。


3,日弁連倫理委員会の解釈指針の修正への疑問
 日弁連倫理委員会は、時間をかけ、また、全国の弁護士を対象に意見を集約し、旧倫理を廃止し新たに弁護士職務基本規程を制定することに尽力し、兼任問題に対して適用になる新規定すなわち弁護士職務基本規程28条3号の解釈指針として、遺言執行者の職務内容が裁量の余地のない場合の兼任は、懲戒理由にならない、という懲戒原則否定説を打ち出したのではなかったのか?
 懲戒原則否定説は、立法の経過からみて、全弁護士の総意ともいうべき見解ではなかったのか?
 その全弁護士の総意ともいうべき、懲戒原則否定説に反する懲戒処分例が数件続いただけで、しかも懲戒原則否定説を公表して、わずか5年も経過しない時期に、何故、懲戒原則否定説を修正する必要があったのか?
 「解説弁護士職務基本規程第2版」を読む限り、2の(1)(2)(3)の懲戒処分例の影響を受けての解釈指針の変更であることは間違いないようだが、しかし、最新の懲戒処分例は、懲戒原則否定説を受け入れた議決なのに、何故、懲戒原則否定説を修正する必要があったのか?
 疑問は尽きないところです。
(つづく)

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