コラム

 公開日: 2014-02-04 

不動産 借家が滅失した場合の損害

例えば,
借家が借家人の失火で焼失(法的には「滅失」)した場合,借家の所有者は,どのような損害を受けた,といえるでしょうか?

①火災により滅失した建物の解体工事費用は,全額,当然,損害になります(東京地判平3.7.25)。

②借家が滅失すると,借家の時価に相当する金額の損害を受けたことになります。
建物の時価相当額というのは,火災発生(建物の滅失)当時の,同程度の建物の再取得価格から建物完成後火災発生までの期間の減価償却費を控除した金額になります(東京地判昭52.5.26)。
最判平6.10.11は,建物の再構築価格から経年による減価分を控除した価格という言い方をしています。
前記東京地判は,減価償却費は,減価償却資産の耐用年数等に関する省令に定めた基準で定率法によって算出すべきと判示しています(なお,建物の再構築価格は,この件では,鑑定価格としています)。

③問題になるのは,
建物が焼失(滅失)した後,再築までの間,家賃収入が入らないことによる逸失利益が,損害になるか?ということです。
(消極説)
前記東京地判平3.7.25は,③の建物の再築までの得べかりし賃料は,物の使用収益価値であり,その逸失利益は,物の滅失による②の損害に含まれるので,特別の事情がない限り,賃料の逸失利益は,損害賠償請求の対象にはならない,と判示しています。
 その理由として,同判決は,建物が火災により焼失しなかったとしても、いずれは耐用年数が尽きたときには再築しなければならず、そのときは再築期間中賃料は取得できないのであるから,建物が火災によって滅失した場合であっても,再築期間中の逸失利益は,損害にならない旨判示しました。
東京高判昭53.1.25も消極説です。

(積極説)
東京地判昭48.9.25及び東京地判昭52.5.26は,失火による借家滅失後の,建物再築期間中における,賃料の得べかりし利益の喪失(逸失利益)を損害として認定しています。

(最高裁判決)
最高裁判決はありません。しかし,明日のコラムに紹介する最高裁判決は,積極説をにおわせているように思えます。

この記事を書いたプロ

弁護士法人菊池綜合法律事務所 [ホームページ]

弁護士 菊池捷男

岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL:086-231-3535

  • 問い合わせ

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

4

こちらの関連するコラムもお読みください。

<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
 
このプロの紹介記事
菊池綜合法律事務所|菊池捷男弁護士は数多くの民事裁判を手がけてきたエキスパート

法律事務所は決して敷居の高い場所ではありません。(1/3)

 事務所設立以来40年、「うそをつかない、ごまかさない」を信念に、離婚や相続など数多くの民事裁判を手がけてきた菊池捷男さん。現在事務所には菊池さんを筆頭に6人の弁護士が在籍し、民事から企業法務まであらゆる法律問題をサポートしています。 ...

菊池捷男プロに相談してみよう!

山陽新聞社 マイベストプロ

あらゆる法律問題に対処可能

事務所名 : 弁護士法人菊池綜合法律事務所
住所 : 岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL : 086-231-3535

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

086-231-3535

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

菊池捷男(きくちとしお)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる
プロのおすすめコラム
共同保証人間の求償権の趣旨・消滅時効中断事由に関する初判例

最高裁判所平成27年11月19日判決の紹介時系列的事実関係⑴ 信用保証協会Aと主債務者会社の代表取締役Bが、銀...

[ 民法雑学 ]

労働 時間外労働等に対する割増賃金を年俸に含める旨の合意の有効性について(後半)

 最高裁判所第二小法廷平成29年7月7日判決は、①医療法人と医師との間の雇用契約において時間外労働等に対す...

[ 労働 ]

労働 時間外労働等に対する割増賃金を年俸に含める旨の合意の有効性について(前半)

 最高裁判所第二小法廷平成29年7月7日判決は、医療法人と医師との間の雇用契約において時間外労働等に対する...

[ 労働 ]

信用保証協会、二度目の最高裁判決

またまた、信用保証協会に不利な最高裁判決が出されました。2016-09-14付けコラムで紹介しました最高裁判所第三小...

[ 会社関係法 ]

立法論としての相続法⑬ 法制審議会で、民法1015条の字句を改めるべしとの意見出る

 現行の民法1015条は、「遺言執行者は、相続人の代理人とみなす。」と規定しています。この字句から、遺言執行...

[ 相続判例法理 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ