コラム

 公開日: 2013-10-16 

相続相談 自社株式の価格⑤ 純資産方式を採用した裁判例

大阪高裁58.2.7決定は、遺産分割事件で、被相続人が残した自社株の価格を決定した事件です。会社の株価については、時価純資産方式が合理的であるとして採用していますが、会社の有する不動産は、時価評価をすると収益還元法に比べ高くなること理由に、また、会社が不動産賃貸を目的とした会社であることを理由に、収益還元法によるべきであるとしています。空家になっている分は、現実には収益を生まない財産になっていますが、これは修理の上賃貸するものとして評価をするべきであると判示しています。
なお、この事件では、裁判所が嘱託した鑑定士の鑑定を採用せず、当事者から提出された鑑定意見書(私的鑑定書)を採用されているのが関心を引きます。

東京地裁平成10.5.29判決は、遺産分割のときの株価の決定でも、会社法による株価の決定でもなく、評価目的の全く異なる相続税更正処分取消請求事件ですが、株式の理論的・客観的な価値は、会社の総資産の価額を発行済株式総数で除したものが正しく、資産の大部分が土地である会社の株式の評価は、配当性や収益性ではなく、会社の純資産に着目した評価通達に従い純資産価額方式によるべきである、と判示しています。この理によれば、昨日のコラムに書いた、不動産の時価を収益還元法で算出することは許されないことになるのでしょうか?それとも、課税処分であるために、基本通達によるべきであると断じたものでしょうか?判旨は、課税処分だから、とは書いてはいません。一般論として、「株式の理論的・客観的な価値は、会社の総資産の価額を発行済株式総数で除したものが正しい」と書いていますので、この裁判所の見解は、遺産分割の際の株価決定でも、同じ見解になるのか、興味を引かれる事件です。

この記事を書いたプロ

弁護士法人菊池綜合法律事務所 [ホームページ]

弁護士 菊池捷男

岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL:086-231-3535

  • 問い合わせ

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

3

こちらの関連するコラムもお読みください。

<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
 
このプロの紹介記事
菊池綜合法律事務所|菊池捷男弁護士は数多くの民事裁判を手がけてきたエキスパート

法律事務所は決して敷居の高い場所ではありません。(1/3)

 事務所設立以来40年、「うそをつかない、ごまかさない」を信念に、離婚や相続など数多くの民事裁判を手がけてきた菊池捷男さん。現在事務所には菊池さんを筆頭に6人の弁護士が在籍し、民事から企業法務まであらゆる法律問題をサポートしています。 ...

菊池捷男プロに相談してみよう!

山陽新聞社 マイベストプロ

あらゆる法律問題に対処可能

事務所名 : 弁護士法人菊池綜合法律事務所
住所 : 岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL : 086-231-3535

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

086-231-3535

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

菊池捷男(きくちとしお)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる
プロのおすすめコラム
金庫株って、何だい?②

3 金庫株解禁の理由および利用方法菊池: だけど、金庫株の保有は解禁されたんだよなあ。理由は何だい。後...

[ 菊池と後藤の法律実務レポート(企業編) ]

金庫株って、何だい?①

1 意味菊池: のう、後藤!金庫株という言葉があるだろう。意味は何だい?後藤: この株式はなあ、金庫と...

[ 菊池と後藤の法律実務レポート(企業編) ]

就業規則の変更が、労働組合が同意していている場合でも無効になるとき

最高裁第一小法廷平成12年9月7日判決は、特定の年齢層の従業員(60歳定年制の下で55歳を超えた銀行の行員...

[ 労働 ]

金融機関から見た不良債権の意味と分水嶺

1 不良債権 不良債権とは、金融庁の「金融債権マニュアル」における区分のうち、(ア)破綻先債権(法的・...

[ 民法雑学 ]

独禁法でいう課徴金算定の基礎となる売上額の意味

1 完成品の売上げの中に含まれる、取引相手方から購入した部品の購入原価も含まれる 公正取引委員会平成29...

[ 会社関係法 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ