コラム

 公開日: 2014-03-01 

地方行政 職員の兼業許可基準

Q 私は,地方公務員です。このたび,友人から共同で株式会社を経営しないかと誘われたのですが,私が株式会社の取締役になることに問題はありますか?

1,職員の根本基準
地方公務員法30条は,「すべて職員は、全体の奉仕者として公共の利益のために勤務し、且つ、職務の遂行に当つては、全力を挙げてこれに専念しなければならない。」という「服務の根本基準」規定を置いています。

2,職員の職務専念義務
また,同法35条は「職員は、法律又は条例に特別の定がある場合を除く外、その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、当該地方公共団体がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない。」という「職務専念義務」規定も置いています。

3,職員の営利企業等の従事制限
そして,これを受けて,同法38条1項は,「職員は、任命権者の許可を受けなければ、営利を目的とする私企業を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則(人事委員会を置かない地方公共団体においては、地方公共団体の規則)で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利を目的とする私企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない。」という,「職員の営利企業等の従事制限」規定を置いています。

4,営利企業等とは?
同法38条1項でいう「営利を目的とする私企業」の範囲は広く,工業,商業,金融業等はいうまでもなく,兼業農家の場合であっても,営利を主たる目的とするときは,これに含まれるとされています(行実昭26.5.14地自公発204号)。
株式会社は,営利を目的とする法人ですから,あなたの場合,株式会社の取締役になるときは,同法38条に抵触します。

5,職員が,営利企業を経営する場合の許可の基準(兼業許可基準)
   兼業許可基準は,自治体ごとに定められていると思われますが,明文の許可基準が存在していない場合は,各自治体の実情に応じて許可の基準を判断すべきとされています。
過去,人事院では,次のような兼業許可基準を定めています。
(1)昭和41・2・11人事院通達(不許可基準)
① 営利企業等に従事するため勤務時間を割くことにより,職務の遂行に支障が生ずると認められるとき
② 営利企業等に従事することによる心身の著しい疲労のため,職務遂行上その能率に悪影響を与えると認めるとき
③ 営利企業等に従事しようとする職員が在職する地方公共団体の機関と当該営利企業との間に免許,許可,検査,税の負課,補助金の交付,物品の購入等の特殊な関係があるとき
④ 営利企業等の経営上の責任者となるとき
⑤ 営利企業等に従事することが,地方公務員としての信用を傷つけ,又は職全体の不名誉となるおそれがあると認めるとき

(2)平成20・12・25人事院通達(許可基準)
 ① 職員の官職と当該事業との間に特別な利害関係又はその発生のおそれがないこと
 ② 職員以外の者を当該事業の業務の遂行のための責任者としていること等により職員の職務の遂行に支障が生じないことが明らかであること
 ③ 当該事業が相続,遺贈等により課業を継承したものであること
 ④その他公務の公正性及び信頼性の確保に支障が生じないこと

6,参考裁判例
大阪地判平成11年7月12日は,
 「兼業が職務専念義務や,全体の奉仕者性,職務の公正の維持にはんしないかという趣旨に沿って,(a)職務の遂行に支障を及ぼすおそれ,(b)職員の職との間に特別な利害関係があり又は生ずるおそれ,(c)職員の職の信用を傷つけ又は職員の職全体の不名誉となるおそれなど諸般の事情を考慮して兼業の許可を判断すべきである。」と判示しています。

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