コラム

 公開日: 2014-02-05 

不動産 土地の使用借権が消滅させられたことによる損害

Q 
 父が子に建物を贈与して,敷地を無償で使わせる場合,子の土地を使う関係は,土地の使用貸借契約になるのですが,子が,建物を賃貸し,借家人が失火により建物を滅失させた場合,子は,建物の時価に相当する金額の損害を受けたことになります(昨日のコラム参照)。
 この場合,子は,建物が滅失していなければ得られる賃料収入が得られなくなりますが,この得べかりし利益の喪失分(逸失利益)は,借家人に対し請求できるのでしょうか?

A 
東京高判平3.2.18は,
ア)甲は,昭和59年5月ころ、子である乙に,家賃を小遣い代わりに取得させること及び相続税対策の目的で,建物を贈与した上、同建物が朽廃、滅失するまでこれを所有する目的のため敷地を上告人に無償で貸し渡した。
イ)乙は,丙に,同建物を賃料月額25,000円で賃貸した。
ウ)同建物は,昭和63年12月に,丙の同居の家族(二女)の失火によって,全焼した。
エ)それにより,乙は,建物の所有権と敷地の使用借権を喪失した。
オ)その後,乙は,建物の火災保険金の支払いを受け,建物の価格に相当する額の損害が補填された。
カ)同建物は、昭和27年建築の木造2階建居宅で老朽化しており、通常の利用方法で相応の維持修繕を施せば、少なくとも本件火災後10年程度は存続したものと推定される。
キ)本件火災がなかったとした場合に、本件建物から得られる火災後10年間の収益の額は、1350万円を超えない。
という事実を前提に,
(a)建物が朽廃、滅失するまでこれを所有するという目的でされた使用貸借に基づく権利は独自の財産的価値があるものとして損害賠償の対象となるものではない。
(b)建物の焼失による損害額の上限は、焼失時の建物価格と、建物の存続期間に建物によって得ることができる利益の額のうち、いずれか高額の方となる。
(c)乙は,建物にかけた火災保険から保険金の支払いを受けた。その保険金は建物の時価を下回るものではない。したがって,建物の損害は填補された。賃料の逸失利益がそれを超えるものであることの立証がない。
(c)したがって,乙は,丙に対し,賃料の逸失利益の請求はできない。
と判示しましたが,

最判平6.10.11は,
「地上の建物が朽廃、滅失するまでこれを所有するという目的でされた土地の使用貸借の借主が契約の途中で右土地を使用することができなくなった場合には,特別の事情のない限り、右土地使用に係る経済的利益の喪失による損害が発生するものというべきであり、また、右経済的利益が通常は建物の本体のみの価格(建物の再構築価格から経年による減価分を控除した価格)に含まれるということはできない。そうすると、乙は、少なくとも、焼失時の本件建物の本体の価格と,本件土地使用に係る経済的利益に相当する額との合計額を本件建物の焼失による損害として乙に請求することができるものというべきである。」と判示し,前記東京高裁判決を破棄しました。

要は,原審が,借家が失火により滅失させられたことによる損害は,①借家の時価と②残存期間中の賃料の逸失利益の,2つの損害のうちのいずれか多い金額と判示したのに対し,
最高裁判決は,①と②の双方を損害と認めたのです。

この記事を書いたプロ

弁護士法人菊池綜合法律事務所 [ホームページ]

弁護士 菊池捷男

岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL:086-231-3535

  • 問い合わせ

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

3

こちらの関連するコラムもお読みください。

<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
 
このプロの紹介記事
菊池綜合法律事務所|菊池捷男弁護士は数多くの民事裁判を手がけてきたエキスパート

法律事務所は決して敷居の高い場所ではありません。(1/3)

 事務所設立以来40年、「うそをつかない、ごまかさない」を信念に、離婚や相続など数多くの民事裁判を手がけてきた菊池捷男さん。現在事務所には菊池さんを筆頭に6人の弁護士が在籍し、民事から企業法務まであらゆる法律問題をサポートしています。 ...

菊池捷男プロに相談してみよう!

山陽新聞社 マイベストプロ

あらゆる法律問題に対処可能

事務所名 : 弁護士法人菊池綜合法律事務所
住所 : 岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL : 086-231-3535

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

086-231-3535

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

菊池捷男(きくちとしお)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる
プロのおすすめコラム
立法論としての相続法② 配偶者の法定相続分に問題はないか?

 配偶者の法定相続分は、1/2です。この1/2という数字、多いか少ないかといえば、婚姻期間が長く、また、被相続...

[ 相続判例法理 ]

立法論としての相続法① 配偶者の生活保障は十分か?  

1 配偶者の法定相続分  配偶者の法定相続分が、1/3から1/2に引き上げられたのは、昭和55年の民法(相続法)改...

[ 相続判例法理 ]

相続税における「私道供用宅地の時価」の意味

相続税法22条及び評価通達は、相続税の対象になる財産の価額は相続時の時価によるものとすると定め、「時価」とは...

[ 民法と税法 ]

労働 歩合給から時間外手当(相当額)等を控除したものを賃金とする定めは有効

 最高裁判所第三小法廷平成平成29年2月28日判決は、タクシー会社が、従業員であるタクシー乗務員との雇用...

[ 労働 ]

同音異義語(追加1)

あからむ(赤らむ・明らむ)ア 赤らむ意味:色が赤くなること用例:顔が赤らむ熟語:赤面イ 明らむ...

[ 公用文用語 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ