コラム

 公開日: 2013-10-18 

相続相談 遺産分割調停が長期化して困っている

Q 遺産分割の調停が長期化して困っています。なにか良い方法はありませんか?

A あります。判例タイムズ№1137(2004.2.10)に、「遺産分割事件処理の実情と課題」と題して東京家庭裁判所の裁判官の執筆記事が登載されていますので、これを読まれるとずいぶん参考になりますが、遺産分割協議は、まず手順を追って進めることが重要です。以下、手順を書きますと、
1,分割対象財産の確定
遺産分割の対象財産を確定することが最初の仕事になります。
遺産分割の対象財産とは、相続開始時に存在した被相続人の財産のうち、分割時に存在する未分割の財産をいいます。
それを全相続人で確認することから始めなければなりません。
この場合、他にも遺産があると主張する相続人は、その財産を具体的に明らかにしなければなりませんが、分割対象財産を確定しないで、誰が何を相続するのかの協議をすべきではありません。協議がまとまることはないからです。
むろん、調査をしても容易に発見できない財産というものもあるでしょう。その場合は、相続人間で合意をして、現に遺産であることについて争いのない財産についてのみ、遺産分割協議をするという合意書(中間合意書)を取り交わして、そのときの財産目録を作って、先へ進めるべきです。むろん、その後発見されたものは別途遺産分割協議の対象にするということも合意書には書いておくことになります。
なお、被相続人の生前に相続人の一部が勝手に預金を引き出したなどという主張も、別途、裁判で争う事柄になります。これら争いのある財産については、別の手続に委ねることにするのです。

2,遺産の評価の確定
 次にするのが遺産の評価の確定です。遺産を、相続人間で共有する場合や、遺産を全部売却して売却代金を分ける場合は必要ありませんが、そうでない場合は、評価は必ず必要になります。

 評価方法については、不動産の場合なら、固定資産税評価額や相続税評価額(路線価)あるいは不動産業者の意見価格を基準にすることで、合意はしやすいと思われます。弁護士に、不動産登記簿謄本、固定資産税評価書、住宅地図、公図の写し、利用状況を示す資料、路線価図、相続税申告書の写し、不動産業者の査定書等の資料をもって相談すると、良い知恵を貸してもらえると思います。

 被相続人がオーナーとなっている会社の株式については、評価は難しいと思われますが、相続税の基本通達による方法で合意する方法もあると思います。専門家の意見を聞きながら、収益還元法等で計算して相続人全員が納得できると、その方法によることもできます。

 難しいのは、一部の相続人が有償又は無償で使用している不動産の減価をどうするか、第三者の賃借権、被相続人の賃借権の評価をどうするかですが、これも専門家の意見を聞き、合意成立に向けて努力すべきです。
 
 どうしても、遺産の評価について争いがあるときは、専門家に鑑定してもらう他はありません。

 いずれにせよ、遺産の評価を済ませないと、次の具体的相続分の計算ができませんので、遺産の評価は避けて通れません。

 なお、理論的には(家庭裁判所が審判をするときは)、遺産の評価は、次に述べる具体的相続分の算出のためには、相続開始時の評価でなければなりませんが、遺産分割をするときは遺産分割時あるいはそれに最も近い時点での評価になりますので、相続開始時と遺産分割時との間に時間的な隔たりがあるときは、両方の時点の評価が必要になります(具体的相続分算出は相続開始時評価額により、遺産分割は分割時評価額に具体的相続分率を乗じてすることになるためです)が、実務上、多くの場合は、遺産分割時の評価で具体的相続分も計算し、それを元に遺産分割をしていますので、鑑定をしてもらうときは、そのことを明確にする確認書(中間合意書)を作っておくと良いでしょう。

3,具体的相続分の確定(特別受益・寄与分)
 次は、具体的相続分の計算をし、確定します。
具体的相続分とは、遺産分割の対象財産の合計額から、いくらの金額相当額を取得できるかを決める金額をいいます。
被相続人から、生前贈与を受けている相続人や、遺言書で財産の一部をもらえることになっている相続人がいれば、その分が持戻し計算され、寄与分のある相続人がいれば、寄与分相当額が相続財産の合計額から控除され、それを寄与相続人の取得額に加算するなどの計算がなされて、確定することになるのです。
ただ、生前贈与財産や遺言による相続財産については、持戻し免除といって、それを無視して残った財産についてのみ遺産分割をするべきだとの被相続人の意思がある場合(これを持戻し免除の意思表示といいます)もありますので、難しい問題はあるのですが、専門家の知恵を借りると、それなりに良いアドバイスを受けることができるはずです。

4,遺産分割
最後が、遺産分割です。これは、具体的相続分に見合う財産を遺産の中からどう分け合うかという問題です。
    遺産分割には、①現物分割といって遺産そのものを分けること(複数の相続人が不動産を共有する形も含めてです)、②代償分割といって一部の相続人が遺産の全部又は一部を取得し、残りの相続人に金銭を支払う、金銭清算型の遺産分割方法、③換価分割といって遺産の全部又は一部を売却してお金で分ける分割方法があります。

5,このような事務的な手順を順序よく踏みながら、遺産分割協議をつづけると、非常に速く遺産分割協議が成立するでしょう。

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