コラム

 公開日: 2010-10-11  最終更新日: 2016-03-15

行政 13 固定資産税の過納金の多発とその救済方法


最高裁判所平成22年6月3日判決の事例より

冷凍倉庫を一般倉庫と誤り、固定資産税が過大に徴収される事件が、起こりました。多くの市町村は、長年にわたってこの違法な課税を続けていたのですが、違法な課税処分とそれに基づく納税がなされた場合、法的には、固定資産税の法廷納期限の翌日から5年を経過したときは、課税庁はその課税処分を取消・変更が出来ず(地方税法17条の5第2項)、また過納金の還付もできないのです。そして、納税者自身も、過納金の納付日から5年を経過した後は、時効により還付請求ができなくなる(同法18条の3第2項)のです。
つまり、違法な課税処分に対して、その取消し、あるいはその無効の確認という、伝統的な争い方(抗告訴訟)では、救済されるのは5年分だけというのが、法律の規定であり、従前の考えだったのです。

そこで、この事件の納税者は、平成14年分から平成17年分までの過納した固定資産税の還付は受けたのですが、昭和62年から平成13年までの分の還付を受けることができなかったので、その争い方でなく、違法な課税処分を、国家賠償法による「不法行為」として捉え、課税処分の取消を経ないで、いきなり、市町村に損害賠償の請求をする方法を選んだのです。
この方法だと、違法な課税処分を知ったときから3年間、違法な課税処分がなされたときから20年間の過納金の返還請求が出来ることになるのです。

ここで、問題になったのが、「行政処分の公定力」です。
公定力とは、その行政処分が、重大かつ明白な瑕疵があって無効とされる場合以外は、有効なものと扱われ、執行力などの効力を有するという「力」あるいは「効果」ですので、この公定力を認める限り、課税処分を取消しないで、その「違法性」を根拠に損害賠償の請求はできないはずなのです。

ところが、最高裁判所平成22年6月3日、原審が公定力を根拠に課税処分の取消をしないで、損害賠償の請求はできないと判示したのに対し、課税処分の取消ししないでも、損害賠償の請求はできると判示し、原判決を破棄しました。

これも、抗告訴訟ではなく、当事者訴訟で、住民(納税者)を救済した例に追加されるものです。

この記事を書いたプロ

弁護士法人菊池綜合法律事務所 [ホームページ]

弁護士 菊池捷男

岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL:086-231-3535

  • 問い合わせ

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

1

こちらの関連するコラムもお読みください。

<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
 
このプロの紹介記事
菊池綜合法律事務所|菊池捷男弁護士は数多くの民事裁判を手がけてきたエキスパート

法律事務所は決して敷居の高い場所ではありません。(1/3)

 事務所設立以来40年、「うそをつかない、ごまかさない」を信念に、離婚や相続など数多くの民事裁判を手がけてきた菊池捷男さん。現在事務所には菊池さんを筆頭に6人の弁護士が在籍し、民事から企業法務まであらゆる法律問題をサポートしています。 ...

菊池捷男プロに相談してみよう!

山陽新聞社 マイベストプロ

あらゆる法律問題に対処可能

事務所名 : 弁護士法人菊池綜合法律事務所
住所 : 岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL : 086-231-3535

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

086-231-3535

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

菊池捷男(きくちとしお)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる
プロのおすすめコラム
遺言執行者制度は機能しているか?① 日弁連・懲戒委員会の遺言執行者観は相続人代理人説

1 日弁連・懲戒委員会の遺言執行者観は相続人代理人説 日弁連・懲戒委員会は,平成13年,「全遺産を相続...

[ 相続判例法理 ]

遺言執行者とは何者か?④ 会社の清算を遺言執行者に託した遺言書の例

次の遺言書は,遺言書実務で書かれた遺言書の一つです。遺言書 遺言書 私,凸山太郎は,次のとおり...

[ 相続判例法理 ]

遺言執行者とは何者か?③ 銀行の貸金庫の開披を,遺言執行者に託す遺言事項

被相続人が,銀行との間で,貸金庫賃貸借契約を締結している場合,共同相続人全員又は他の相続人の同意を得た一部...

[ 相続判例法理 ]

ホームページ上での新著公開

相続法理に関する新著を、ホームページ上で、上梓・公開いたします。ダウンロードして、ご覧くだされば幸いです...

[ 相続判例法理 ]

遺言執行者とは何者か?② 単純な処分型遺言

1 処分型遺言 処分型遺言とは,遺言者が,遺言執行者に対し,遺産の処分権限を付与する遺言のことをいいます...

[ 相続判例法理 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ