コラム

 公開日: 2014-02-04  最終更新日: 2017-09-27

借家が滅失した場合の損害

例えば,
借家が借家人の失火で焼失(法的には「滅失」)した場合,借家の所有者は,どのような損害を受けた,といえるでしょうか?

①火災により滅失した建物の解体工事費用は,全額,当然,損害になります(東京地判平3.7.25)。

②借家が滅失すると,借家の時価に相当する金額の損害を受けたことになります。
建物の時価相当額というのは,火災発生(建物の滅失)当時の,同程度の建物の再取得価格から建物完成後火災発生までの期間の減価償却費を控除した金額になります(東京地判昭52.5.26)。
最判平6.10.11は,建物の再構築価格から経年による減価分を控除した価格という言い方をしています。
前記東京地判は,減価償却費は,減価償却資産の耐用年数等に関する省令に定めた基準で定率法によって算出すべきと判示しています(なお,建物の再構築価格は,この件では,鑑定価格としています)。

③問題になるのは,
建物が焼失(滅失)した後,再築までの間,家賃収入が入らないことによる逸失利益が,損害になるか?ということです。
(消極説)
前記東京地判平3.7.25は,③の建物の再築までの得べかりし賃料は,物の使用収益価値であり,その逸失利益は,物の滅失による②の損害に含まれるので,特別の事情がない限り,賃料の逸失利益は,損害賠償請求の対象にはならない,と判示しています。
 その理由として,同判決は,建物が火災により焼失しなかったとしても、いずれは耐用年数が尽きたときには再築しなければならず、そのときは再築期間中賃料は取得できないのであるから,建物が火災によって滅失した場合であっても,再築期間中の逸失利益は,損害にならない旨判示しました。
東京高判昭53.1.25も消極説です。

(積極説)
東京地判昭48.9.25及び東京地判昭52.5.26は,失火による借家滅失後の,建物再築期間中における,賃料の得べかりし利益の喪失(逸失利益)を損害として認定しています。

(最高裁判決)
最高裁判決はありません。しかし,下記に紹介する最高裁判決は,積極説をにおわせているように思えます。
最判平6.10.11
 地上の建物が朽廃、滅失するまでこれを所有するという目的でされた土地の使用貸借の借主が契約の途中で右土地を使用することができなくなった場合には,特別の事情のない限り、右土地使用に係る経済的利益の喪失による損害が発生するものというべきであり、また、右経済的利益が通常は建物の本体のみの価格(建物の再構築価格から経年による減価分を控除した価格)に含まれるということはできない。そうすると、乙は、少なくとも、焼失時の本件建物の本体の価格と,本件土地使用に係る経済的利益に相当する額との合計額を本件建物の焼失による損害として乙に請求することができるものというべきである。

この記事を書いたプロ

弁護士法人菊池綜合法律事務所 [ホームページ]

弁護士 菊池捷男

岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL:086-231-3535

  • 問い合わせ

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

4

こちらの関連するコラムもお読みください。

<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
 
このプロの紹介記事
菊池綜合法律事務所|菊池捷男弁護士は数多くの民事裁判を手がけてきたエキスパート

法律事務所は決して敷居の高い場所ではありません。(1/3)

 事務所設立以来40年、「うそをつかない、ごまかさない」を信念に、離婚や相続など数多くの民事裁判を手がけてきた菊池捷男さん。現在事務所には菊池さんを筆頭に6人の弁護士が在籍し、民事から企業法務まであらゆる法律問題をサポートしています。 ...

菊池捷男プロに相談してみよう!

山陽新聞社 マイベストプロ

あらゆる法律問題に対処可能

事務所名 : 弁護士法人菊池綜合法律事務所
住所 : 岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL : 086-231-3535

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

086-231-3535

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

菊池捷男(きくちとしお)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる
プロのおすすめコラム
民法改正が賃貸借契約に与える影響 4 原状回復の内容は具体的に書く

1 原状回復費用には自然損耗分は入らない 改正民法621条は、「賃借人は賃借物を受け取った後にこれに生じた損...

[ 不動産法(賃貸借編) ]

民法改正が賃貸借契約に与える影響 3 賃料が当然に減額となる場合(改正)

1 民法611条の改正内容改正された民法第611条は、1項で、「賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び...

[ 不動産法(賃貸借編) ]

民法改正が賃貸借契約に与える影響 2 賃借人の修繕権(新設)

1 修繕権の創設改正民法607条の2は、「賃借物の修繕が必要である場合において、次に掲げるときは、その修繕...

[ 不動産法(賃貸借編) ]

民法改正が賃貸借契約に与える影響 1 賃貸借期間が伸長された

ガソリンスタンドの設置目的などに朗報1 現行法は20年、改正法は50年借地借家法の適用のない賃貸借契...

[ 不動産法(賃貸借編) ]

他人の研究論文の模倣ないし盗用と私立大学の使用者責任

 知的財産高等裁判所平成27年10月6日判決は、・大学又は大学院の教員が行うすべての学術論文の執筆,発表...

[ 民法雑学 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ