コラム

 公開日: 2014-02-15  最終更新日: 2016-03-15

民法雑学 2つある(?)事業用定期借地権

Q 事業用定期借地権には,2つの種類があると聞きましたが,そうですか?

A
1,事業用定期借地の内容
事業用定期借地に2つの種類があるわけではありません。
事業用定期借地は,次のような内容の借地権のことをいいます。
①目的は,普通の借地権とは違って,「専ら事業の用に供する建物の所有」に限定されます。
➁しかも,事業用でも,居住の用に供する建物は除かれます。ですから,事業用のアパートやマンションを目的とする事業用定期借地は認められません。ただ,ホテル,旅館は,居住する人も短期間に限られますので,事業用定期借地が認められます。
③普通の借地権の場合なら認められる,契約の更新,建物の築造による存続期間の延長,建物の買取りの請求などは一切は認められません。ですから,期間が完了すると同時に,事業用定期借地は消滅することになります。これが事業用定期借地の「定期」の意味になるのです。期間の満了により,消滅する借地権が,事業用定期借地なのですから,この内容は,契約書の本質的内容になるのです。
④存続期間は,10年以上50年未満の間で,合意により定めた期間になります。10年間でもよく,49年11カ月間でも結ぶことができますが,10年未満で期間を定めることと,50年以上の期間を定めることはできません。

2,条文が2つになった理由
事業用定期借地を定めた規定は,借地借家法23条1項と,同条2項です。
借地借家法23条1項は「専ら事業の用に供する建物(居住の用に供するものを除く)の所有を目的とし、かつ、存続期間を30年以上50年未満として借地権を設定する場合においては、第9条及び第16条の規定にかかわらず、契約の更新及び建物の築造による存続期間の延長がなく、並びに第13条の規定による買取りの請求をしないこととする旨を定めることができる。」と規定しています。
これは,事業用定期借地設定契約の中に,前記1の③の内容(契約書の本質的内容)を盛り込むことが要求された規定です。
借地借家法23条2項は「専ら事業の用に供する建物の所有を目的とし、かつ、存続期間を10以上30年未満として借地権を設定する場合には、第3条から第8条まで、第13条及び第18条の規定は、適用しない。」と規定しています。
これは,契約書の中に,前記1の③の内容を盛り込まなくとも,当然1の③が入っていると規定です。

3,条文を2つにした理由
普通の借地権の存続期間は,30年以上と定められています。借地借家法3条は「借地権の存続期間は、30年とする。ただし、契約でこれより長い期間を定めたときは、その期間とする。」という規定があるからです。そのため,事業用定期借地の設定契約を結ぶ場合で,期間を30年以上のものにしたときは,普通借地権と間違わないように,前記1の③の内容を契約書に盛り込むことが求められているのです。しかし,期間が30年未満の事業用定期借地の場合は,普通借地権には30年未満の普通借地権はないので,普通借地権と間違えられることはなく,1の③の内容を盛り込む必要はないとされたのです。

4,実際の契約条項
期間が10年以上30年未満のものも,期間が30年以上50年未満のものと同様,前記1の③の内容を盛り込んだ条項で,事業用定期借地の設定契約書が作られています。
つまり,事業用定期借地については,2つの条文が規定していますが,実際の事業用定期借地設定契約書の内容は,10年以上30年未満のものも,30年以上50年未満のものも,期間の点を除いて,同じ内容のものになっているのです。


条文の例

この記事を書いたプロ

弁護士法人菊池綜合法律事務所 [ホームページ]

弁護士 菊池捷男

岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL:086-231-3535

  • 問い合わせ

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

5

こちらの関連するコラムもお読みください。

<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
 
このプロの紹介記事
菊池綜合法律事務所|菊池捷男弁護士は数多くの民事裁判を手がけてきたエキスパート

法律事務所は決して敷居の高い場所ではありません。(1/3)

 事務所設立以来40年、「うそをつかない、ごまかさない」を信念に、離婚や相続など数多くの民事裁判を手がけてきた菊池捷男さん。現在事務所には菊池さんを筆頭に6人の弁護士が在籍し、民事から企業法務まであらゆる法律問題をサポートしています。 ...

菊池捷男プロに相談してみよう!

山陽新聞社 マイベストプロ

あらゆる法律問題に対処可能

事務所名 : 弁護士法人菊池綜合法律事務所
住所 : 岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL : 086-231-3535

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

086-231-3535

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

菊池捷男(きくちとしお)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる
プロのおすすめコラム
立法論としての相続法② 配偶者の法定相続分に問題はないか?

 配偶者の法定相続分は、1/2です。この1/2という数字、多いか少ないかといえば、婚姻期間が長く、また、被相続...

[ 相続判例法理 ]

立法論としての相続法① 配偶者の生活保障は十分か?  

1 配偶者の法定相続分  配偶者の法定相続分が、1/3から1/2に引き上げられたのは、昭和55年の民法(相続法)改...

[ 相続判例法理 ]

相続税における「私道供用宅地の時価」の意味

相続税法22条及び評価通達は、相続税の対象になる財産の価額は相続時の時価によるものとすると定め、「時価」とは...

[ 民法と税法 ]

労働 歩合給から時間外手当(相当額)等を控除したものを賃金とする定めは有効

 最高裁判所第三小法廷平成平成29年2月28日判決は、タクシー会社が、従業員であるタクシー乗務員との雇用...

[ 労働 ]

同音異義語(追加1)

あからむ(赤らむ・明らむ)ア 赤らむ意味:色が赤くなること用例:顔が赤らむ熟語:赤面イ 明らむ...

[ 公用文用語 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ