コラム

 公開日: 2014-04-17 

不動産 新震災基準に適合する建物への建て替えを理由とする建物賃貸借契約の解約

Q 当社が賃貸している建物は,新震災基準で建てられたものではないので,その建て替えを理由として賃貸借契約を解約することはできますか?

A 賃貸人自らが土地を利用する計画がないと解約できません(1の裁判例)が,それがあると立退料の支払いを条件に解約が認めらるといえるでしょう(2と3の裁判例)。

1,東京地方裁判所平成25年 2月25日 判決のケース
同判決は,建物の老朽化が進み耐震性能の点で問題があることから,本件建物を建て替え,敷地を含む不動産を有効利用する必要があると主張しても,建替えや不動産の有効利用そのものについては,具体的な主張,立証を何らしていないから,原告が本件建物の使用を必要とする現実的,具体的事情は認められない。
 一方,被告は,営業を続けていること等の事情から店舗の使用を必要とする現実的,具体的事情が認められる。
 そうすると,建物賃貸借契約の解約をなしうる正当事由は認め難いというべきである,と判示しているところです。

2,東京地方裁判所平成25年6月5日判決のケースを紹介します。
同判決は,
①建物は,不同沈下を原因として,北西端部分において垂直方向に1000分の16,南西端部分において垂直方向に1000分の18の傾き,西側方向に向かって3階部分の床面において水平方向に1000分の15の傾きがある。この傾きは,国土交通省平成14年8月20日告示「住宅紛争処理の参考となるべき技術的基準」によれば構造耐力上主要な部分に瑕疵が存する可能性が高いレベルとなっており,内閣府が示す「災害に係わる住家の被害認定」によれば大規模半壊と判定されるレベルであり,日本建築学会が示す基準によれば頭重感,浮動感を訴える者が生じうるレベルとなっているものと認められる。
➁建物は建築後44年が経過しており,①➁を合わせた理由で,建物の改修に要する費用と建て替えの場合の費用との差を考慮しても本件建物を建て替える必要性は存するものと評価できる。
③本件契約締結時から現在までの本件建物の利用状況,賃料額の推移,想定される店舗移転の場合に要する諸費用等,営業廃止の可能性,原告の立退料支払に関する意向等諸般の事情を総合考慮すると,立退料500万円を支払い,解約申し入れの正当事由が補完されることにより,同正当事由が具備されるに至るものと認められる。
と判示し,賃貸借契約の解約を認めました。

3,東京地方裁判所平成24年 5月28日判決のケース
同判決は,
①新耐震基準より前の構造基準に基づく建物であり,既存不適格である。
➁阪神・淡路大震災においても新耐震基準より前の構造基準に基づく建物に被害が集中しており,本件建物も耐震対策を必要とする。
②建物の外観は,比較的良好であっても,内部は,1階及び2階のいずれの床もたわみがあり,建材そのものの老朽化が進んでいる。特に主要な構造材である柱に大きな亀裂があり,構造強度の低下が懸念される。
③垂直方向は,床と天井の間で,5mm程度の傾きがみられ,2階の床については,部屋幅当たり最大10mm程度の傾斜がみられた。
④基礎部分は,築年数に相応した部材の劣化があった。
⑤専門の業者の耐震診断の結果,上部構造評点は,0.26であり,0.7未満の場合,倒壊する可能性が高いというものである。所見は,築年数を考慮すると比較的良好に維持管理されているが,東側に全く耐震力がなく,不安定な構造となっている。上部構造評点を1.0以上(倒壊しない,又は一応倒壊しない)とするためには,相当の補強工事が必要である。⑦上記認定事実によれば,本件建物は,劣化,老朽化が進んでおり,特に,耐震構造の観点からは,大きな問題を有しているものというべきである。等の理由から,立退料の支払いを条件に建物賃貸借契約解約の正当理由を認めました。

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